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泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
34/100

34『本番が見てみたい……』

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)


34『本番が見てみたい……』 




 開いた口が塞がらなかった。


 そして目のやり場に困った。

 シグマは、こういうものには慣れているはずなのに、真っ赤になっている。


 お祓いの神事が終わったそれは圧倒的な存在感だ。


 三メートルほどのそれは、荷台の長さには収まらず、先端の部分が運転席の屋根に掛けられて隆々と首をもたげている。


 稲わらで出来たそれは、根元から3/4ほどは神社の名前が黒々と書かれた白布で覆われて、いかにも祭りのモニュメントって感じだけど、そのフォルムがケシカラン、実にケシカラン!


 神社の鳥居の前には交番があって、もちろんお巡りさんも居るんだけど、そのお巡りさんも鳥居前まで出てきて感心したように眺めている。


 だめだろー! これって完全に法律に触れるぞ!


「えと、えと、あれってあんな形してるものなんですか?」


 オズオズとシグマが聞く。


「エロゲやってて、その……知らんのか?」

「し、知りません!」


「そりゃそうだ、ゲームでは大抵モザイクかボカシだもんな」


 ノリスケが平板な声で言う。こいつが本気で感動したときにはこうなる。


「車から降ろしますよ」


 そろいの法被を着た役員さんたちが荷台に上がってソロリソロリと持ち上げた。


 大きさの割には軽くできているらしく、年寄りばかりの役員さんたちは「セイヤッサ、セイヤッサ」と元気な掛け声で、地上の役員さんたちにリレーしていく。


「あれ、オメガんちのじいちゃんじゃん」


 リレーのお終いに控えているのは、うちの祖父ちゃんだ。


 祖父ちゃんはパブのマスターをやっていたぐらいで、どっちかっていうとハイカラな年寄りなんだけど、法被でねじり鉢巻きの姿は和風で、どこか若やいでる。


 やがて、その祖父ちゃんのところまで周ってくると、六人の役員さんがシッカと担いだ。

 そいで、巫女姿の風信子ふじこが静々と、その先端に紅白の紐の付いたしめ縄を掛ける。

 介添えの役員さんが居るとは言え、それは戦艦大和の主砲ほどの直径がある。


「あ、なんか恥ずかしい(#'∀'#)……」


 言葉を、そこで止めたのは、シグマも普通の女子高生だということだろう。

 

 エロゲ慣れしたシグマでさえこうなのに、巫女の風信子はどうだ!


 エイっとばかりにしめ縄を回した時にバランスを崩し、なんと、その先端部分に顔を押し付けてしまったではないか。


「あ、電機屋のオヤジ!」


 介添えをやっていた電機屋のオヤジが横から風信子を支えた。


 支えたのはいいが、その左手は風信子の胸を掴んでいるじゃねえか!


 ク、羨ましい! じゃなくて、反則だろーが!


 何事も無かったように居住まいを正すと、風信子はしめ縄を付け終った。


 役員さんたちに担がれたソレは、境内を一周して拝殿の中に収まろうとしている。


「あれの先っぽって、ガラガラの鈴に似てますね……」


 シグマは静かに感動して、俺とノリスケは、もう突っ立てるだけだ。



 帰り道、シグマは感動の熱が残った声で、こう言った。


「本番が見てみたい……」


 本番て、祭りのことか……それとも……。





☆彡 主な登場人物


妻鹿雄一 (オメガ)     高校二年  

百地美子 (シグマ)     高校一年

妻鹿小菊           中三 オメガの妹 

妻鹿由紀夫          父

鈴木典亮 (ノリスケ)    高校二年 雄一の数少ない友だち

風信子            高校二年 幼なじみの神社の娘

柊木小松ひいらぎこまつ  大学生 オメガの一歳上の従姉

ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

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