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モノワタリ 世界還元  作者: コンドーム風味
第一章 新たな世界へ
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第一話 まだその世界を知らぬ僕 (1)

 ※注

 あらすじにもある通り、取り敢えず第一話を読んだほうがいいです。第一話はかなり文章量が多く、八段階に分けてあるので、取っつきにくいかもしれませんが、色々と丹精込めて書き上げたので、読んでほしいですね。

 あの入学式から一か月半が経過していた頃、例の少女とその隣の付き添いのとある幼女と鉢合わせた。


 一瞬目を合わせたのでそのまま話しかけようともしたが、なぜか彼女たちは僕を無視してそのまますれ違おうとする。


「ちょちょ、ちょっと!」


「え?」


 こちらの方へと振り返る彼女。一瞬こちらを睨みつけているようにも思えたが、すぐに笑みを浮かべてこう言い放つ。


「何か?」


「唐突かもしれないけどよ…入学式のとき、僕の方をじーっと見てきてたからさぁ、そのぉあれ何だって思って………人違いだったらすまないけども」


 彼女はまだ不思議そうな顔をしてこちらを見つめている。


「あぁあの時の…すいません。あの時すごく緊張気味でして、えっとぉ…隣だから挨拶でもしようかなって思ったんですけど…」


「そ、そうなんだ。なんか、僕の顔に変なものでも付いてるのかと思った。ところで、これからなんか…付き合いも長そうだし、名前を聞いてもいい?」


「え?名前?ああ…同級生ですもんね。私の名前は、「霜江怜弓(シモエレイユ)」と言います。ちょっと、キラキラネームっぽくて恥ずかしいですけど…」


 同じ学年でも謎に丁寧に距離を保ちながら返答していく彼女に釣られ、僕も敬語を使ってしまう。

「僕は鳥羽渉トバワタルって言…います。んー…同年代だし、敬語じゃなくても良くね?」


「分かりました。そうすることにします。…あ、違う、そうするよ」


 今のところ怜弓は特に目立たない普通の女子中学生という感じだが、とても普通じゃないと思えるのが、その隣の少し身長の低い腰巾着だった。


 彼女の妹とも思えるが、それ以前に中々独特のヘアスタイルであったり、手に何かを握りながら白目を剥いているこの格好はかなり次元の違う人間なのかと思わせてしまうものだった。


 とても普通の小学生女子のようには思えない。はっきり言って、自分から見ても、周囲から見ても、ものすごく滑稽に見える。


 あまりにも不自然なその子のいで立ちに、僕の頭は疑問に満ち溢れていた。

「えっとぉー、この子は?」


「あ、妹のこと?ごめん、何か変に思っちゃった?」


「えーっと、どこから突っ込んでいいのか分からねぇ、うっぷぷ(笑)…どうしてこんな感じなの?」


「渉さん、申し訳ないけどこの子のことあんまり笑わないであげて。この子、多分誰かの真似をしてるだけで…笑うとごねて取り返しの付かないことになるから…」


「…ごねてねえし」


 その時怜弓に反論でもするかのように彼女の妹は声を発した。妹は、その背丈に似合わないそこらのヤンキーのような風貌と口調で喋っていたようだった。しかし白目を剥いたままの喋り方だったので、ズルすぎるそのシュールさによってまたさらに僕は笑いそうになってしまう。


