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『シオン』
名前を呼ばれて振り返ると、そこにはパーティーのまとめ役である魔術師の姿がある。
ほかにも無愛想だが腕は確かな剣士、可愛らしい少女の外見をした魔法使い、姉御肌で色気たっぷりの武闘家、穏やかでいつも笑みを絶やさない僧侶。
みんなシオンの大切な仲間だ。魔王を倒すべく共に旅をしている。でも本当は勇者としてここにいるはずだったのはシオンではなく弟のクオン方だった。
神託がくだり、家から勇者を出すように告げられた。勇者と言えば男だ。シオンとクオンは双子の姉弟で、求められたのは弟の方だ。
ところが出発前に弟が病に倒れ、勇者として旅には出せられないと両親がシオンに代わりになるよう告げてきた。
『お願い、シオン。あなたしかいないの。クオンの代わりに魔王討伐に向かって。神託ではこの家から勇者を出すことになっているから、あなたでも間違いではないわ。クオンは体も弱いし、そんな危険な目に合わせられないの』
弟を庇う母を見て「私なら危険な目に合ってもいいの?」とは聞き返せなかった。昔から体の弱い弟につきっきりで「シオンはしっかりしているから」が口癖の母。
『勇者として女を出すなど前代未聞だ。名までは偽らなくても勇者は男しかなれない。皆の期待を裏切らないように性別はけっして明るみにするなよ』
父に言われ、お気に入りの長かった髪を耳下でばっさりと切った。両親に頼られている。信頼されている。そう前向きに捉えて自分を奮い立たせた。
間違いではないものの最初から自分が選ばれたのだと言われたら、まだ心の整理はついたかもしれない。けれどあくまでもシオンは弟の身代わりだ。
その日からシオンは弟の身代わりとなり、男として勇者として振る舞うと決めた。女のシオンは魔王を討伐するまでお預けだ。だから女であることは仲間でさえ知らない。
勇者は男という先入観はありがたい。上手く誤魔化せていた。
ただひとり、彼をのぞいて。
『まぁ、元々色気もないから女の格好をしたところでたいして変わらないだろ』




