表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/119

第八十三話 フェラー辺境伯領 一 ミスリルの街

 ウッド子爵領を()け、フェラー辺境伯領へ入るとそこは山・山・山である。

 

 勿論、林業が領の主産業の一つであることからウッド子爵領も山が多いのは分かる。しかしウッド子爵領の山は木々が多く、青々としているので主に森や林と言った方が良いだろう。


 ウッド子爵領からフェラー辺境伯領へ向かうとその様子が(こと)なってくる。

 森や林のような青々とした様子から、禿(はげ)た茶色い山へと。


 木の()()ぎもあるのだが、これはこの地帯に鉱山が眠っていることが分かったことにより、より積極的に伐採(ばっさい)がされ鉱山として活用された歴史によるものである。


 ウッド子爵領にあるこういった山々はもうすでに鉱山としての機能はもうない。

 ()()ぎたわけではなく、元々少なかったのだ。


 逆にフェラー辺境伯領のこういった山々には未だ多くの鉱物が眠っている。


 フェラー辺境伯領の特徴はその収入の(ほとん)どが鉱山とダンジョンからによることであろう。

 そして領都を中心にウッド子爵領からは多くの鉱物が、公国側からはダンジョン産の素材が領都へ持ち運ばれそれや加工物を他国へ売ることにより収益を得ている。


 最も国が認めた範囲で、であるが……。


 ★


「今日は泊めていただきありがとうございます」

「いえいえ、我々としてもこうして本国の貴族様、それも女公爵様を泊めることが出来て光栄でございます。これは子孫代々(しそんだいだい)自慢話にしなくてはなりませぬな」


 ははは、と笑いながら私達を歓迎してくれるのはこの村の村長さんです。

 今は村長さんの家で話しています。

 素朴な家ではございますが、どこか品のある感じを受けました。


 村長さんと言っても屈強な青年といった感じを受けます。

 服はよれよれで恐らくこの方も現場に出ているのでしょう。

 生傷(なまきず)所々(ところどころ)見えます。


「この村は主にミスリルを輩出(はいしゅつ)する村でして、明日にでも領都の方に向けて(いく)つか出す予定なのですよ」


 あら、それは良いタイミングですね。


「ミスリル、ですか? それは良いですね。加工された物を見たことはあるのですが加工前の物をあまり見たことがありません。是非(ぜひ)とも一度見てみたいのですがいいですか? 」

(かま)いませぬよ、いくらでも見て行ってください」


 そういわれ私は村長と家から出て、ミスリルを置いてある倉庫へと向かいました。


 倉庫は大きな建物です。

 多少金属が入っているのか、キラキラと光っています。


 村長さんが入り口にいる管理人のような人に声をかけると「誰ですかい、その別嬪(べっぴん)さんは」「村長さん、まさか結婚するんですかい?!」と話していましたが「たわけが! 本国の貴族様だ! 服装でわからなんのか!」と(しか)っていました。


 こちらを振り向くと村長さんが言いました。


(もう)(わけ)ありません。何分(なにぶん)、貴族様と接する機会のない者ばかりで後で(しか)っておきますのでご容赦(ようしゃ)ください」

「いえいえ、大丈夫ですよ。お気になさらず」


 ほっとした村長さんが先導(せんどう)し、倉庫を案内します。


「こちらがミスリルの原石、そして向こうが原石からミスリルを抽出(ちゅうしゅつ)したものになります」


 手前にあるミスリルの原石は男の人の手のひら大ほどの大きさに切り分けられており、所々(ところどころ)黒ずんでいます。

 教科書通りだとこの黒ずんだところがミスリルなのでしょう。


 そして(おく)にあるミスリルと説明された物の近くに行き、それを(なが)めるととてもきれいに輝いていました。

 色は白銀色で村長さんが持ってきた光球(ライト)の魔道具に照らされ光っています。


 さぞ()()るのでしょうね。


「村長さん、これでいくらくらいするのですか? 」

「そうですな……。抽出(ちゅうしゅつ)前でキロ当たり金貨十枚、抽出(ちゅうしゅつ)後で金貨十五といった所でしょうか? 」

「「「え??? 」」」


 や、安すぎます!

 どういうことでしょう?


「ア、アレックス、本国での単価はどのくらいでしたか? 」

「そ、そうですね。抽出(ちゅうしゅつ)後、キロ当たり白金貨一枚でしょうか……」

「な!!! 」


 この違いに(あご)が外れんばかりに驚いたのは村長さんでした。

 産出量の問題もあるので一応説明しておきましょう。


「確かにこの領地はミスリルを始めとした多くの金属の産出量が多く、それにより単価は下がります。逆に本国での産出量が少なく、単価が高いのは分かります。ですがこの開きはおかしいですね……。村長さん、いつもこの値段だったのですか? 」


 私の話を聞き我に返った村長さんはまだ驚いた感じでたどたどした口調で、答えます。


「ええ……そうですね。昔から、私の親や(じい)さんの(だい)からずっとこの値段です」


 ならばフェラー辺境伯自身だけの問題ではなさそうですね。

 しかしこれを是正(ぜせい)しないのも領主としては問題です。

 格安で売るのは一時的にはいいかもしれませんがこれが長期化するとすぐに資源がなくなってしまいます。

 ミスリルのような希少金属は特に、です。


「前国王の代わりに領主が派遣(はけん)されたはずなのですが、どなたか巡回(じゅんかい)にきましたか? 」

「はい、治安部隊を名乗る者がきました」

「その時、彼らは何か言っていましたか? 」

「いえ、特に……。あ、値段と関係あるかは分かりませんが「今回の納品(のうひん)を急げ」と言っていましたね」

納品(のうひん)を急げ、ですか? 」

「この地では多くのミスリルが()れるので、在庫が多くあります。なので時期を早めて納品(のうひん)する分には問題なかったので了解したのですが……」


 それは何やらきな臭い話ですね。

 面白いことを考えました。


「分かりました、少し時間はかかると思いますが何とかしましょう」


 そう言い今日は村長宅に泊まり、明日に向け準備をするのでした。

 (なお)、この村でミスリルを多く購入しました。

 腕輪を作るのに失敗することも考えて、多めに買ったのです。


 その金額、白金貨三枚。


 アレックスの顔が()()っていましたが、まあいいじゃないですか!

 私の財布から出したのですから!

 

 白金貨を手にした村長さんが今にも倒れそうでしたが何とか()()ってもらいました。

 どれだけ冷遇(れいぐう)されていたのですか……。


 これはフェラー辺境伯にはお仕置きが必要ですね。

 ええ、必要ですね……。


 ★


 翌日私達はこの村を出立し領都フェラーへ向かいました。

 私とメアリー、そしてアレックスで。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブックマークへの登録や下段にある★での応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