表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/119

第三十二話 カウフマン公爵家 七 たった一人の合格者

「え? あれ? 貴方様は……」


 フフフ、少し動揺(どうよう)しているようですね。


「私はカウフマン公爵家当主クリスタ・カウフマン女公爵です。今後ともよろしくお願いいたしますね、マイケル・スミスさん」


 その言葉を聞いてぽかんと口を開けていたマイケルは徐々に正気(しょうき)を取り戻し、現実を理解する。


「え?......えええええ!!! 」


 ★


 一通(ひととお)りマイケルが驚いた後、一旦(いったん)落ち着き今回の(けん)を説明することにした。

 どの道雇うことにしたのだから話しても大丈夫だろう、ということだ。


 一同(いちどう)一旦(いったん)応接室へ移動し、ソファーへ座りました。

 私を中心に両脇にエバンス子爵夫妻、その背後にはエドワード、対面する形でマイケル君です。


「まず、今日の(けん)ですが本来は予定していなかった求人なのです」

「え? あれ? でもぼ……私求人を見ましたよ? 」


 あれ、どういうことでしょう?

 何か貴族のつてで聞いたのかと思ったのですが。


「……失礼ですがそれはどこでみましたか? 」

「アカデミーの就活促進(そくしん)部の所です」


 恐らくアカデミー側が新年雇用分の求人票を外し忘れたのでしょう。


「大体状況は読めました。で、今回なのですが我が公爵家に対して不穏(ふおん)な動きがありました。それに加え私の死亡が流れたと同時に数多くの貴族家が人員を送ってこようとしました」

「そ、それは聞きました。しかし……」

「えぇ、私はこうして生きています。よってそれを逆手(さかて)に取ろうかと思い今日(こんにち)(いた)るわけです」


 成程、と(うなず)くマイケル。

 そこで一つ気になったことを聞きましょう。


「最初から私の存在隠蔽(ハイド)見破(みやぶ)っていたようですが、何かの魔法でしょうか? 」

「あ、いえ違うのです」


 それと同時に自分の目を指さして「私の目を見てみてください、危険とかはないので」と言います。

 少しだけキラキラしてますね。


「この目、分かりにくいかもしれませんが魔眼なのです」

「ほう、そりゃ珍しい……」


 そう乗り出したのはハリー兄さんです。

 彼は突然のハリー兄さんが会話に入ってきたことで驚いている様子です。


「こ、これは看破(かんぱ)の魔眼です、ハイ」

看破(かんぱ)、か。これならクリスタの屋敷からの脱出を見破(みやぶ)るのに役に立ちそうだな! 」

「何を言っているのですか! ハリー兄さん。私はそう易々(やすやす)(つか)まりません」

「脱出することを前提(ぜんてい)に話さないでください……」


 マイケルはそのやりとりを緊張しつつも、どこか温かく見ていた。


 何というか、印象(いんしょう)と違う仕事場だ。

 最初はどうなるかと思ったけどやっていけるかもしれない!


