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転生しても魔王に迫られています。異世界ではなく現代ですが!?  作者: くろのあずさ
第2話 宿敵魔王にも怖いものがあるらしい!?
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2

それにしても前世は魔王を倒すべく、彼の元へ向かおうと旅に出たというのに今は隣人になるとは。


「やっぱり因縁ってあるのかな?」


「運命と言え、運命と」


 ひとり言に訂正が入り、紫音は大きくため息をついた。自分たちの関係は、運命などそんなロマンチックなものではない。


 前世では勇者と魔王として敵対していた仲だ。なにが悲しくてそんな相手と今さら“”ご近所さん”をしなくてはならないのか。


「ま、なにか困ったことがあったら遠慮なく言ってこい」


 今、この状況に困っているんだけれど?


 というのは心の中だけに留めておいた。紫音もここに住まわせてもらっている身なので、凰理のことをとやかく言えない。


 ましてや今、憎き魔王とは大学の教員と学生という立場で、表向きは遠縁の親戚ということになっている。


 馴れ合うつもりはないが、下手に無視もできない。


 エレベーターのボタンを押し、少し距離をあけてふたりで待つ。到着し、さりげなく先に乗り込んだ凰理が扉を開けて紫音が入るのを待つので紫音はおとなしく従った。


「……ありがとう」


 大人、ここは大人にならないと!


 聞こえるか聞こえないか微妙すぎる声で紫音は呟いた。気恥ずかしさにうつむいていた紫音だが沈黙も苦しくなり、ちらりと凰理を窺う。すると穏やかに微笑んでいた凰理と目が合う。


「なに?」


「いや」


 曖昧にしか返されず紫音は眉をひそめた。


 さっきからなに? もしかして勇者に借りを作るのも悪くないなって思われてる?


 悶々としているとエレベーターがエントランスホールに到着したのでどちらからともなく外へ出る。


「お前、俺の講義をとってるのか?」


「まさか」


 紫音は即答した。今日の凰理の講義は二限の共通教育と四限のゼミだ。しかし紫音は凰理ではなく別の教授の講義を取っている。今年度で退官予定の小山(こやま)教授の貨幣経済史だ。


 凰理の専門はヨーロッパ思想史で、紫音の学びたい分野とかぶってはいるのだが、小山教授の講義はもう来年度には受講できない。今年が最後のチャンスだ。


 そういった理由があるのだがそこまで説明する義務もないので、紫音はわざとらしく鼻を鳴らした。


「魔王から教わるなんて冗談じゃない」


「お前な……」


 凰理の表情は見なくても声で容易に想像できる。紫音はさっさとマンションを先に出ていった。


「それにきっと集中できない」


 誰に言うわけでもなく、紫音のひとり言は宙に溶ける。


 一方、凰理は紫音に対して、車で送っていてやろうかと声をかけそびれたことに舌打ちした。どうせ行き先は同じだ。ただそう言ったところで、紫音が素直に頷くわけがない。


 思いっきり髪を短くした紫音の後ろ姿は、初めて会ったときとはまた違った印象を抱かせる。肩の線の細さが際立ち、むしろ前世での姿を思い起こさせる。


 凰理は前髪をくしゃりと掻いて、駐車場の方へ向かった。

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