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泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
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37『だって今日はエイプリルフールだ』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


37『だって今日はエイプリルフールだ』シグマ 




 今日、初めて見たのなら信じなかっただろう。


 だって今日はエイプリルフールだ。


 神社のお祭りに、あんなものを使うなんて、まるでテレビのドッキリだもんね。


 いや、テレビでも放送コードにひっかかる。


 アレは、ボカシをかけるとかモザイクにするとかしないと放送どころか人前に出せる代物じゃない。


 アレは三メートル近くあったけど、実物はどのくらいの大きさなんだろうか。


 小さいころに、お風呂でお父さんのを見たけど、状態が違うので比較材料にはならない。


 先輩に頼むわけにもいかないし……て、なに考えてんだあたしは(-_-;)。


 でも、神社での体験は希望だ。


 勢いだけで発車したサブカルチャー研究会だけど、心のどこかでは早まったと感じていたんだ。


 女子のくせにエロゲなんかに興味を持って、やりこんでいるのはヒンシュクと言うか後ろ指というか。


 むろん、生まれ持ったΣ顔とこの性格だから、そうそう人に好かれることはないと思ってる。


 でも、醜いアヒルの子みたいにスポイルされるのは勘弁だ。あたしが耐えられるのは堂本先生の偏見までだ。




 でも、風信子さんを見て勇気づけられた!




 巫女服姿でアレにしめ縄を掛けるところなんて清々しさまで感じてしまった。なんというかカッコいい。


 サブカル研で勧誘ビラ撒く時なんか巫女服姿のコスプレがいいと思うよね。エロゲの中でも巫女服姿というのは鉄板だもんね。


 要は、いかに偏見を持たれないように活動していくかってことなんだよ。


 ……四月一日で検索してみる。


 なんと、四月一日という苗字がある。ワタヌキって読むらしい。四月に綿の収穫を始めたことが由来らしい。


 読めないよね。


 あたしの苗字は百地だ。小さいころは同姓のアイドルにちなんでモモチとかモッチとか呼ばれていた。


 いつのまにかシグマになってしまった、馴染んでいるからいいんだけどね。


 四月一日生まれは早生まれだそうだ。


 つまり、学年は同年の三月以前の生まれといっしょになる。なんでだろう?


 あの戦争で米軍が沖縄上陸したのが四月一日。狙ったとしたらブラックジョークだ。


 ピピピピ ピピピピ


 スクロールしているとスマホが鳴った。



 シグナルはお祖母ちゃん。



 お祖母ちゃんは要注意。年に一回くらいの割りで手の込んだドッキリをしかけてくる。


 こないだはお祖父ちゃんの幽霊が出たというスカイプだった。


 なんとお祖母ちゃんの隣に幽霊の(半透明だった)お祖父ちゃんが映りこんで「大きくなったね」とか「女の子らしくなった」とか話しかけてくる。


 そのうち「あんた喋り過ぎ」とかお祖母ちゃんに言われてケンカを始める。


 あたしはパソコンの画面に向かってケンカの仲裁。


 そのうち、画面の外側でドシンバタンと音がしたと思ったら、急に静かになる。


 あんまし静かになったので「ね、ね、どうしたのよ……」おずおず聞くと、お祖父ちゃんが現れた。


「ミコ、なんだかお祖母ちゃん動かなくなっちまったよ」

「え、ええーー!?」


 救急車を呼んで! 人工呼吸をして! とか、あたしはわめき散らした。


「幽霊は電話をかけられないんだよ」とか「幽霊には肺がないから人工呼吸もできないよ」とか言ってくる。


 ワタワタしていると、お祖母ちゃんが画面に復活、それも半透明の幽霊姿。


「お、お祖母ちゃん!」

 

 けっきょくは、コンピューターに長けたお祖母ちゃんの友だちが、お祖母ちゃんのアイデアを面白がって仕掛けてきたドッキリだった。


 ほんとはた迷惑な婆さんだ! 


 あたしは眉に唾を付けながら電話に出た。


『ミコ、今から言う人たちを掴まえて、すぐにハワイに来てちょうだい!』


 とんでもないことを言い出した!




☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校二年  

百地美子 (シグマ)     高校一年

妻鹿小菊           中三 オメガの妹 

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校二年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校二年 幼なじみの神社の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任


  

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