表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
47/100

47『ため息が漏れる』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


47『ため息が漏れる』シグマ 





 ついてない……今年も担任は堂本先生だ。


 先輩も昨年度と同じヨッチャン先生で、うっかりヨッチャンのために小間使いに使われているらしい。


 うちの学校は、もうちょっと考えた方がいいと思う。




 で、あたしは考えた。




 サブカル研究会の部員を増やしたい。いや増やす!


 部員は、今のところ、あたしとオメガ先輩とノリスケ先輩。


 二人の先輩に不足はないんだけど、三人だと部室がもらえない。


 べつに正規の部活にならなくてもいいんだけど、部室は絶対に必要だ。


 同好会だと、放課後の教室とか空き部屋とかを、その都度探さなきゃならない。


 サブカル研究会ってのはエロゲ専門の部活だから、そんな空き部屋とかでやるわけにはいかないよ。




「でも、どうやって勧誘とかするんだよ」


 ピロティーの下に机を持ち出し『サブカル研究会 部員募集中だよ!』って紙を貼りつけてるんだけどね。


「エロゲやりたい人ぉぉぉぉぉーーーーー!」と叫ぶわけにもいかない。


「いい男が二人いても、なにか呼び込みとかしなくちゃ誰も寄りつかないんじゃね……あ、シグマに言わせるわけにはいかないってことで、かわいい女の子が居ないって意味じゃ……」


「いいんです、あたしが正面に出ても逆効果だし……」


 ノリスケ先輩の言葉に素直に反応するけど、なんだか自虐的に響いてしまう。


「場所が悪かったかな……」


 オメガ先輩がさり気にフォローしてくれる。


「でも、ここが一番人通りが多いですから」



 三人の会話は微妙に噛みあわない。



 分かってるんだ、黙っていたら雰囲気悪いから喋ってるだけ。でも、収穫がないもんだから、ついネガティブになってしまう。


「アニメとかゲームとかで押し出してみたらどうかなあ」


「うーーーん、それだと入ってもらってから『じつは……』って説明しなきゃならないでしょ、そこでドン引きされても困るわけで……」


 あたしは以心伝心で、ある程度はいけると思っていたんだ。


 どんなことやるんですか? そう聞かれたら『君の名を』とか『君といた季節』とかのタイトルを言う。同好の士なら、それだけで分かる。は? てな顔をされたらそこでおしまい。とにかく、あと二人入れて部室をゲットできればそれでいい。


 むろん、最初からガチガチのZ指定のをやるつもりもない。最初はコンシューマー版。PSとかでやれる、そういうシーンはカットされてるやつ。それもラブコメ風とか萌え系。『ニャンパラ』とか『ほれきす』とか平気でアニメにもなってるやつ。そういうライトユーザーやライトユーザーを装ってる人もけっこう多い。やってるうちに「これって、パソコンでやれるのもあるよね?」「その方も隠れキリシタンか!?」ってことになって、いよいよ最前線に突入ってことになる。そういう展開を狙ってる。


 さっき、ノリスケ先輩が言った通りなんだけど、できたら――おぬし、分かっておるな――的なの。ノリスケ先輩もオメガ先輩も、程度の差はあるけど、そういうタイプだったしね。


 もし、ほんとうにコンシューマーで停まってる子なら、それはそれでいい。ふつうの部活ではプレステ4とかで大人しくコンシューマー。ときどきガチの部員だけで、神域の話ができたらいいしね。


 考えると、ノリスケ案に近くなって……やっぱ、間違ってたかな……でも……こだわりと妥協のループに陥ってしまう。


 ウオーーーー!  キャーーーー!


 ときどき周りで歓声があがる。


 ピロティーには他の部活もきているわけで、新入生を獲得できると、その都度部員たちが雄たけびを上げているんだ。


 野球部なんか胴上げなんかやったりしている。吹部なんか女子が多いので、たまに男子が入ると女子の可愛いのがハグなんかしてる。


 水泳部の女子は水着の上にジャージの上をひっかけただけのや、下にパレオ代わりにタオルを巻きつけただけとか、サブカル研究会よりも過激だ。



 四時半をまわると、さすがにピロティーも閑散としてくる。



 めぼしい一年生は、あらかた釣り上げられてしまったみたい。


 このあとは、見学とか体験入部で来る子を狙うことになるんだけど、部室が無いサブカル研究会はジエンドを意味する。


 ハーーーーーーーー(⑉·̆⌓·̆⑉)


 さすがのあたしもため息が漏れる。


 トントン 


 先輩が、やさしく頭を叩いてくれる。いまのあたしは盛大なΣ顔になっているはずなのに、さりげない優しさにウルっとなりかける。


 ね、茶道部に入らない?


 声を掛けられて顔を上げる。


 そこには夕陽を後光のように背負った風信子先輩が、ホワホワと微笑みながら立っていた。





☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  

百地美子 (シグマ)     高校二年

妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校三年 幼なじみの神社の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ

ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)

増田さん           小菊のクラスメート

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