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清濁の青  作者: 白都アロ
3/10

師走閑話

0

 今日は早く床に就く。

 クラスの友達が、今年はゲーム機が欲しい、人形が欲しい、ミニカーが欲しいといっていた。

 いい子にしていたから、欲しいものが一つ貰えるんだって。

 僕らはいい子にしていただろうか。

 自問自答しても、お互いに訊いても分からない。

 僕らはいい子でいられただろうか。

 明日の朝には分かるだろう。

 枕元にプレゼントがあればいい子で、なければ悪い子。 

 貰えるのかな、プレゼント。

 今年は欲しいな、プレゼント。

 あぁ、でも、貰えるものはたった一つ。

 僕が欲しいのはいい子であった証明で。

 それは形のないもので。

 あぁ、だからか、と理解する。

 毎年枕元に何も無いのは。

 僕らが悪い子だったからじゃなくて。

 カタチがなかっただけなんだ。

 妹も、今年はそれがわかってくれるかな。[newpage]



1

 今日で、一年が終わる。早いもんだ、本当に。これで、あの日から、大分経つ。夜久雨と生活できるようになってからは、1年。あの子は自分の力の使い方が分かってきたみたいだ。自衛するための、もう誰にも脅かされないための、力。でも、あの子は、復讐を願うようになってしまった。そんなことしても、無駄なのに。そんなこと、できやしないのに。上手く、騙されすぎるというのも問題なのかもしれない。

 煙草の煙を、自室兼事務所の、開いた窓の外に吐き出す。

 あぁ、今日って、何曜日だっけ。働くと、本当に曜日が分からなくなってしまう。大人になるってこういうことを言うのだろうか。昔は週末になることを楽しみにしていたというのに。尤も、曜日に思いいれが無いって事はどの日も平穏であることの証明で、良いことなのだろうけど、不思議とほんの少しがっかりだ。ホント、大人ってろくなもんじゃないな。

 あぁ、寒い。しかし、窓を閉めれば部屋が煙たい。でも、煙草は吸っていたい。ぼーっと思考をループさせる。

 急かす様な電子音が思考のループを遮り、部屋に響き渡る。内線が、なっているのか。

 夜久雨、だな。出なくても、わかる。ここには僕ら二人しか住んでいないのだから。

 はい、と電話に出る。

「夜久斗、神社にいこうよ。一年の最後に神様にお礼しないと!」

 夜久雨の、明るい、声。

「うん、わかった。準備するからロビーで待ってて。」

 我ながら、柄じゃないセリフ。そのやりとりだけで電話を切り、再び窓辺へ戻る。

 本当に、寒いな・・・。

 五分ほど経ち、夜久雨が楽しそうに外に出るのを見下ろす。「夜久斗」と出かけるのが嬉しいらしい。

 こんな姿を見ると、複雑な気持ちになる。

 ・・・さて、夜久雨のために、御節の続きでも作りにいくか。 [newpage]



2

 久々に昼の街に出歩きます。今日で今年も終わってしまいます。こんな日ぐらい仕事をサボってもいいでしょう。もともと明確な任務でも無いですし。そう思い、日本酒を買いに宿をでる。周りはすっかり雪が積もっています。

 歩くたびに、雪を踏みしめるたびに、音が鳴ります。足元には雪があり、その下には当然氷がります。・・・気を抜くと転びそうになります。

 本当に、雪道にはなれません。狭いし歩きづらいことこの上ないです。それでも、酒屋に行く足は止ることはしません。

 お酒がないまま年なんて越したくないからです。・・・この狭い道で前から人が来たら、すれ違うの大変でしょう。幸い、今は誰も歩いてないからすれ違わなくて済むのでいいですが。途中、鳥居の前を通り過ぎます。

