新学期一日目 朝
おはようございます。
今日の天気は晴れです。
雪に光が反射して、やたら眩しい朝です。
昨日とは違う着ぐるみを着せられて朝食へ。
アンネローゼ以外が揃った食卓。
昨日は散々アンネローゼを叱り付けていたクレモアナ姫様が、朝、アンネローゼを呼びに行ったら、既に、固い肉とパンの朝食を食べていて、巡回騎士に付いていく決意を、新たに宣言されたそうだ。
普段は欲望に正直で、流されやすい面が多いが、一度決めたら物凄く頑固。
そんな所が、五年前に亡くなったイングリードとアンネローゼの生みの母である元王妃様にそっくりなんだとか。
しんみりとした朝食を過ごして、学園へ。
アールスハイン、シェルと助と、なぜかテイルスミヤ長官も一緒です。
「ミヤちょーかん、にゃんでいりゅのー?じぇんきらけじゃなかったー?(ミヤ長官、何で居るの?前期だけじゃなかった?)」
聞けば、
「それがですね、学園の教科書や授業内容を改めて見た結果、色々抜けがあることに気付きまして、その補足の為に協力を求められたんです」
「抜け、ですか?」
「ええ、例えば魔力錬成の玉による練習が、その後の魔力コントロールや威力に関わってくる事、今の学園で教える魔法は、理論ばかりで想像力を鍛える方には向いていない事等ですね」
「それは幼年学園で習う事では?」
「ええ、その通りなのですが、その関係性までを教えていなかった事が、皆さんとの訓練で判明したので、幼年学園では理論と練習を、誤った認識のまま成長してしまった高等学園の生徒には、実践も含めた訓練を中心に進めていこうと話が付いたんです」
アールスハインとテイルスミヤ長官の話に皆が納得。
後期の授業は、延々と座学が続くって事はなさそうです。
そんな話をしながら学園に到着。
先に到着してたキャベンディッシュが、珍しく一人で歩く姿を何となく眺めていると、キャベンディッシュの前方に、早足で歩く女生徒がおり、キャベンディッシュが追い抜こうとした途端に、女生徒が足を滑らせスッ転んだ。
驚いて声をかけるキャベンディッシュ。
「だ、大丈夫か?」
「い、いたたたた、あーもー、私ったらまたどじったー…………はっ、い、今の見てましたか?」
オロオロと慌てる女生徒に、手を貸して立ち上がらせるキャベンディッシュ。
「ありがとうございます、すみません、私ったらどじで~、えへっ」
立ち上がって、お礼を言い、自分のドジさに片手で頭を軽く叩く女生徒。
「い、いや、驚いたが怪我も無いようだし良かった…………………所で君は、先日のマーブル商会のパーティーに参加してなかったかい?」
「え、はい参加、と言うか、私マーブル商会の養女になったんです。礼儀作法に不安が有るので、正式なお披露目はまだなんですけど」
「ああ、やはり、見かけた顔だと思った」
「貴方も参加されてたんですか?偶然ですね!私、今日からこの学園に通う事になった、フレイル・マーブルっていいます!よろしくお願いします!」
「ああ、これも何かの縁だろう、困ったことが有ったら私に言うと良い。私はキャベンディッシュ・フォン・リュグナトフだ」
「リュグナトフ?って国の名前じゃ?え?王子様?え?本当に?」
キャベンディッシュの名乗りに、驚愕の表情になる女生徒。
慌てて居住いを正し、深々と頭を下げて、
「し、し、し、失礼しました!私知らなかったとはいえ、すみませんでした」
ペコペコと謝り出した。
「はは、気にしなくていいさ」
爽やかに許すキャベンディッシュに、顔を真っ赤にしながら、
「あ、ありがとうございました」
ポーっとお礼を言う女生徒。
「ちゃべーでっしゅ、ふちゅーにおーじみえりゅねー(キャベンディッシュ、普通に王子に見えるね)」
「いや、王子だから!見た目だけならキラキライケメンだろう?」
「きじゅかにゃかったー」
「ぶふぅげふっ、ぐふふふふ!」
シェルが、サイレント出来ずに小声で爆笑しています。
アールスハインも否定出来ずに微かに笑ってるし。
俺達の周りで様子を見ていた生徒も、笑いを堪えている。
そんなことを知らない前方の二人は、何か良さげな雰囲気。
最近は残念さが全校に知られているので、あんなキラキラした目で見られる事の無かったキャベンディッシュは、機嫌良さげに話しているが、
「けちゅちゅめたくにゃいんかにぇー?(ケツ冷たくないんかねー?)」
「ぐっふ、ごふっ、ぶふぅ」
シェルはもう隠す意味無いと思う。腹を抱えて痙攣してるし。
それは周りも同じこと。何とか声を抑えようとしているが、口と腹を抱える人多数。
本日の天気は晴れ、だが昨日の天気は雪。
足元には昨日積もった雪がまだ大分残っている状態で、女生徒はスッ転んだのだ。
当然、制服の尻はビチョビチョのグチャグチャ。それにも関わらず、朗らかに話す二人。
風邪引くよ?
