魔道具
誤字報告、感想をありがとうございます!
おはようございます。
この頃は、朝の冷え込みも無く、過ごしやすい天気が続いています。
穏やかな天気、退屈な授業、平和な日常。
月一の調理実習が危険な事くらい。
肉体強化の訓練も、ゆっくりながらも着実に成果を出していて、俺の暇潰しに始めた魔道具いじりも、基本は習得しました。
魔道具に書かれているのは魔法陣と言うもので、判子でも焼き印でも無く、特殊なインクを使って魔法で焼き付けた物でした。
これはテイルスミヤ長官が教えてくれた。
魔法庁には、魔法陣専門に研究している職員がいて、テイルスミヤ長官の紹介で会って話を聞いたら、基礎的な事を書いた手書きの分厚い本を貰った。
その本によれば、魔法陣の書き方には幾つかのパターンがあって、幾つもの円を描いた中に用途を意味する単語を書いた防御系の魔法陣。
円の中に幾つもの三角を書いた攻撃系の魔法陣。
円の中に幾つもの四角を書いた、色んな用途を持たせられる魔法陣。
中には丸や三角四角を同時に使う物とかもあるらしい。
使う文字は古代語と言われるアルファベット。
今使っている言葉をローマ字表記にしたアルファベット。
元クソバカダ女神の影を感じます。
文字を書く順番も決まっていて、上下右左の順番で一文字ずつ書いていかないといけない。
書く文字数は、使う魔法陣の形によって違い、三角なら三文字、四角なら四文字、角の部分に一文字づつしか書けなくて、図形を重ねて書くことも出来るので、文字数が多くなるに従って、魔法陣も複雑になっていく。
魔道具を作るのはとても難しいが、改造は割りと簡単に出来てしまう。
元々の魔法陣に、線と言葉を書き足せば済む。
ただし、魔法陣に込められた魔力を正確に感じとり、その魔力に合わせて書き足さないと失敗してしまう。
そして失敗した魔道具は、呪いになる。
魔法陣の基本的な書き方の本は、庶民でも手に入る値段で販売されているから、字の読めて書ける人なら簡単な魔道具の改造を試してみる人は結構いるらしい。成功するかは別として。
魔法陣に必要なのは特殊なインク、魔石、精密なコントロールの出来る魔法使い。
特殊なインクは、魔力の高い虫魔物を乾燥させ粉にしたのに、油と魔力と綺麗な水を混ぜた物でした。
油と水と虫の粉末を貰いました。
インクを作る時に魔力を流すのは、極力自分でやった方が、後が楽なんだそうです。
油と水と虫の粉末は、同量を容器に入れて魔力を流しながらマゼマゼ。
ねっとりとクリーム状になってビカッと光れば完成。
出来上がったのは、前世の妹が顔に塗ってたみたいなジェル状の半透明の何か。
これがインクで合ってるのか、テイルスミヤ長官に確認したら、完璧です!って驚かれた。
他の人が作ると、その人の得意な属性が魔力に混ざっちゃって、色が着いちゃうんだって。
色着きでも使えるけど、効果は半減しちゃうので、俺が作った透明に近いインクは、希少だそうです。
半分持っていかれたよ!
まぁ、料理用のボウルで作ったからまだまだあるけどね!
特殊なインクを用意出来たので、後は魔石。
魔石は、去年の演習の時に大量に狩った魔物を、ギルドで解体してくれた後に、どうしますか?って聞かれたので、何となく全部を買い取りに出さずに、持っていた物が結構ある。
魔石を使う前に、洗面器型に作ったバリアの中に、聖魔法を満たして魔石を沈め浄化。
魔石って、魔物の心臓か脳の中にあるって言うしね。血生臭かったりしたら嫌です!
浄化して綺麗になった魔石と、特殊なインクを用意して…………………そこで俺は致命的なミスに気付いた。
何に何の魔法陣を刻むかをまるで考えてなかった!
さて、どうしよう?
