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泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
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74『盗撮すんじゃないわよ!』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


74『盗撮すんじゃないわよ!』小菊 






 喋る前には空気を吸わなきゃならない。


 あたしは、一瞬遅れてしまった。


「先輩と食べてくる!」


「ア、アハハ……(#^▽^#)」


 フライングした増田さんの一言にはくすぐったい笑顔で返すしかなかった。


 今日の3・4時間目は初の調理実習で、クラスは緊張と期待でソワソワしている。


 なんせ、高校に入って初めての調理実習で、こういうイレギュラーな実習の時は、普段の成績や様子からでは推し量れない結果が出るものなんだよ。


 中学の時も、クラスでイジメラレ傾向にあったS君が仕込みの段階から美味しそうな匂いをさせてカレーを作った。玉ねぎのみじん切りも料理番組の先生みたいだったし。そのために女子たちから「S君の女子力すごいよ!」ということで俄然注目され、あっという間に人気者になってしまったことがある。


 高校にもなると、そこそこお料理の出来る子は結構いる。


 だから、S君のようにクラスのスターダムに昇るとこまではいかないけど、増田さんの中では会心の出来であった。


 おそらく、味見するまでは「先輩と食べてくる!」ということは考えていなかった。


 瞬間的に閃いたことなので、破壊力は抜群。


 あらかじめ考えていたら、引っ込み思案の増田さんは「先輩と食べてくる!」にはならない。


 入学二日目から、お昼はあたしといっしょ。その習慣を壊す勇気は増田さんには無い。



 で、先輩というのは、言うまでもなくノリスケよ!



 作品のちらしずしをタッパに詰めて教室に戻る道すがら、ひょっとしてと渡り廊下から目線を下ろしたところに二人は居た。


 中庭の藤棚の下、仲良くベンチに腰掛けて食べているよ~(n*´ω`*n)。


 ノリスケは誰に対しても垣根のないやつで、あのフレンドリーさに偽りはない。


 増田さんも、あたしには見せたことのない自然な親しさで接している。


 う~ん、でも微かな媚を感じるのは、あたしのヒガミ?


 いや、相手がノリスケでヒガムわけないんだけど、なんだろね、この感じ?


 月曜にこっそり教えてくれたけど、連休の後半は神社の風信子さんたちと一緒に奥多摩に行ってきたんだ。


 ま、うちの腐れ童貞とかシグマとかいっしょだったから、そうそう飛躍することってないと思うんだけど……。


 あたしはスマホを出して藤棚の二人を撮ることにした。


 カシャ! カシャカシャカシャ!


 シャッター音に驚いて柱を挟んだ隣を見る。


「な、なにやってんのよ!」


 なんと、あたしより先に腐れ童貞が二人の様子を連写しているじゃないの( ゜д゜ )。


「い、いつから、そこに居やがるんだ(;'∀')!?」


 質問には答えないで糾弾してきやがった。


「盗撮すんじゃないわよ!」


「なにが盗撮だ、お前だってスマホ構えて撮る気マンマンじゃねーか!」


「あたしとあんたとじゃ撮る意味が違うのよ!!」


「声デカ……」


「ウ……」


 兄妹仲良くしたくもないのに、柱の陰に密着して身を隠した。


「ノリスケに頼まれたんだよ、もっと増田さんを自由にしてやるためにな」


 え、なにそれ……?





☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  

百地美子 (シグマ)     高校二年

妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 

妻鹿幸一           祖父

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ

ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)

増田汐しほ        小菊のクラスメート


 

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