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 数日後、レックスが兵士を伴ってやってきた。

 兵士が鍵を開け、二人が俺を縄で縛る。


「ゴーシュたちから処刑の話を聞いたと思うけど、それ、今日だから」

「そうか」

「…………」


 妙に物分かりがいいのが不気味だったのか、レックスは一瞬眉をひそめた。


「声が、聞こえる」


 うっすらとだが、ずっと聞こえている。

 ゴーシュとハルが帰ってから。

 ずっとだ。

 どこかで聞いたような声が、ずっと俺の耳元で何かを囁いていた。


「……はぁ。ついに頭がおかしくなってしまったのか。大丈夫だ、アレン。すぐにこの苦しみからも解放される」


 俺は会話すら億劫だった。

 だが、心の奥底で燻っていた青い炎が、次第に大きくなっていく。


 この勇者の殺し方を考える。

 そうすると、また耳元で何かが聞こえた。






 公開処刑らしい。

 外に連れ出され、強すぎる日光に目を細め、歩かされる。


 集まった民衆は、罵倒の言葉を叫んでいた。


 用意された断頭台が見える。

 その下には、勇者パーティのメンバーがクソ真面目な表情をぶら下げていた。

 見届け人のつもりらしい。


「絶対に許さない」


 メンバーの前を通ったとき、ぼそっと俺はつぶやいた


「別に構わない。どうせおまえはすぐ鳥と野犬の餌だ」とゴーシュが薄ら笑いをする。


「その首、ここでへし折ってもいいんだぜ?」と竜人の女、アイリーンが歩く俺を足で小突いた。


「アンタがどう思おうがどうだっていいのよ」とエルフのハルがつまらなさそうに言う。


「わたくしたちも、同じくらい貴方のことが許せませんし、嫌いなのですよ」と言う妖精族の神官、スピカは笑顔だった。


「おまえさんは、ワシらに武具を遺した。それだけは褒めてやろう」と魔導士で小人族のマナドゥが皮肉そうな笑みをこぼす。


「殺す。そして、俺の武具を返してもらう」


 ドッと笑いが起きた。

 今から死ぬのにどうやって? やってみるならやってみなさいよ。と言われるが、何があってもこの六人は必ず殺す。俺はそう誓った。


 階段をのぼると、大勢の民衆が集まっていることがよくわかる。

 あそこに首を固定するんだろう。

 何人もの血で、断頭台の木枠が黒ずんでいる。


 俺は押さえつけられながら、木枠に首を固定させられた。


 レックスが民衆に向かって口上を述べる。

 自分たちにとって都合のいいことを語り、いかに俺が卑劣で愚かな強姦魔かを説明していった。


「アレン。じゃあな」


 刃を固定しているロープをレックスが俺の神剣で切った。


 静かに風を切る刃の音が聞こえてくる。


「俺の悲哀も不安も絶望も恐怖も孤独も全部全部全部おまえたちに返す! いつか必ずな――――ッ」


 絶対に殺す。


 ダンッ、と音がどこかから聞こえる。

 大音は立たないんだな、と俺は他人事のように思った。





 アレン・ジェーガス。

 強姦暴行を繰り返した罪、加えてそれが与えられた栄誉への背信行為であるとし、王都中央広場にて処刑。


 功績の一切は表で語られることはなく、片田舎出身の鍛冶職人は、二八歳の生涯を汚名とともに閉じた。



 はずだった。



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