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紫音は目の前のティースタンドを上から順番に目をキラキラさせながらじっくりと眺めていく。
三段に分かれ、それぞれの白い皿には店自慢のこだわりのスイーツが盛り付けられていた。
一段目は自家製アイスクリームと柚子のソルベ、ブルーベリーと苺のムースがそれぞれ小さな器に盛られて中央を陣取り、その周りにガトーショコラ、チーズケーキ、シブースト、マカロンなどがバランスよく並べられている。
二段目はスコーンが二種類とシュークリーム、彩りにフルーツが添えられていた。
一見、バニラアイスと勘違いしそうな小さな球体はクロテッドクリームだ。スコーンに用意されたもので、隣には定番のジャムももちろんセットされている。
一番下の三段目は、ミニサンドイッチやキッシュやバゲット、野菜のマリネなど甘くない軽食が陣取っていた。
ひとりで食べるには多そうに感じるが、このテーブルにはふたりいる。
「これは……昼飯なのか?」
うっとりとした眼差しでティースタンドを見つめる紫音に、真正面に座った凰理が聞いた。紫音は凰理にまったく視線を寄越さずに大きく頷く。
「うん」
紫音が凰理に行きたい場所として提案したのは、英国風のクラシックスタイルのカフェだった。
目当ては今、紫音の目の前にあるアフタヌーン・ティーセットだ。
本来ならその名の通り食後のティータイムにでも訪れるのが理想かもしれないが、人気店ゆえに混んでいたり、品切れの可能性がある。
あえてランチタイムにやってきたのは正解だ。それでも少し待ったくらいだった。
スタッフがティーポットとカップを持ってくる。紫音はおすすめのアフタヌーンティーブレンド、凰理はアールグレイを選んだ。
本当はコーヒーの方が好みでメニューにもあるが、この場面でコーヒーを選ぶほどのこだわりもない。
店内は紫音と似た考えでやってきた客が何組か同じものを注文していた。
だいたいどのテーブルも複数人で来客していて、カップルや女性同士が多い。
「これ、ふたり以上じゃないと注文できない期間限定スペシャルメニューなの」
紫音はこの店を選んだ理由を凰理に説明する。
「実乃梨はあまり甘いものが好きじゃないから。好きじゃないものに付き合わせるのは申し訳ないし」
紫音が誘えば、実乃梨は付き合うと言ったかもしれない。しかし値段もそれなりに張るので、好きではないものに対して気軽に声をかけるのは気が引けた。
忙しい利都を付き合わせるのも躊躇われる。普段から気にかけてもらい、世話になっているのだから、そこまで自分の希望を通していいものか。
「俺はいいのか」
「好きなところでいいって言ったじゃない。それに魔王に気を使うのも無駄だなって」
紫音の話を聞いていた凰理がため息混じりに漏らすので、すかさず言い返す。
続けて「いただきます」と小さく告げて、紫音は一番上の皿からアイスクリームの入った器をそっと取った。




