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転生しても魔王に迫られています。異世界ではなく現代ですが!?  作者: くろのあずさ
第3話 宿敵魔王にデートに誘われました
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8

「そうだな。そして別の誰かが犠牲になる」


 得意げに告げた紫音に対し凰理は小さく言い放った。


 心の中に石を投げ込まれたかのように波紋が広がる。落ち着かない。責められたわけでもいつもの嫌味でも意地悪でもない。


 なにがこんなにも自分をざわつかせるのか。


「ねぇ……前にもこんな話をした?」


 確信はない。けれど尋ねずにはいられなかった。凰理はなにも答えず紫音をじっと見つめる。


 緊張して彼の答えを待っていると、凰理はふっと微笑んだ。


「お前は赤ずきんというより猟師だろ」


 じゃぁ、猟師にやられてしまう狼は魔王(あなた)なの?


 冗談めいた口調で返してやればよかった。けれど今は、そんな気になれない。そのときマナーモードにしていた紫音のスマホが振動する。


 画面を見ると実乃梨で、紫音は慌てて席を立った。


「ごめん、実乃梨から。ちょっと電話に出てくるね」


 そう言って紫音はそそくさと店の入り口の方へ向かう。


『紫音、今日は直前で本当にごめんね。なんとかドア直ったよ』


 通話をオンにすると即座に電話越しに謝罪の言葉が聞こえた。実乃梨が申し訳なさそうな顔をしているのがありありと浮かび、紫音は苦笑する。


「謝らないで。防犯とか心配だしちゃんと直ってよかったね」


『うん。で、紫音はまだ外? 今からでも合流する?』


 実乃梨の提案に目を瞬かせる。そして少しだけ考え込んだ。


「ごめん。今日はもう別の用事を入れちゃって……」


 立場が逆転し、紫音が心苦しく謝罪する。ところが返ってきたのは脱力しそうなほどの喜々とした声だ。


『そうなの? なに? デート?』

 

「違う、デートじゃない!」


 反射的に否定する紫音に実乃梨が笑う。


『そこまでムキになって否定しなくてもいいでしょ。わかった、また今度改めて買い物行こうね。今日は本当にごめん』


「大丈夫、またね」


 実乃梨とのやりとりを終え、紫音は再び店内に戻ろうとするが、自分の行動がどうもスッキリしない。


 ここで食事を終えてから実乃梨と合流したっていいはずだ。そもそも今日はそのためで出てきた。時間もそこまで遅いわけじゃない。


 けれど……。


 凰理の待つ席に足を向けて気づく。彼は遠くからでもよく目立つ。すらっと長い足、姿勢よく伸びた背筋。


 本人は特段意識していないのだろうが、まるで隙がない。整った横顔に釘付けになっている女性客も少なくない。


 食べるのに夢中であまり気にしていなかったが、凰理に集まる視線は相当なものだ。


 同じテーブルについていたことが、少しだけ恥ずかしくなる。凰理とは反対に、紫音は注目されたり目立つことが苦手だ。


 肝心の凰理は、こんな状況には慣れているのか、まったく意に介さず先ほどの書店で購入した本を開いていた。


 そのとき、不意に凰理と目が合う。紫音を視界に捉えると、凰理はすぐに本を閉じた。


 おかげでぎこちなかった紫音の足取りは一転、足早に席に戻る。

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