第八十七話 フェラー辺境伯領 二 暗躍のフェラー辺境伯 四
本日あと三話投稿します。
翌日、私達は奴隷商の所へ来ています。
奴隷商人はいきなり来た見慣れない貴族に吃驚して固まっていましたが、すぐに再起動し私とロバルト、アレックスにメアリーを応接室へ通しました。
「申し遅れました、私ここより遙か南西に位置するカウフマン公爵領の当主、クリスタ・カウフマン女公爵と申します。以後よろしくお願いします」
その言葉を聞いて、壊れた魔道具のように「カ、カ、カ、カウフマン、か、か、閣下…… 」と言っています。
今の状態の方が失礼なのですが、言わないでおいてあげましょう。
何せ、この地の城をマグマに変えたのは私ですから。
「コホン」
咳払いすると、再起動し直し奴隷商人が挨拶をしました。
双方挨拶が済み、用意されたソファーに座り冷や汗を流している奴隷商人が用件を聞いてきます。
「し、して今日はどのようなご用件でしょうか? 奴隷の購入でしょうか? 」
「いえ、今日は販売の方です」
それを聞き、少し疑わしくこちらを見てきます。
貴族が奴隷を販売するようなことはあまりない事なので仕方ありません。
「物件としては良い物かと。計算に文字の読み書き、礼儀作法も出来ます。ただ……」
「ただ……? 」
「犯罪奴隷になりますが」
それを聞いた奴隷商人は納得がいったのでしょう。
すぐに秘書らしき男性に契約用の紙を持ってこさせました。
「因みにどのような犯罪かお聞きしても? 」
確認は当然ですね。
「ええ、領主代行毒殺未遂です」
一瞬呆けたような顔をして、こちらを見てきました。
それもそうでしょう。
そもそも領主が変わっていること自体まだ公になっていないのですから。
「失礼。今は私がこの地の領主代行になります。昨日、元フェラー辺境伯は様々な罪により今は牢屋にいます。そして屋敷の者が料理に毒を盛り暗殺を試みた結果、鑑定魔法により毒が入っていることが判明、捕縛しました」
一呼吸置き、更に続けます。
「屋敷もただ飯ぐらいはいりません。よってこの者達を犯罪奴隷の落とすこととなりました」
そう言うとアレックスが待ってました! と言わんばかりに、扉を開け罪人を引き連れてきます。
恨めしそうにこちらを見てきますが、実行した自分達を恨んでください。
「承知いたしました。では、こちらにサインを」
口をふさがれ「ウー、ウー」という言葉にならない言葉が聞こえる中、私はサインをして奴隷の受け渡しが終了しました。
彼ら彼女らの方を見ると、絶望した顔をしていますね。
恐らく今までも同様のことをしていたのでしょう。
きちんと罪を償ってくださいね。
そう思いながら私は奴隷商を後にするのでした。
★
「さて、昨日私を殺そうとした不届き者はもれなく奴隷になりました。皆さんの中に同じ道を辿る者がいなことを願います」
一旦広間に集めた使用人達に事の顛末を発表し、警告する。
これ以上厄介事を増やされても困りますし、きちんと説明しておく必要はあるでしょう。
あと少しの間柄とはいえ。
警告し終えた私達は一旦書斎へ行き、調べものをします。
前に領地の物を色々と持ってきたのでしょう。
フェラー元辺境伯の物が色々出てきます。
正直気持ち悪いです。
捨てたいです。
しかしこれら書類も調度品も後で証拠になったり王家預かりになったりするので捨てるわけには行けません。
「よくもここまで贅沢品を集めましたね」
メアリーが少々顔を歪めながらぼやきました。
「隣は仮想敵国だというのに、どこのこのようなお金があったのでしょう? まぁそれも陛下が前の屋敷を調べて出どころを抑えているでしょうが」
確かに、というメアリーと共に今日もまた書類に埋もれるのでした。
★
クリスタ達に売り払われた奴隷達は今、質素を通り越して布一枚の状態で与えられた部屋で僅かな休憩をとっていた。
その姿はもはや元高位貴族が所有する屋敷で働いていた使用人とは思えないほどにボロボロだった。
これには訳がある。
というのも彼ら彼女らは犯罪奴隷として売り払われ奴隷紋が刻まれたわけだが、本来は高価で売るためにそれなりの待遇を予定していた。
彼ら彼女らは高位貴族の屋敷で働いていたということもあり、教養は十分で礼儀作法もできる。おまけに顔もスタイルも悪くない。
しかしここで邪魔をしたのがプライドであった。
他の奴隷達が聞いたら恨み殺されるであろう程の待遇にもかかわらず文句をいい、まるで自分達が何故ここにいるのか理解していない様であった。
勿論のことそのようなワガママがここで通じるはずがない。
奴隷紋が発動したと思えば激痛が走り、また調教専門の奴隷商人が鞭を打つ。
普通ならば何回も繰り返したら心が折れるのだが、それが何十回そして百に到達しようかと思うほどに打ち込まれた。
まるで誰かが助けに来ることを確信しているかのように。
そして……。
スタ、スタ、スタと足音が聞こえた。
やっと来た! と休憩していた者は起き上がる。
相手はいざと言う時に助けてくれる解放者。
いつでも逃げれるように待つ。
スタ、スタ、スタ……スタと足音が止まった。
(私の所だわ! )
「へまをしたようだな……。無様なものだ…… 」
「も、申し訳ありません。まさか『爆炎の魔女』が出てくるとは思わなかったので」
「いくら相手が爆炎の魔女だろうと、失敗は失敗。本国に帰ったら、覚悟しておけよ」
「はい! 分かりましたので逃げれるようにしてください! 」
「……全く反省しているのか…… 」
そう思いつつも彼女を解放しようと手を伸ばした瞬間――その者は闇に消えた。
「ふぇ? 」
一体何が起こっているのか分からない。
そして徐々にそれは彼女の背中を這い上り、彼女を包み込んだ。
彼女がいたところにぽつんといるのは黒装束の男である。
「……あまり仕事を増やしてほしくないのですが」
そう言い彼は次の目標に向かって、移動する。
魔法王国の情報を外に出させないために。
その次の日、犯罪奴隷の大量行方不明事件が発表された。
勿論、カウフマン女公爵領主代行も領軍を派遣し、捜索を行った。
しかし誰一人、死体一つ見つからない。
それもそのはず、彼らの死体は十二魔剣の一人、暗殺者ドッペル子爵の影の中にあるのだから。
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