何の魔道具を作ろうかウンウン悩んでいたら、休み時間になっていたのか、前の席のディーグリーが、
「ど~したのケータ様?珍しく悩んでんね~?」
「むー、にゃんのまーどーぎゅちゅくりゅかにゃやんでりゅー(んー、何の魔道具作るか悩んでる)」
「凄い高度な悩みですね!」
「こーどー?(高度?)」
「魔道具制作は、高等学園の後に大学園に行かないと学べないんだよ~?」
「しょーにゃのー?ほんもりゃったから、よんだりゃでちそうよー?(そーなのー?本貰ったから、読んだら出来そうよ?)」
「う~ん、そんな簡単な物じゃ無いはずなんだけど~?」
「魔道具制作は、基礎を書いた本は平民でも買える値段の物が有りますが、その本だけでは改造は出来ても、魔道具自体を作る事は出来ず、本格的に魔道具を作るには、大学園の試験を受けなければ、正式な教本を手に入れられないと聞きましたが?」
「合格してたぞ?」
「はあ?大学園の試験に合格?」
「しかも専門分野である魔道具制作の試験にですか?」
ディーグリーとユーグラムに凝視されたが、
「ちららいよ?」
とアールスハインを見ると、
「テイルスミヤ長官に、金属板を渡されてたろう?」
「めーりょのやちゅ?(迷路のやつ?)」
「ああ、あれは魔力コントロールの腕を測る試験だったんだ」
「ふぇー、いたきったらけよー?(ふぇー、板切っただけよー?)」
「一定の魔力出力で迷路をなぞり金属板を切って行くのは至難の技なんだぞ?」
「ふぇー」
「ふぇーって!ふぇーで済む事じゃないですからね!」
ディーグリーに怒られた。
「まあ、ケータは最初から魔力操作が異常に上手かったからな」
アールスハインが苦笑しながら頭を撫でてくる。
「種族的な事も関係しているのかも知れませんね?」
「えー、妖精族だからって、出来る物でもないでしょ~?」
「息を吸うように魔法を使う種族らしいので、出来るのかも知れませんよ?」
「そ~なのかな~?」
「まぁ、受かってしまったのですから、この後に何を作るかを考えた方が良いのではないですか?」
「ん~、まぁそうだね!で、ケータ様は何を作りたくて悩んでんの?」
「にゃにをちゅくりゅかを、にゃやんでりゅ(何を作るかを悩んでる)」
「作りたい物とか無いの?」
「んー?」
「防御系は、ケータ様はバリアが有るし~、攻撃系は、最初に作るには危険だし~、生活に役立つ物とか?」
「たといばー?(例えば?)」
「んー………………………思い付かないね」
「しぇーかちゅにこまっちぇにゃいかりゃ、おもーちゅかにゃい(生活に困ってないから、思い付かない)」
「そ~だね~、最近は平和だからね~。無駄に騒がれない用に、姿を隠すマントとか?」
「それはケータ様のバリアで足りるのでは?」
「でもケータ様がいない時は、やたら声掛けてくる令嬢とかウザくない?」
「それはそうですが………」
「んじゃーちゅくってみりゅ!(んじゃー作ってみる)」
「出来たら買うんで、お願いします!」
ディーグリーが、まだ出来てもいないのに予約してきた。
姿を隠す魔道具で思い出すのは、前世で甥っ子と見たファンタジーな映画の、眼鏡の少年が父から譲られた透明マント。
だが布に文字を書くのは難しいので却下。
ならばどうする?身に着けられる物で、取り外しのしやすい物で、男子が着けていても違和感の無いブローチ的な?でもブローチは文字を書く面積が少ないし……………基本、魔道具は魔力を一度流せば、魔石の魔力が切れない限りずっと発動している。
ただ、魔力がゼロになった途端に壊れて使えなくなるのが面倒臭い。
小まめに魔力を補充すればいいけど、忘れちゃうこともあるし、普段の生活に支障が無い程度に勝手に魔力を吸い取ってくれれば楽なのにね!
そうなると直に身に着けられる物でー。
円を書いた内側に四角を三つずらして書いて、四角の角の部分に一文字づつ。
書こうと思ったのだが、ローマ字だと文字数も合わない上に面倒臭いので、漢字で書いてみよう!
