第2話 父は勇者、母は聖女、息子は娘にTS転生
行方不明になっていた両親曰くー…
『お父さんとお母さん、勇者召喚ってので呼び出されちゃってね、さっきまで異世界にいたのよ〜』
『かーっ、やっと家に帰ってこれたわっ‼︎』
「えぇー…」
両親がフルスロットルで、トンデモないネタをぶち込んできた。
父は勇者、母は聖女として召喚された。
召喚を行なった国の王子くん、魔法使いの美人さん、大賢者のビュッフェバインさんをパーティーメンバーに加え、魔王をボコりに行っていたのだと、両親は語る。
そうして魔王をフルボッコにして帰ってきたら、息子が事故で死んでいて驚いたのだと、両親は言う。
慌てて召喚される際に知り合った女神様に相談したところ、定期的に地球から異世界に送っていた魂に紛れ。誤って自分の魂も異世界に送られていた事が判明したとの事ー…
通常、転生は決められた母体に、魂を宿らせる方法で行われるらしい。
だが、予定にない自分の魂には、宿る母体が用意されている訳がなかった。
当然だ。
女神様が自分の魂を発見した時、自分の魂はむき出しの状態で、ぷかぷかと異世界のお空をクラゲのように漂っていたとの事。
魂は繊細なモノで、そのままの状態が長く続くと不安定になり、最悪の場合消滅してしまうらしい。
つまり自分は、かなり危うい状態に陥っていた事になる。
ゾッとした。
女神様は特別処置として、大急ぎでカラダを用意する事を決めた——が、ここで母が待ったをかけたらしい。
何故ー…?
『実はわたし、二人目を産むなら女の子が欲しかったのよ〜』
母がまさかの、息子を娘にTSさせる暴挙にでていた。
「何してくれてんだオフクロぉーーっ‼︎」
自分はブチギレた。
当たり前だ。
何考えてんだアンタっ‼︎
『俺はよしとけって言ったんだがよぉ…。母ちゃが、どうしてもって言って聞かなくてなぁー…』
『あら、女神様もノリノリだったのよ?任せて下さい、最高の美少女に仕上げて見せます——て言ってくれて。アンタ、せっかくそんなに可愛いくなったんだから、今世はしっかりイイ相手つかまえて、早く孫の顔見せるのよ!いいわね‼︎』
「ふ、ふざけんなぁーーっ‼︎」
※余談的なウラ話
王子は可憐な少女が召喚されるものと思っていた——が、しかしながら結果はババア。王子は膝から崩れ落ちた。
魔法使いはイケメンショタ勇者が召喚される事を期待していた——が、現れたのは小汚いジジイだった。魔法使いは持っていた杖を床に叩きつけた。
大賢者ビュッフェバインは勇者召喚を粛々と執り行っていた——召喚されたのが同年代のふたりだったので、大賢者ビュッフェバインは大変喜んだ。若者だらけのパーティーに加わるのは、ちょっと辛いと思っていたからだ。