「そんで、この坊主(ぼうず)はどこへ配属(はいぞく)するんだ? 」

「そうですね……。面接は彼らを捕縛(ほばく)するためものだったのできちんと面接はしなかったのですが、何か得意なことはありませんか? 」


 あるけど……。


「……特に……」


 クリスタはその様子を見て「何かありそう」と感じ、さらに聞く。


「なんでもいいのですよ? そこのハリー兄さんは魔眼の事もあって治安部隊に入れたそうにしていますが……」


 ちらっと横目でハリー兄さんを見ると、(ほほ)()きながらバツの悪そうな顔をしています。


「なんでもいいのですよ? 」

「……絵を()くのが……得意……です」

「絵、ですか? 」

「はい。父の(すす)めもありアカデミーに入りましたが、実際の手書きや魔法を駆使(くし)した……様々な方法を用いて絵を()くのが得意です」


 ムムム、これはもしかすると金の卵かもしれませんね。

 いいでしょう。


「分かりました。では、道具や資金はこちらで用意するので絵を()いてもらいましょう」

「いいのですか?! 」

「はい」

「でも私は使用人の面接を受けに来たはずでは……」

「えぇ、なので我が家の専属の絵師になってください」

「あ、ありがとうございます! 精一杯(せいいっぱい)頑張ります! 」


 こうしてカウフマン公爵家に新しい従業員が入った。

 彼はカウフマン公爵家で働く中、途中カウフマン公爵領オーガスへ国内留学に行くことによりその才能を開花させるのだがそれはまた別のお話。


 ★


 新規従業員の採用も終わりクリスタ、ハリー、エリー、エドワード達は一同(いちどう)会議室に集まっていた。


「さて、これからの事ですがいいでしょうか? 」

「なんでしょうか、クリスタ様」


 メイドが紅茶を()み、それが終わると退出していった。

 ポットからティーカップへ(そそ)がれる紅茶からいい匂いが(ただよ)ってくる。

 私の言葉に反応したのはエドワードでした。


「まず方針(ほうしん)として、まだエバンス子爵夫妻がこの家を管理していることにします」


 そう言いながらハリー兄さんとエリー姉さんを見ると「まかせてくれ」というような表情をしています。

 頼もしい(かぎ)りです。


「まず、彼らの親に暗殺未遂(みすい)の事を連絡します」

「ふむ、それで我が家に不埒者(ふらちもの)をおびき()せるわけですな」


 流石エドワードです。

 こちらの意図(いと)を瞬時に代弁(だいべん)してくれましたね。


「はい、その通りです。その間に私は再度ルドルフ陛下にお会いし、我が家に来た彼らの親を逮捕出来るように手配していただきます」


「「「再度??? 」」」


 あ、口が(すべ)りました。


「おい、クリスタ……。もしかして……」

「また抜け出したのですか……」


 (みんな)が頭を抱えています。

 仕方がないじゃないですか、流石に生存の報告に行かないといけないでしょうし。


「はぁぁぁ、分かった。その話は後だ。で、どうする? 」


 うぅぅぅ、後が怖いです。


「逮捕状を出してもらい我が家におびき()せられた貴族家を逮捕します。しかしそれだと領地持ちの貴族の場合、領民が困ると思うので代官を出してもらうよう説得します」


 その言葉を聞いてクリスタ以外は全員こう思った。


 ( ( (ルドルフ陛下、ご愁傷様(しゅうしょうさま)。頑張ってください) ) )


 クリスタに(つね)に巻き込まれている身としてはルドルフの胃が心配になるところであった。


 ★


「と、いうことで少しばかし国内が騒がしくなると思うのでよろしくお願いします」


 ここは魔法王国王城玉座の間。

 深夜またもや(しの)び込んだクリスタの提案という名の決定事項を聞いてルドルフは頭が痛かった。


「……止めてもやるのだろう。わかった。代官を用意し、公爵家には国直属の憲兵を向ける」

「ありがとうございます」


 ロドルフには彼女の顔はさぞ悪魔のように見えただろう。


(くだん)の貴族家達の罪状の裏は勿論(もちろん)とれているのだろう? 」

「ええ、抜かりなく」


 どこから出したのか大量の証拠となる紙を出してきた。

 それをパラパラとめくり内容を確認するルドルフ。


「ふー、これは言い逃れが出来んな。ならば逮捕状も出しておこう」

「話が早くて助かります」

「後日屋敷に郵送する。確認してくれ」


 クリスタは「了解しました」といい嵐のように去っていった。


「はぁぁぁ、セシリーもそうだがもう少し三雄に落ち着きはないのだろうか……」


 自身も宰相(さいしょう)を悩ませていることを自覚しないルドルフは早速逮捕状と憲兵の派遣の手続きを始めるのであった。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブックマークへの登録や下段にある★での応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