「んん(笑)…それでこの妹さんのお名前は…?」


霜江綴シモエツヅレっていうの。だけれど…その…やっぱり変…だよね。」


「なんで白目なのかな。つづ…れ?ちゃん。」

僕は腰巾着の目線に合わせるように軽く座り、顔を腰巾着側に向けて覚えたての名前を呼び、明らかに上から目線のような態度をしてみると、綴はすぐに反応してくれた。


「無視してるって意味なんだぞ。てめぇらみてぇな頭の悪い出来損ないを見ないためにな。あと、ちゃん付けすんな」


 独特な口調であった。それと同時に、そういうクソガキなのだということも悟った。


 どうやら、とても香ばしいキャラクターのようだ。


「ふっふぇー。そうなんだぁーねー(震え+笑い)」

自然と軽く下手な演技風に口調や顔が飛び出ると共に、若干にやけ面を晒してしまった。しかしこれにも敏感な反応を綴は見せる。


「姉貴ー、こいつ今笑ったぁあー。帰りてぇ!」

綴は明らかな嫌悪感を見せたのだ。


「まっまっ待ってね。まだお買い物中だから、我慢して。ね」

怜弓は妹を優しく諭した後、こちらに顔を向けてこう言った。


「…あの、もう少し笑いは控えてもらえないかな」


「え…ちょっとにやけちゃっただけなのに…マジか」


 怜弓に注意され、僕は少し不満げに顔を下にする。その時、綴が怜弓に駄々をこねている様子が目に映るのだが、なんと彼女はまだ白目を剥いており、この滑稽さがさらに僕を追い込んでしまった。ますますシュールさを拭い去ることが難しくなってしまったのだ。


 そしてついに我慢が限界を迎えた。


「プッハハ…白目剥きながらねだるって…アハハハハハハ」

少し陰口っぽく、しかしながら割と小さめに笑ったつもりだったが、その言葉を放った瞬間、綴は一瞬だけこちらに顔を向けた直後、すぐに怜弓の服に飛び込み、顔と半身を隠した。


「あっ…」


「姉貴ーもう帰りてぇ!」


「あともう少し我慢して…だから…」


「こいつ死ね!うぜえ!ヤバい!!」


「はあ…」

綴が汚い言葉を発した瞬間、怜弓は溜まっていたであろう不満を少し零し、さっきまでの甘やかしモードを捨てたかのような態度を見せた。


「もう…綴、買い物するから何言われても我慢しなさいって言ったのに…!ほら、泣くのやめな。」


「でも…」


「やめなさい。いい子だから」


「だってぇぇぇえぇ!!」


「やめなさい!」


 妹を庇おうため必死だった怜弓も、駄々をこねられ不満なのか、妹を強く叱ろうと、自分の体から引き剝がそうとした。しかし、その後妹の方から姉を拒絶した。


「うぅ…姉貴も…姉貴もこいつもゴミ!ナッチーんとこ行く!」


 そうやって綴は少し涙目になりながら、とある場所へと赴くために先ほど来たであろう道を駆け抜けていってしまった。


「ちょちょっと…もう!ちゃんと夜になるまでに帰ってきなー!…はぁ」

怜弓は、ひとしきり大きな声を出した後、どっと肩を落とし、小声でこのような独り言を言った。


「…私が本当の姉だったら、こんな苦労しないのかな」


「え…今なんて…?」


「いや…別に…」


「今…本当のアネ…みたいなこと言ってなかった?」


「き、聞かれてたかぁ…ハハッ」


「何かありそうだけど…」

わざととぼける彼女に僕は目を細めた。


 そしてそのまま僕は、霜江綴との関係性について、怜弓に探りを入れることにした。

「あの子とはさ、何かあったの?」


「じ、実はね…あっ一応聞くけど、その…ゲームとかアニメって好きだったりする?」


「へっ?」


「えっとその…どうかなって」


「まっまあね。ていうか、チョー好き。んー、何故その質問…?いきなり?」


「え…えっとぉ、笑わないでほしいんだけど…その、私、実は異世界から来たんだ」

 第一話 (1)を読んでくれてありがとうございます。


「第一話」は、計八話分を一日で全て、三時間ごとに小出ししていくっていう感じです。


 次のエピソードはこの三時間後に投稿されるって感じですね。こんな感じで引き続き、よろしくお願いいたします。


 ブックマークもお願いします。


 主人公追放まであと、18時間…

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