 私は、神に祈る文化なんて、もって、ない。だからここには用はない。今日にしたって、明日にしたって。

 ・・・さて辛口にしようか、甘口にしようか。悩みます。悩んだときは、両方買うしかないでしょう。三本ぐらいなら、一晩で飲めますし。

 ぼーっと考えていると、何かにぶつかります。

 ・・・青い服の、女の子が一人、です。何か、誰か、でした。間違いなく、考え事して前方不注意な私が原因でしょう。転ばしてしまって大変申し訳ないです。

「大丈夫ですか?」

 女の子に手を差し出します。

「あ、う、は、はい。」

 そう戸惑いながら呟き、私の手をとり、立つ。

「・・・ロク?」

 ・・・息を飲みます。顔が、似ています。似すぎです。

「・・・ふぇ?六?」

 首を傾げる女の子。・・・そう、この子は、女の子です。ロクの、はずがないです。どんなに似ててもあの人は男で、それに隻眼です。

「ごめんなさい、ありがとうございました。」

 笑顔で女の子はそう言い残して、去っていく。私が来た道を真っ直ぐに。

「まってよ、夜久斗。」

 青色の服の女の子は、「誰か」にそう言ったように聞こえました。でも、私はその意味が理解できませんでした。

 けれど、私は振り返ってその意味を確認しようとはしません。だって、きっとこの先彼女に関わることはないのでしょうから。

 だから、こんな小さな違和感をおいて、私は酒屋に向かって歩き出します。[newpage]



 フードを被り、私は町を歩く。今日は、仕事ではない。あまり、仕事以外に一人で町に出ることは無いのだが、今日だけは、特別。

 今日だけは、おいしいものを買いに行かないといけない。何故って、そう教えられたから。

 余分なことであるってことは承知しているが、教えられたことであるならば仕方が無い。何の意味があるかなんてわからないが、今は分からないだけで、そのうち分かるのだろう。だから、急いで知ろうとする必要は無い。そうとも習ったので、そうすることにする。

 行き先は、街に一つしかない、デパート、という所だ。ここなら大抵のものは良い品質でそろう、と教わった。

 私は基本的にものなんて使えればそれでよいのだが、良い品質のものを買う、ということは精神的にも良いことらしい。これも、教えで、まだ、理解はできないけれど。

 そんなわけで、ここに来た。重い扉を開けて、中に入る。デパートの中は混雑している。今日は大晦日といって、特別な日らしい。年が変わるというのはそんなに特別なことなのだろうか。

 私は階段を下りて、地下に行く。そこは、一階の倍ほどの人であふれていた。その人ごみの間を、私はすり抜けて歩いていく。

 たどり着いた先にあるのは、非常にゆっくりと回転する台があった。目的地はここだ。台の上にはお菓子がのっかっている。

 量り売り、というらしい。

 私は原色の色のついた買い物籠を手に取り、まわらない台である踏み台に昇り、お菓子を選定する。

 一つ一つ包装された大きな苺ジャム入りのマシュマロ、青色と白色と黄色の金平糖の袋、棒にささっている大きなキャンディー、それらを適当にかごに入れ、壮年期の男性に手渡す。

「おや、お嬢ちゃん、一人かい?」

 見れば分かることを問うてくる。首を縦に振り、その質問に答える。

「そうかい、そうかい。えらいねー。」

 買い物が一人で出来ることは偉いらしい。

「んー、ちょっとおまけしよっか。」

 金額が、提示される。それを、ポケットからだしたがま口の財布をあけ、支払いする。

「ありがとうございました。」

 お菓子の入った紙袋を手渡してくれる壮年期の男性に、私は言う。言わなきゃいけない、そうならったから。笑顔で、とも言われたが、そこまでは守らない。

「ばいばい、またきてね。」

 と、手をふられる。だから、無言で手を振りかえす。

 買い食い、というらしい行為は、特別に許可が下りたときにしか許されないらしいので、私は紙袋を落とさないように胸元に抱え、元来た通り、人ごみに帰っていく。

 拠点に帰ったら、ゆっくり食べよう。 

                   了


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