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泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
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52『兄妹ってバラシたら殺す!』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


52『兄妹ってバラシたら殺す!』オメガ 





 俺と小菊がラブホに行ったという噂が流れている。


 行きと帰りは服を替えたみたいで、二人とも大き目の紙袋をぶら下げていた。


 噂というのは間接的に聞こえてくるものなので根絶が難しい。


 それに、二人でラブホに行って、紙袋をぶら下げて出てきたというのは事実なんだからな!


 昨日の花見で、寿屋さんに幔幕を借りに行ったのは知ってるよな? 大きな紙袋というのは、借りた幔幕が入っていたんだ。


 寿屋さんは、うち同様に置屋をやっていたんだけど、昭和三十年ごろに廃業してラブホに転身したんだ。


 元々が花街で何代も商売をしてきているので、店の雰囲気はとってもいい。


 ケバケバしさが無くって、一見料理屋さんのような落ち着いた雰囲気がある。


 それに、俺と小菊にとってはご近所の寿屋さんだ。子供のころから出入りしていて抵抗はまるで無い。


 でも、地元の歌舞伎町以外から通っている学校関係者には、そうではない。このあたりじゃ珍しい駅裏のラブホにすぎない。


「ほっときゃいいじゃない、噂なんだから」


「おもしれーから、ほっとけよ」


 風信子もノリスケも、盛大にケラケラ笑ったあと、放っておけという。


―― 俺たちが兄妹だってことが分かれば簡単なんじゃないのか ――

―― 兄妹ってバラシタら殺す! ――


 メールでのやり取りは、この二言で終了した。


 噂の出所は、菊乃のクラスメートの増田という子と、わが担任のヨッチャンのようだ。


 ヨッチャンは、俺たちが兄妹だっていうことは知っている。でも、職員室とかで喋っちゃったのを聞いた生徒が誤解したようだ。


 いつものことだけど、先生たちの情報管理は、つまらないところでこだわって、肝心のところでダダ漏れだ。


「笑っちゃいますよね、小菊ちゃんとは兄妹ですのにね……」


 エロゲがインストールされる間に、ついでのようにシグマが言う。


「あー、そうだよ。兄妹だってことを言えば済む話なんだけどな、小菊のやつ……」


 作法教室でエロゲを立ち上げているのは、やっぱ違和感なんだけど、畳の落ち着いた雰囲気には馴染んじゃうだろうなあと思う。


 やがてインストールの終わった画面を見ると、こんなタイトルが現れていた。


『兄妹だって愛さえあれば(*゜▽゜*)♡』


 後ろで、ノリスケと風信子が腹を抱えて笑い出した。


 あーあ、もう勝手に笑ってやがれ、なあ……あ?


 どうしてシグマは笑わないんだ……?




☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  

百地美子 (シグマ)     高校二年

妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ

ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)

増田さん           小菊のクラスメート

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