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私と拝謁について。

 あー、そーいやこんな顔してたっけなぁ……

 拝謁はほぼほぼ逃げまくってたし、この世界、写真もない。

 王宮に上がっての妃教育でも、直接会う機会はほとんどなかった。

 入学式と卒業式。

 そのくらいだ。そんでもって、卒業式は、両陛下が臨席される式の前に私は断罪されて式場から連れ出されてる。

 だから入学式くらいしか、見る機会がなかったんだよな……。

 しかし、見事な美男美女だな。

 お母様は若干目付きがキツいけど、妃殿下は正統派美人だ。

 陛下は殿下によく似てる。

 拝謁は滞りなく済んだ。……まぁもしかしたら、私の頭じゃ理解できないだけで、何某かやらかしてるかもしれないけど。

 とりあえず先生と殿下じゃやっぱちょっと勝手が違うけど、エスコートも無事にされることができたし、マナー講師に満点をいただいた挨拶も自分比でちゃんとできた。

 あとは終始かしこまった笑顔で、当たり障りないと思われる応答ができたと思う。



 次はダンスだ。

 先生とのちょっと不思議な特訓のおかげで、無事私は擽ったがりを克服できた。

 殿下とのダンスの練習でも、耐えられないほどではなかった。それに殿下に対しては擽ったいとはちょっと違った。純粋に嫌なだけだ。別に殿下自身が悪い訳じゃない。こういう喋り方の子供が嫌いなだけで。

 でもまぁ、今日の殿下はまともな喋り方でだいぶありがたい。


 ――触るのは殿下。肩甲骨、腕の下。丹田。手。

 他には触れない。約束したから大丈夫だ。殿下は子供だけどまともな人間だ。あんな屑どもとは違う、ちゃんとした人。だから大丈夫。

 動け表情筋。愛想笑いは標準装備。

 殿下は少し緊張してるのか、顔が固い。まぁそうか。両陛下の前ってだけじゃなく、殿下の憧れのお母様が見てるわけだ。

 この世界じゃ幸い、私にプレッシャーをかける人間はいない。気負わなければ失敗しない。

 殿下が憧れの人の前でいいカッコできるように、私も頑張らないと。

 ってああダメだこれ、失敗するパターンだ。

 失敗しても構わない、旅の恥はかき捨て! 旅じゃないけど! どうせ卒業パーティーまでは、何やったって殺されないんだから大丈夫! ってくらいの気構えで行こう。

「……大丈夫だ。もし失敗しても、カバーしてみせる」

 ――おやまぁ。

 乙前じゃ、そういやろくにダンスなんかしてなかったな。小さい頃は私が毎回すっぽかして、学園に上がってからは、殿下はヒロインと踊ってた。

 ……いつも他人の失敗を押し付けられてた身としては、驚きすぎて。

「……御御足を踏んだら申し訳ありません」

「平気だ」

「……間違えて逆方向に回るかも」

「どちらに回ろうがホールドの姿勢に戻れば問題ない」

 いや問題あるだろよ。

「……私が躓く可能性も」

「女の子一人くらい支えられる」

 そういや私まだ子供だったわ。

「……緊張しすぎて振付を忘れることも」

「空っぽでも構わない。任せろ」

 ……空っぽって頭空っぽってことか?

 そういや、小説とかだと良くあるなぁ。ダンス踊れません! っていうヒロインに、大丈夫だ僕に任せてっていう。

 ……そういや、ここ、乙女ゲームっぽいんだった。

 そう思えば、笑えてきてしまった。

 学園入学まで、私が何をやらかしても話の大筋に支障はないはずだ。私が頑張らずとも攻略対象たちは大抵スーパーヒーローで、何やらせたって完璧なはずだ。

 だったら殿下のいうとおり、私が緊張しすぎて頭真っ白になったって、何事もなく日常は続く。

 そう思えたら気が楽になった。

「お任せします」

 笑いながら告げれば、殿下の顔が赤くなった。

 ……怒ってるわけじゃないよな? とすれば、お母様そっくりな顔が笑ったから照れたのだろうか。

 ああ、でもなんか、ちょっとわかったかも。痴情のもつれで殺人を犯す人が多いのだから、殿下の好きな人の顔で、性格最悪な私が浮かべる醜悪な表情ってのはきっと、殿下には許しがたいものがあったんだろう。だからきっと、まともでちゃんとした、義弟の不敬極まりない発言すら笑って許した殿下が、私を殺すんだ。

 ――理不尽と思う気持ちもちょっとはあるが、弟が許されることを私は許されないなんて、何度も経験してきたことだ。可愛さ余って憎さ百倍なんて言葉もあるし、まともに恋愛をしたことのない私には理解できなくても、恋愛至上主義の人からしたらそれも筋が通るんだろう。

 ちょっぴり切ない未来と過去に思いを馳せつつ、私は気の抜けた笑顔を浮かべたまま、殿下の手を取った。


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