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第一話 異世界転生

 自由とは何か。

 "人は生まれながらにして自由であり平等だ"と何処かの誰かが宣言していた。


「先生、奴隷の身分で産まれた赤子にも自由はあるんですか?」


「え?えぇ、もちろんです。産まれてくる子どもには何の罪もありません」


 産みの親に如何なる身分、罪があろうと産まれてくる子に影響を与えないと言うなんとも自分勝手な提唱。


 子どもは関係ないというのなら貧しい家庭に生まれた子どもには相応の良い思いをさせ、裕福な家庭に生まれた子どもには相応に厳しくさせればいい。


 とまぁそんな事は言っても仕方がないし実際どうでもよかったりする。

 親が子どもの足を引っ張るというのなら無理やり引き剥がして離れればいい。いつまでも親が、家が何とか言っているのならとっとと自分から自由を求めて行けばいいのだ。


 それでも世間はたった一人の消息を絶った少年さえも追いかけ回そうとする。


「"昨夜未明──也尾町に住む高校一年生の(こおり)弥智(みさと)くんが行方不明となっており……──」


 これはまずあの女の仕業と思って間違いないだろう。俺のことを自分の子どもと思ったことなど一度もないくせに、父さんの前では我が子を可愛がるような目を俺に向けてくる。ねっとりしたあの視線が脳裏に浮かぶだけで吐き気を催すほどの気持ち悪さを覚える。

 俺がいる限りあの女は父さんからお金を貰いそれでパチンコに明け暮れている。まさに抹殺されるべき類の社会不適合者だ。

 仮面の被り方が上手いクソと人が良すぎる父さんという、最悪の組み合わせで我が家は成り立っているのだ。


 そんなわけで俺は今、自由を求めて一人歩き続けている。

 何かを望むのであれば、待つのではなく自分から掴みに行けというような名言があるだろう。いや、もしかしたら望んで進んでいればいずれ向こうからやってくるという名言もあったような気がする。


「そんなありもしない事が起きれば世の中の不幸人は苦労しないんだけどな」


 なんてボヤいていると、昼間の人通りが少ない一本道で俺以外に歩いている人が向こうからやって来た。

 通りすがりの人が独り言をブツブツと呟いているのは流石に気味が悪いだろう。ここは早めにすれ違って早歩きをしよう。

 そう思ったのだが


「──……えぇ…」


 突如右腹部に味わったことの無い違和感を覚えた。


「やっと見つけた」


 聞き覚えのない声でそう言って、違和感を与えた得物を勢いよく引き抜いた。


「いっつ………!なんだよ、これ……っ!」


 強烈な痛みが右腹部から全身に伝わってくると立っていることもできずに自らの身体がその場で崩れ落ちる。意識が失いかけるほどの痛みに襲われながら俺は、手に血のついたナイフを持って突っ立っている男を見上げた。

 何も言葉を発することなくこの場から立ち去っていく男を追うことなどできるはずもなく、広がっていく激痛にただ耐えることしかできない。


「くっそ………誰だよ、お前……………──」


 やがて意識が朦朧としてきたころに周囲が騒がしくなってきた。甲高いサイレン音と人の叫ぶ声だけが最後に聞こえてくる。



 ────────────────────



 結局自由は求めるものではなく付き添うものなのだろうか。

 天性のものとでも言うのか、自由無く生まれてきた者はそれ欲しさに生涯自由を求めて生きるが、その果てに自由は得られずにただの願望として終わってしまうのか。


「──どうしましょう、ラリィが泣かないわ!?」


「落ち着いてください奥様!確かに不自然ではありますが息もありますし目を開いていますから。とりあえずは成功と見ていいのではないでしょうか」


「そうだリミス、私たちの間に生まれた新たな命に喜べばいいじゃないか……!」


 慌てふためく母親を落ち着かせようと必死になる侍従に、冷静を装いながらも感極まって泣いている父親。


 そして仰向けで目に映ったのは輝かしいほどね装飾が成された天井だ。一つだけ不気味に眼のような装飾と何故だか目が合っているのが怖い。


「わぁーー!!見て見てあなた、私たちの子よ!あぁなんて麗しくて凛々しい目なのかしら」


 すべすべの肌を擦り合わせて俺に顔がぐりぐりされている。

 かくして、俺は異世界へと転生してしまった。

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