試験一日目
おはようございます。
カメラ魔道具作りすぎて夢見の悪い俺です。
前世の会社を思い出しました。
やってもやっても終わらない仕事に追われる夢でした。
変な汗をかいて、ソラとハクに顔を舐められて起きました。
俺の気分を映したかのように天気もどんよりしてます。
大きな溜め息を一つ、ソラとハクをこねて癒されて、何とか気分も浮上してきました。
後期は大半が座学なので、ちょいちょい小テストが行われますが、今日から五日間は進級にも関わってくるテストです。
Sクラスの生徒は、普段から予習復習を欠かさない実に真面目な生徒ばかりなので、テストだからと特に焦る様子は無いのですが、食堂とか移動途中の他のクラスの生徒の中には、時々発狂したように叫び出す生徒がいて、ビクッとします。
午前中は筆記試験。
午後は実技試験が主に行われます。
実技試験は、教科が少ないので午前中で終わることもあります。
皆が真剣に試験を受けているので、俺はテイルスミヤ長官に貰った魔法の本を読んで過ごし、午後は体育の実技試験。
ゴリゴリマッチョな体育の先生が見守るなか、武器を使わない組手を見学。
その後に持久走、広い広い学園の敷地内のマラソンコースを半周して終わり。中々にハード!女子生徒も同じメニューって大変そう。
距離はだいたい七キロくらい。終わった人から帰って良いそうです。
こんな時こそ肉体強化が使えると楽なのにねーと溢したら、練習しながら走ってみるそうです。
何故かソラがやる気満々なので、ソラに乗って俺も参加。ハクは俺の頭の上にいます。
スピードはソラにお任せしたら、アールスハインに並走してました。
同じ早さでユーグラムとディーグリーも走ってます。
組手はクラスごとだったけど、持久走は学年ごとなので、助も合流して、塊で走ってます。
助は肉体強化のアドバイスをしながら走ってます。
その内、アールスハインの体から湯気のような物が上がったと思ったらピカッと一瞬光って、グンとスピードが上がりました。
どうやら肉体強化に成功した模様。
助も肉体強化をして、アールスハインを追いかけて行きました。
次に成功したのはディーグリー、そしてユーグラムが成功。
たったか走る皆の顔がにやけています!
ユーグラムは無表情だけど、背景に星が飛んでます!
記録的な早さでゴールした四人に、ゴリゴリマッチョな体育の先生が驚いていますが、普段の真面目さを知っているので、不正は疑われなかった。
早々に終わった午後の試験。
だが、初めて成功した肉体強化をもう少し試したいらしい三人と助は、訓練所の鍵を借りに職員室に行ったら、インテリヤクザなカイル先生に、随分余裕じゃねーの?とからかわれたけど、ディーグリーがドヤ顔で肉体強化に成功したからもう少しならすんだと返すと、凄く驚いて悔しそうだったのに笑った。
訓練所でもう一度肉体強化。
何故か三人は、肉体強化が発動する前に湯気が上がるけど、無事ピカッと光って成功。
「ナハハハハハハハハ」
「「アハハハハハハハハハ」」
「フフ、フフフフフフフフ」
全員が笑っております!
前回は自分もこんなだったのね、とちょっと反省しました。
怖いからね!特に無表情なのに、ずっとフフフフって笑うユーグラムが!めっちゃ怖い!
一緒になって走り回るソラは可愛かったけど!
