表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
60/100

60『臨時の避難訓練!』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


60『臨時の避難訓練!』オメガ 





 臨時の避難訓練を行いまーす!


 ヨッチャンの声が教室に響いた。


 いつもノホホン顔のわが担任はメチャクチャに緊張している。


「かの国のミサイルが飛んでくる可能性、今日がいちばん高いのです! ミサイル攻撃に対しては、通常の避難訓練では対応できないのです!」


 クラスのみんなもテレビやネットの情報で、かの国が軍創設記念日で、核実験やミサイル攻撃をやる可能性が高いことを知っている。いつになく真剣な眼差しで、ヨッチャンの指示に耳を傾けている。


 実のところ、ヨッチャンは感動しているんだ。


 教師になって四年、担任になって三年、ヨッチャンは、こんな真剣に話を聞いてもらったことはないのだろう。


 教卓に両手をついて、身を乗り出すようにして説明をしている。だれかに似ているなあと思ったら、世界史で習ったレーニンだ。十月革命だったかで、演壇に手をついて拳を振り上げて演説してるレーニンの雰囲気だ。そういや野党の女性議員にもこんな感じのがいたなあ。


 教卓の前には副委員長の木田さん。


 木田さんは俺やノリスケと同じく二年のクラスからの持ち上がり、気のいいお嬢さんなんだけど、頼まれた仕事をよく忘れる。


 そのたんびにお鉢が回ってきて、俺が代理で使われる。


 根は真面目な木田さんなので、気にはしている。


 だけど気にしているのは担任のヨッチャンに対してであり、代わりにかり出される俺に対してではない。

 

「みんないい!? 緊急放送がかかったら机の下に隠れるのよ! いつもみたいにグラウンドには逃げないの! 外に出ちゃ危ないから、頭を抱えて机の下に隠れるの! いいわね!」

 

 ヨッチャンの唾が飛んでくるんだろう、後ろから見ていても木田さんは嫌そうだ。


 でも、ヨッチャンに引け目が有るので我慢してるんだ。悪いけど、ちょっと面白い(^_^;)。


「じゃ、一回やってみるね! ハイ! 机の下に隠れて!」


 ゴソゴソと音がして、クラスのみんなが机の下に潜り込む。学校と名の付くものに入って十二年目だけど、みんなで机の下に潜り込むのは初めてで、新鮮というか、壮観だ。


 痛い!


 木田さんの声がした。


「先生、机の下にネジが飛び出ていて頭に引っかかるんですが……」


 都立高校の生徒机というのは昭和の時代から引き継がれてきたもので、相当にガタがきている。


「困ったわね……そうだオメガ君の前が空いてるから、臨時に、そっち行ってくれる?」


「はい、分かりました」


 従順な木田さんは、直ぐに立ち上がって俺の前の席にやってきた。


 待つこと三分。


――緊急連絡! 緊急連絡! ○○のミサイルが間もなく東京都内に着弾します! みなさん所定の避難行動をとってください!――


 みんな一斉に机の下に潜り込む。


 で、ドキッとした(# ゜Д゜#)。


 目の前十センチほどの所に木田さんのお尻がある。


 むろんお尻と言っても、見えるのはスカートなんだけど、スカート越しとは言え、こんな間近に女の子のお尻がくるのは、保育所時代以来だ。保育所の頃はかくれんぼとか馬跳びとかやっていて風信子とかのお尻を間近にしたことはあるけど、あれはほんのガキンチョだ。


 木田さんのそれは違う、現役女子高生のリアルお尻だ。


 サブカル研のエロゲでは、こういうのは日常茶飯なんだけど、あくまで二次元の映像だ。リアルの破壊力は核ミサイル並だ……。


 ゲーム用語ではラッキースケベとか言うんだが、リアルでは拷問に等しい。


 視線を落とすが、視野の上端には、どうしてもプリーツスカートがチラチラしてしまう。


 あろうことか、そのプリーツスカートがずり上がり、スカートの中身が眼前に迫った!


 一瞬パニクったが、すぐに状況が理解できた。


 なぜか木田さんは気絶して、頭を抱えたまま前のめりに倒れてしまったのだ!


 少し姿勢をずらして、さらに分かった。


 倒れた木田さんの頭からは一筋の血が流れだして、床に溜まり始めているのだ!


「先生、木田さんが!」


 俺の声に、すぐにヨッチャンは駆けつけたが、こういう状況には慣れていないので「木田さん! 木田さん!」と呼びかけるだけで、何もできない。


「保健室に運びます!」


 そう言うと、俺は木田さんを抱えて保健室に向かったのだった。


 この状況は、今月に入って二回目だぞ(-_-;)。




☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  

百地美子 (シグマ)     高校二年

妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ

ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)

増田汐しほ        小菊のクラスメート




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