何だか愉快な二人を眺めて、皆動かない。
そこに新たな人物登場。
キャベンディッシュのライバル生徒会長、いや、元会長。
冬休み中に、職員会議で会長クビになったお知らせがきた。
次の会長は、繰り上がったユーグラム。
「何をしてるんですかキャベンディッシュ王子、その女生徒、早く着替えさせないと風邪をひきますよ?」
「あ、冷たい!」
「ああ、すまない、つい君との話が楽しくて、すぐに着替えに行った方がいい」
「はい!私も凄く楽しかったです!それじゃあ失礼します!」
ピョコンと跳ねるように頭を下げて、小走りで去っていく女生徒。
キャベンディッシュと元会長は、特に会話も無く、お互いを一睨みして別れた。
「ふぅーーー、朝から愉快な人達でしたね」
シェルがため息の後に感想を言えば、周りも皆笑いながら、改めて挨拶して動き出した。
一旦寮部屋に寄って、教室へ。
教室に着くと、ユーグラムとディーグリーは生徒会の引き継ぎとかで、呼び出されているらしい。
アールスハインが前期と同じ席に着けば、皆も各々の席に座り、談笑を始めた。
「アールスハイン殿下、おはようございます」
声をかけてきたのはイライザ嬢。
今日もドリルがワサワサ揺れている。
「おはよう、イライザ嬢。婚約おめでとう。姉上?」
「フフ、まだお披露目もすんでいませんもの、気が早いですわ、でもありがとうございます」
うん、照れて頬を染める姿も可愛い。
イライザ嬢は、正しいツンデレなので、見ていてとても微笑ましい。
婚約は、教会で誓約書を交わし、パーティーでお披露目がすむまでは、正式な婚約とは言わないらしい。
今回は、次期女王のクレモアナ姫様と同時に婚約の発表を行うので、パーティーの準備に時間がかかっている。
イングリードは、クレモアナ姫様が即位した後は、大公って爵位と公領地を貰って分家する感じ。
間も無く我らがインテリヤクザな担任カイル先生が来て、
「おう、揃ってんな、んじゃ移動しろー」
と緩く促す。
講堂に着くと、前方の席にはユーグラムとディーグリー、書記先輩の姿が。後見たこと無いメガネ。
学園長の挨拶があり、生徒会のメンバーが一部入れ替わる事の発表があり、令嬢達の歓声と共に、新生徒会のメンバーが壇上に上がる。
生徒会長ユーグラム、副会長が名前忘れたけど書記先輩、会計はディーグリーのまま、新書記にメガネ。
客席でキャベンディッシュがニヤニヤして、元会長がグヌグヌしてた。
式が終わり教室へ。
ここでシェルと助は別行動になる。
教室の席に着き、ぼんやりと教室に入ってくる生徒を眺めていると、爽やか君登場。
爽やか君は教室内をグルッと見回して、こっちに来た。
「アールスハイン王子、ケータ殿、おはようございます!今日からこのクラスになりましたアルフォート子爵が三男スティントと申します。改めてよろしくお願いします!」
朝の集まりでは気付かなかったが、爽やか君、スティント君がSクラス入りしたもよう。
満面の笑みで爽やかに挨拶された。
「おはようアルフォート殿、クラス上げおめでとう、これからよろしく」
アールスハインも挨拶を返し、握手する二人。
目の前で握られた二人の手に、手を置いて、
「すてぃーとくんよーしきゅー(スティント君よろしくー)」
俺も挨拶したら、
「はい、ケータ殿もよろしくお願いします!」
と、満面の笑みで挨拶された。
おう、あまりの爽やかさに、オッサンの精神にダメージを受けそうです。
その後の爽やかスティント君は、他のクラスメイトにも挨拶をしてたが、なぜか全員に君呼びにされていた。
キャラ的に似合ってるので、令嬢達も微笑ましく受け入れていた。
なぜかアールスハインが苦笑しながら俺の頭を撫でて来た。
ユーグラムとディーグリーも遅れて教室に入って来て、前と横の席に着席。
緩く挨拶をしてたら、インテリヤクザな担任カイル先生とテイルスミヤ長官が入って来た。