夕方になるまで走り回って満足した面々は、まだうっすら笑いながら食堂へ。
食堂には、何故かグッタリとしたシェルが先に着いていて、テーブルに突っ伏していた。
「珍しいなシェル、何か有ったか?」
「ああ、失礼しました。先程の持久走で少々疲れまして」
「シェルがあれくらいで疲れるわけねーだろ、何があった?」
助もシェルの疲れように口を出した。
「…………私達のクラスは、少々特殊な組手を行うので、他のクラスよりも時間がかかり、持久走のスタートが遅れたのですが、コースの途中、前を走っていた令嬢が、後ろを振り向いた途端転びまして足を挫いたらしくうずくまってしまったのですが、その令嬢が、例の精霊付きの女生徒でして、だからと言ってほっとく訳にも行かず、信号魔法玉を打ち上げて側に居たのですが、色々聞かれまして、私が答えないでいると、怒り出し、終いには泣き出しまして、到着した教師に事情を話したのですが、中々信じてもらえず、先程まで職員室におりました」
はぁーーーーと長い溜め息を吐くシェルの肩を、アールスハインが叩いてやる。
「それは災難だったね~、でもそれって明らかにシェルを狙って転んでるよね~」
「でしょうね、本当は私達を狙いたかったのかも知れませんが、追い付けなくて後から来たシェルを見つけたから情報を引き出そうとしたのかも知れません」
「振り向いてから転んだらしいからね~、あからさまね~」
「侍従が主の情報をそう易々と話すわけが無いだろうに」
アールスハインの声が呆れている。
「でもこれで、アールスハイン王子が狙われてるのはハッキリしたね~」
「いえ、ユーグラム殿とディーグリー殿の事も聞かれましたので、お二人も狙われているかと」
「うえ~、勘弁して!」
「嫌な事実の確認ですね」
今も視界の端の方からこっちを見てる精霊付きの女生徒に、皆が嫌そうな顔をしている。
自分は狙われて無いので、お気楽な俺と助。
被害は受けたが、狙われてはいないシェル。
普通の、関係の良好な主従ならば、侍従が被害に遭ったと知れば、相手への印象は悪くなる事が分かるだろうに、その辺の考えが及ばないのも、精霊付きの女生徒のポイントの下がる理由。
「それで、疑いは晴れたんだろうな?」
「ええ、ケータ様の作られた監視魔道具が、映像を残してくれていたお陰様で、私が彼女に指一本どころか、最初の声掛け以外特に何も話していない事が確認されました」
「ケータ良くやった!」
「ええ、ケータ様有り難うございました!」
お役にたって何より。
「んー、おんしぇーもちゅけりゅべき?(んー、音声も付けるべき?)」
「可能なのか?」
「たびゅん?」
「それが出来たら、証拠能力が上がっちゃうね~、誰も文句言えなくなる!」
「それを作れそうなのがまた」
呆れ半分て目で見られました。
証拠が有るって大事だと思うよ!
夕飯を食べたら、部屋に戻って早速取り掛かる。
素材は何が良いですかー?
リビングのテーブルの上に、マジックバッグから素材を次々出して行く。
色々有りすぎて分からない。
これはお城で使い道の無い、余ってた物を詰められたのだろうか?笑顔のシェルを見てると、そう思えてなりません。
そして見つけたのは、葉っぱ。
大きさは十センチくらい。
森の中の苔みたいな色。
これも魔物の素材らしい。
サイズ的にも、意外と丈夫な所もピッタリ。
これで試しにやってみよう!
魔法陣には、人声記録、自動送信、自動修復、天気無効を付けてみた。
これをカメラ魔道具にくっ付けられれば、完成なんだけど、
「しぇりゅー、しぇっちゃくじゃいありゅ?(シェル、接着剤ある?)」
「しぇっちゃくじゃい?」
「こりとーこりを、くっちゅけりゅやちゅ(これとこれを、くっつけるやつ)」
「ああ、糊ですね!少々お待ち下さい」
一旦部屋に向かったシェルは、直ぐに戻って来て、緑色の粘液の入った瓶を渡してきた。
「ケータ様、これは強力な糊ですから、手等に付かないように気を付けて下さいね?」
と、細い木の棒もくれた。これで塗れと言うことですね。
葉っぱの下の部分は、元々何かにくっついてたのか、平べったく巾があったのでその部分に糊を塗ってペタッとね。
「かんしぇー!」
試した結果も大丈夫でした!思ったよりも離れた位置の声も拾えるようです。
アールスハインとシェルに褒められて、寝るまでの間に追加で何個か作りました。