認識阻害と、魔力補充、念のため悪用防止。
魔法陣の真ん中に平べったいおはじきのような魔石を取り付ける。
これを魔法で焼き付ける。
「だだーん、まーどーぎゅかんしぇー!(ジャジャーン、魔道具完成!)」
一人拍手をしていたら、授業中でした!
「何が完成したって?」
インテリヤクザな担任のカイル先生の授業だった。
にこやかに聞かれたけど、その顔は狂暴そうなので、普通の子供の前ではしない方が良いよ!
「にんちきしょぎゃいのまーどーぎゅ!(認識阻害の魔道具!)」
「これが?どうやって使うんだ?」
俺が渡した魔道具を、不思議そうに眺めるカイル先生。
見れば用途は一目瞭然だろうに、
「くちゅにしく!(靴に敷く!)」
「くちゅに?」
「くちゅのーにゃかじき!(靴の中敷き)」
「んん?」
何故か通じないので、アールスハインに靴を脱いでもらい、靴の中に出来たばかりの魔道具を入れる。使い方を説明して、魔力を流して貰うと、途端に存在感が希薄になった。
意識して見ないと、そこにアールスハインがいることを忘れる感じ。
「おー、しぇーこー!」
また一人で拍手してると、
「「「「「「はあーー?」」」」」」
多くの人にはあーー?されました。
「おいおいおいおい、おい!何だそりゃ?」
「にんちきしょぎゃいのまーどぎゅ!(認識阻害の魔道具!)」
「…………認識阻害の魔道具つったか?」
「ゆってりゅよ!」
「はぁーーー、おまいさん、またふざけた物を作りやがって!こんなん悪用し放題だろ!」
「あきゅよーぼーちちゅけたよ?(悪用防止付けたよ?)」
「そもそも何でこんな物作った?」
「でぃーぐでぃーほちいって!(ディーグリー欲しいって!)」
「ディーグリーだぁ?」
語尾をあげて睨まれながら呼ばれて、
「いやいやいや!言ったけども!こんなにすぐに出来ると思わなかったんですー!言ったのさっきの休み時間だし!」
「こんな常識外れの生き物に、適当な思い付きを言うんじゃねーよ!実現しちまう可能性を考えろ!変な奴に騙されて、とんでもねえ物作らされたらどうすんだ?」
酷い言われよう。
「そこは、アールスハイン王子に付いてるんだから、無茶な事言う奴は、中々現れないでしょう?」
「万が一を考えろ!悪意は無くても、面白がってふざけた要求する奴なんて、幾らでも居るだろう?」
「え~、それって俺のせい~?」
「まぁ、お前のせいじゃねーけど!」
「あきゅよーぼーちちゅけたよ!(悪用防止付けたよ!)」
「あきゅよー?悪用防止か?」
「しょーよー、あきゅいのありゅしとはちゅかえにゃいよー(そーよー、悪意のある人は使えないよー)」
「………………まぁ、少しは考えてるんだな」
頭をワシワシされました。
「だが!魔道具を作れるなんてのは、軽々しく人に教えるもんじゃねぇからな!普通は城に隔離されて守られてるから無事で居られるが、どんな悪党が近寄ってくるか、分かんないからな!」
「いやいやいや、それこそその悪党が纏めて返り討ちに合うだけでしょ!ケータ様を害せる存在なんて、それ何て生き物ですか?」
「……………………確かに。んじゃまぁ、好きにして良いが、悪用だけはされないようにな!」
「あーい」
インテリヤクザな担任のカイル先生からお許しが出ました。
「皆も下手に言いふらすなよー」
「「「「「は~い」」」」」
Sクラスは今日も良い子達です。
おっさんの精神が良い子にはご褒美を出せ!と訴えるので、何故か大量にマジックバッグに入っていた銀のメダルの裏に、魔法陣を刻んで魔道具化して、一人一枚づつ渡しておいた。
効果は物理攻撃、魔法攻撃を十回くらい防ぐ効果。持ってるだけで効果が有るので、ポケットにでも入れとけば良い。
皆、大袈裟な程喜んでくれました!




