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悪役令嬢に気に入られないとバッドエンドの未来しかないらしい

作者: リィズ・ブランディシュカ




 私の名前はティルハート。

 乙女ゲームの世界に転生した、ごく普通の令嬢よ。

 そんな私は、信じられない光景を目にしている。


 突然ですが今、目の前で悪役令嬢が鮮血にまみれてます。

 人の血に。返り血に。

 どうしてこんな人に関わってしまったのでしょう、以前の私は。

 気絶してもいいですか?







 私が転生した乙女ゲームの世界には、とんでもない悪役令嬢がいる。

 それは、カロリーナ・マドレスという人物だ。


 平気で人の命を刈り取りにくるヤバい人。

 普通嫌がらせしたりするのが序盤で、失敗が続くと焦ってそういう過激な行動に入るものだけど、カロリーナは違う。

 序盤からヒロインの命を消し飛ばしにくる。


 攻略対象の婚約者がいて、とられそうだから、という理由があるにはあるんだけど、それでもやる事がやばい。


 とんでもない悪役令嬢なのだ。


 一応同情できる余地はある、と思う。


 カロリーナが育った家は、超やばい家で。才能ないやつは即処分だって感じの教育方針。


 だから、元はまともでも歪まないと生き残れないのだ。


 ある意味カロリーナは可哀想な人なのだろう。


 けれど、それを知ったところで、普通の私にはどうにもできない。


 事実、目の前でカロリーナが嗜虐的な笑みを浮かべながら、気に入らない生徒を鞭でいたぶっているけど、止められないもん。







 私はそんなカロリーナの取り巻きだ。


 一か月前に転生前の記憶をとり戻したけれど、すでに取り巻きメンバー登録済だった。


 だから、彼女に付き合うしかないのだ。


「先程はなかなか楽しかったわね。真っ赤になって、トマトみたい。また面白い玩具が手に入ったら、一緒に遊びましょうね、皆さん」

「は、はい。そうですね……」


 断じて私は、先ほどの光景を楽しんでいたりはしないのだが、カロリーナの目にはそう映っているのだろうか。


 歪んで家で育った人間は考え方や物事の認識も歪んでいると聞いた事がある。


 そのせいだろう。






 そんなこんなな取り巻きな私は、毎日が大変だ。


 カロリーナは朝、日課のトレーニングをするので、一緒にそれに付き合わなければならない。


「汗をかくのはさっぱりしていいですわね」

「そ、そうですね」


 これだけみれば、青春って感じだけど、人をいたぶる時に気持ちよく鞭をふるうため、と言う動機なので、何も青春要素はない。


 ちなみに取り巻きも同じメニューに付き合わされる。


 平気で通っている学校のグランドを百周するし、足も速いからついていくのが大変。


 朝からくたくただ。






 学園生活の人間付き合いでは純粋な友達付き合いを楽しめない。スパイのようなまねごとをしなければならない事もあるからだ。


 誰々と誰々の関係にひびを入れたり、逆にくっつけたり。


 情報を引き出したり、報告したり、噂を流したり、何気ない時間でも頭を使う必要があるので、気が休まらない


「皆さん、今日は目障りな特待生の噂を流してくださいな。とにかく評判を下げてほしいのです。よろしくお願いしますね」


 ちなみに特待生とはヒロインの事だ。


 やってもいない悪事の噂を流されてとても可哀想。


 かばってあげたいけれど、私は普通の貴族令嬢なので難しい。







 授業後は、皆で一緒にカロリーナの家に向かって食事をしたり、または町で芸術鑑賞をしたりする。


 これだけ見ればただ友達との時間を楽しんでいるようだけど違う。


 カロリーナの家が手掛けている新商品を広める準備をしたり、サービスの感想を言い合って、お仕事って感じの事をしなければならない。


 才能や適性によっては、開発にも関わる事になる。


「皆さんのおかげで、新しいサービスの評判が良いみたいですわ。素敵なお友達がもてて、嬉しいです」


 カロリーナは満足、笑顔、ご満悦という表情をいつも浮かべている。


 だが、私達取り巻きは、いつも恐怖100%で震えるしかない。


 カロリーナにとってのお友達は、使える人生で、従順な者達なのだろう。


 間違っても対等な存在ではないのだ。




 


 そんなこんなだから、一日が長い長い。


 家に帰る頃にはくたくただった。


 カロリーナから離れたくてたまらないが、逆らった人間には容赦しないたちなので、それもできない。


 逃げたお友達や隠れたお友達は引きずりだされて、トマト(比喩)にされてしまう。


 私の運命、取り巻きになった時点で終わってる?


 シナリオが進めばカロリーナはヒロインが選んだ男性の手によって、断罪され、紆余曲折あって死亡してしまう。


 取り巻きである私達も罰をくらってしまうが、ヒロインは優しいので許してもらえるのだ。


 だから、それまでの辛抱。


 カロリーナの邪魔にならないように、不快な存在にならないように取り巻きを続けていかなければ。


 でも、その間ヒロインは物理的に命を狙われ続けるのよね。


 いくら、自分の身が可愛くても、未来が分かっているのに何もしなくていいのかしら。


 



 悩んだ末に私は、秘密メールの力を使って、ヒロインに助言をする事にした。


 これはゲームの世界に転生した影響なのか、私が持っている特殊能力なのだ。


 好きな相手に秘密のメールを送る事ができるという便利なもの。


 カロリーナに打ち明ければ、絶対喜ばれるだろうけど、ろくでもない事に悪用される未来しか思いつかないので、何も言わないでいる。


 私にはこうやって裏からこっそり手助けするのが限界だ。


 早く原作が終わって、カロリーナが断罪される日がこないだろうか。





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