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泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
78/100

78『その明くる朝』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


78『その明くる朝』小菊 





 好きなものを見ると人間の瞳孔は大きく開く、特に女子はね。



 赤ちゃんとか、恋人とか、大好きなスィーツとか見たら、女の子の瞳は、もうマンホールの穴かってくらいに開く。


「わー、すごいです! スゴイです! 凄いです!」


 いろんなニュアンスでSUGOIDESUを連発している増田さんが、まさにそうだ。


 遠くからしか見たことないけど、ノリスケを見る時もこういう目をしてるんだろうなあと思う。


 ついこないだまでは、引きこもり寸前だった地味子の増田さんの両眼は緩みっぱなし。


「で、この太一というお兄さんは実在するんですか!?」


「え、あ……まあね」

 

 覚悟はしていたけど、あの腐れ童貞が実の兄貴だと言うことを認めなくてはならない。


 同じ神楽坂高校に通っていても、腐れ童貞は特徴のヘラヘラ顔からω(オメガ)で通っていて、本名の妻鹿で呼ばれることはほとんどない。


 もし聞かれたら――遠い親類――で通そうと思っていた。でも、そんな心配はいらなくって、いまだに真実を知っているのは学校では、ほんの僅か。


 今朝、増田さんは最初の信号の所で待ち伏せしていた。


「学校では、あんまりキャーキャー言えませんからね(^_^;)」


 それで、校門を潜るまで、瞳孔開きっぱなしのキラキラまなこであたしを眩しがってくれている。



 増田さんがこれなんだから、学校に行ったらさぞかしと覚悟はしていた。


 ……でも、意外に平穏。



 なぜか昇降口の所に担任の田中先生が居て「新人賞おめでとう」と小さな声で言ってくれただけ。


 教室に入るといつも通り、月曜日特有の倦怠感。


 中には週末に試合を控えた運動部とかで、やる気満々という人も居るんだけど、そういうポジティブな空気は、なるべく出さないようにしているところがある。増田さんが「学校じゃキャーキャー言えませんから」と言った、あの空気。


 何人かは、突破新人賞を知っている人が居て、瞳がオッキクなっている子がいる。


 でも、キャーキャーとはならない。日本人特有の『そっとしてあげよう』感。


 騒がれるのは苦手だから、ま、ありがたい空気。



「なあ、オメガが兄貴だって言っちゃだめか?」


 渡り廊下で会ったノリスケが聞いてくる。


「だめ! 自然に知れるのはともかく、バラされるのは絶対だめだからね!」


「いや、一般ピープルにじゃなくて、増田さんにさ。彼女、授賞式のトーク聞いててさ、がぜん腐れ童貞クンに興味を持っちまってさ」


「んーーーーやっぱだめ。まだ作品は発表されてないんだしさ、最低、やっぱ読んでからだよ」


「そっか、じゃ」


 そう言ってやり過ごしてから、再び声を掛けてきた。


「まだ用?」


「あんまりひどく書いてないよな?」


 親友だからの心配なんだろうけど、カチンと来た。


 でも、少し瞳孔が大きくなっていたので「出たら読んで」とだけ言って許してやった。



 放課後、昇降口で下足に履き替えようとしたら、柱の陰から声を掛けられた。



「突破新人賞おめでとう、妻鹿小菊さん」


 え(# ゜Д゜#)!?


 校内で初めての正面切ってのおめでとうだったので、正直びっくりした。


「わたし二年二組の和田友子、うちの学校から突破新人賞が出るなんてすごい。それに、こんなに可愛い一年生なんだもの、ほんとにすごいわ」


「あ、ども、あ、ありがとうございます」


 二年生なので、いちおう敬語でお礼を言う。


「ね、わたしとあなたで、学校にラノベ部つくらない?」

 

 にこやかに言う和田さんだけども、瞳孔は開いていない……どころかめちゃくちゃ小さくなってたんですけど(;'∀')。

 



☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  

百地美子 (シグマ)     高校二年

妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 

妻鹿幸一           祖父

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ

ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)

増田汐しほ        小菊のクラスメート


 

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