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目を開けたのと同時に勢いよく体を起こす。けれど視界に飛び込んでいた見慣れない天井とベッドに状況が把握できない。
ここ……どこ?
辺りをきょろきょろ見渡しながらため息をつく。
お、落ち着け。私は神代紫音。先月二十歳になったばかりで、今日から大学三年生になる普通の女子大生。
勇者とか魔王か……厨二病にしては遅すぎるでしょ。
自嘲してすべてを夢で終わらせようとする。でもふつふつと湧き起こるこの怒りはなんなのか。悔しいけれど、この感情は本物だった。
それにしたっておかしくない? 今の今までどこにでもいる普通の女子大生として生きてきたのに……。
そもそもなんで異世界から現代なの。これ、どこの層に需要があるの? 普通は異世界転生とか転移とかそういうもんでしょ!
心の中でひたすら現状にツッコミを入れる。どうせなら今すぐにでも異世界に転生したいが、それは叶いそうもない。
ああ、もう――。
紫音は無意識に頭を抱えた。そしてサラサラの髪に指を滑らせた。
腰まである黒髪はストレートでずっと伸ばしている。数ヶ月に一回は美容院で毛先を切りそろえ、トリートメントをしてもらう。あまりメイクは得意ではないけれどこれだけは譲れなかった。なにに固執していたのか。
まぁ、いいや。もう夢ってことにしよう。うん、なにかの夢。幸いここは現代だし……。
「紫音」
必死に自身を納得させていると聞き覚えのある声が聞こえ、紫音は我に返った。
パーテーションの間から顔を出したのは紫音の母方の従兄である福島利都だ。紫音とは八つ年が離れており、大学の事務職員をしている。
紫音が入学してからなにかと保護者的存在として彼女を気にかけていた。
「大丈夫か? オリエンテーション中に倒れたって聞いて」
慌ててやってきたのか、息を弾ませている。そこで紫音はようやく状況を察した。ここは大学の敷地内にあり保健管理センターだ。
けれど、今はそれ以上に紫音の中に捉えどころのない感情が沸き上がっている。




