一年後
銀髪・黒い和服の女性「この間、同級生と買い物に行ったんです。そこの洋服屋さんって、普通は着ないような服も置いてあって…結局数時間、特に何も買わずに楽しんでしまいました」
深く帽子を被った少女「へぇ?ちょっと意外…年中和服だから、それしか興味がないんだと思ってた」
目隠しを付けた、真っ赤なドレスの女性「私も、素材はいいのに勿体無いと思っていたけれど…そういうことなら次からは私にも声をかけてください?鏡花、貴方に最高の着こなしを仕立てて差し上げるわ」
真っ赤なツインテールにブカブカパーカーの少女「…ククアさん、いっつもドレスだけど…大丈夫かな…??」
ククア「ドレスは最上の礼服よっ!私のセンスを疑うようなら、ヤイナ!年中同じパーカーの貴方も一緒に連れて行くわ!」
都市郊外、高層ビル街から一駅離れた住宅街のとある一角に、その喫茶店はあった。
1日の来客数は平均して10人いないぐらい。
豪華な装飾なんてない、質素な喫茶店には現在、何故か、色取り取りな少女たちが和気藹々と話しを膨らませていた。
鏡花「マスター、抹茶ラテをお願いします」
ヤイナ「ミルク!シナモンと蜂蜜!」
ククア「マサラチャイ……いえ、テータリックを」
マスターと呼ばれた男「…小月、君は?」
小月「エスプレッソ」
それぞれの注文をこなしていく、手慣れた様の喫茶店のオーナー。最初の香りは、苦味と甘みのコントラスト…当初はなかった抹茶の渋い香りは、もうこの喫茶店に、なくてはならないものだ。
外の喧騒は、この場所には届かない。
…正確には、店内のBGMが掻き消している。
都心、住宅街の外れ…平和なこの国では騒がしいはずもない…なんてのは、少し前までの話。
銃声が聞こえないだけマシかも知れないが…今やこの国は、他の先進国とさして変わらない。
抹茶とミルクが完璧な調和を生み出し、最初に完成したのは抹茶ラテだ。
……匂いは、記憶を蘇らせる。
ずっとずっと昔のようで、たかだか一年前の記憶から……。