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泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
99/100

99『ほどではないが』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


99『ほどではないが』オメガ  






 やっぱり一年生は子どもだ。



 マッジさんが弁当を届けに来て以来、小菊は大人気だ。


 昨日は学校帰り、暇な生徒たちに追いかけられていた。


 小菊はパート帰りのお袋と出くわし、助けを求めたら、今度は「キャー、小菊と雄一を生んだ奇跡の母よ!」と、お袋が追いかけられるハメになった。


「あーおもしろかった!」


 お袋は、娘と一緒にご町内の裏や表を逃げ回り、四十数年ぶりの鬼ごっこに息を弾ませて帰って来た。

 

 俺は遠巻きに視線は感じるが、パパラッチ化した生徒に追いかけ回されることはなかった。



「三年生が落ち着いているというよりも、お前には、もう一つ華がないんだろうなあ」



 いつもの学食で、スペメン(全部載せラーメン)を啜りながらノリスケが言う。


 増田さんは(小菊ほどではないが)集まる視線に怯えて別の席で食ってる。


「華なんかいらねーよ、俺は普通がいいんだ」


「確かに小菊ちゃんは、押し出しのある可愛さで、クラスじゃ担任の先生も頼りにするしっかり者、その上売り出し中のラノベ作家だ」


「なんか、その言い回しは、俺には取り柄が無いと言っているように聞こえるんだけど」


「だって、普通がいいんだろ?」


「そうだけど、おまえの言い回しは微妙に違う」


「アハハ、それは俺の友情だ!」


「食いながら笑うな! ほら、チャーシューのカケラが飛ぶじゃねーか!」


「あ、すまんすまん」


 ノリスケは身を乗り出したと思うと、俺のほっぺたに飛んだチャ-シューのカケラを舐めとった。


 キャーーー!


 隣のテーブルの陰に隠れていたパパラッチ女子が悲鳴を上げて逃げていく。


「これで、オメガを追いかけてくる奴はいなくなった」


 いいんだけども、ちょっと寂しくないこともない。離れた席で俯いてしまった増田さんも可哀そうだ。



 学食を出ると、校舎の二階から木田さんが手を振っているのに気付いた。


 目が合うとポケットに覗いたスマホを指さした。


 なるほど、人目を避けスマホでコミニケーションを計りたいらしい。


―― 相談したいことがあるので生徒会室まで来てもらえませんか? ――


―― 了解 ――


 ノリスケと別れて生徒会室を目指した。




 生徒会室には木田さんが一人いるきりだった。




「代議員会やってるから、昼休みは誰も居ないの。外で声かけたら、ちょっと目立つでしょ」


 やっぱり、木田さんが引いてしまうほどには注目を集めているようだ。


 で、気づいた。木田さん、ちょっとやつれてないか?


 いつもの木田さんらしくなく、横っちょの毛が跳ねてアホ毛っぽくなっている。制服の着こなしも、どこか微妙。ブラウスの打ち合わせが右に寄ったりしている。


「寝癖直すヒマなくって……」


 表情を読まれたのか、木田さんはササッと手櫛をかける。櫛とかも持ってない様子だ。


「あの……妻鹿君ちにメイドさんいるわよね?」


「え……?」


 ちょっと身構えてしまう俺だった……。




☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  

百地美子 (シグマ)     高校二年

妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 

妻鹿幸一           祖父

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ

ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母

マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)

増田汐しほ        小菊のクラスメート

ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ

           

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