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侯爵家の後始末

 おはようございます。

 今日の天気も快晴です。

 今日は朝から教会に呼ばれているので、朝食を食べたら出掛けます。


 初めて訪れた教会は、でかかった。

 尖った塔みたいのが一杯あって、前世のテレビで見た、完成まで100年かかる教会みたいな建物だった。

 地震の無い国で良かった。

 ステンドグラスの技術はまだ無いのか、中はモノトーン。

 ただ、そこで働いてる人と、お祈りに来てる人達が、色彩豊かなので地味な印象は無い。

 あと、神父?さんが漏れなくマッチョなのも、地味な印象を壊してる。

 作業中だからって、冬なのに半裸は無いと思うの。

 アールスハインに抱っこされて、教会内に入っていくと、ほっそりした神父?さんが迎えてくれて、奥に案内された。

 前に聞いた話、教会にいる神父?さんは細くなる程強くなる、って話を思い出して、目の前にいる神父?さんがちょっと怖くなる。


 連れて来られたのは教皇様の執務室。

 王様の執務室に負けないくらい機能的だけど、高額そうな調度品の部屋。

 触りません!弁償は出来るだろうけど、触りません!


「アールスハイン王子、ケータ様、ようこそお出で下さいました。申し訳ありません、私共の力不足で何名かの呪いが、未だ解けておりません。どうかお力をお貸しください」


 教皇様に頭を下げられたよ。


「教皇猊下、どうか頭をおあげ下さい。私達でお力になれる事なら、喜んでお手伝いさせていただきます」


 アールスハインが俺の頭を撫でながら言うと、教皇様は、ホッとした顔をして、


「では早速ですが、患者の元へ」


 と、教皇様自ら案内してくれた。

 着いた先は、木と石の建物なのに、掃除が行き届いていて、暗さを感じない清潔な部屋で、白いベッドが何床か並べられ、五人程が寝かされていた。


「この部屋に居るものは、特に強い呪いを受けたとみえて、私共の手には余ります」


 ベッドに近付いて見ると、目を見開いて呼吸以外の身動きが出来ない者、肌が緑色に変色している者、眠りながら唸り声を上げる者、今にも暴れ出そうとして、ベッドに縛られている者が二名。

 症状はそれぞれだが、全員が強い呪いを受けて、体中からウニョウニョが出ている。


「きょーこーしゃまー、にょりょいのしといぎゃい、じぇんいんしょとだちてー(教皇様、呪いの人以外、全員外出してー)」


「ええと?」


 教皇様に俺の言葉は、まだ通じないもよう。


「教皇猊下、ケータ様は、この部屋の患者以外を全員外に出して下さいと申しております」


 シェルがすかさず通訳。


「ああ、そうですか」


 教皇様が納得して、全員を外に出してくれる。

 んじゃ、解呪をば!

 部屋全体にバリアを張り、バリア内を聖魔法で満たす。

 今までに見た呪いの中でも、一番濃い呪いなので、聖魔法も強目に!

 徐々に溶けていく呪いのウニョウニョ。

 何時もなら2、3分ですむのに、10分近くかかって、やっと解呪成功。

 ついでに毒も受けていたので、それも解毒。


「しゅーりょー」


 声をかけた途端、目を見開いて呼吸しか出来なかった人が、ガバッと起きて両腕を挙げ、


「う、う、う、うごげるー!!!」


 と、雄叫びをあげた。

 それに続いて、二人が起き上がり、自分の体を抱いて、異常が無い事に呆然としたり、体中をしきりに擦ったり、残り二人は縛られて動けないので、首だけを動かして周りをみたり、泣いてたりした。


「流石ケータ様ですね。素晴らしい解呪でした。お陰様で皆が助かりました」


 教皇様にまた、頭を下げられてしまった。

 こっちが慌てるから、それ止めて下さい。


 そしてなぜか教皇様の抱っこで、他の被害者の人達を見回りに来てる。

 教皇様は、年齢不詳なエルフのような見た目だが、ユーグラムパパなので抱っこには慣れてる様子。

 抱っこされながら聞いた話、教会の職員の階級は、教皇様がトップで、枢機卿、大神官、上級神官、下級神官、見習いとなり、教皇様は一人、枢機卿が世界中でも三十人、大神官が二百人、あとはいっぱいだそうです。

 お城に居るのは枢機卿だって。

ただ、女性神官の中には、特殊な役割の人が居て、産婆さんとか、治癒能力特化とかの人達は司祭って言われる事もあるらしい。

 上にいくほど強くなるのは本当か?って聞いたら、フフフって笑って教えてくれなかった。

 最強の人に抱っこされてるもよう。


 見回った結果、多少毒の残ってた人がいたくらいで、他は問題無し。

 ただし、長い間閉じ込められていた反動で、心理的に不安定な人は多数、と言うかほとんど。

 皆一塊になって離れようとしない。

 ろくな食事も食べさせてもらえなかったらしく、皆ガリガリ。

 そんな人達から見ると、ゴリゴリマッチョな神官さんは、恐怖の対象なのか、お世話をしてるのはまだ若い、ゴリゴリになる前の神官見習い達と、逆に強さが振り切れたのか細くなったベテランの上級神官。あとは女性神官ばかり。

 後は特にやれる事も無いので、教皇様自ら淹れてくれたお茶を飲んで帰りました。


 素朴な疑問なんだが、ユーグラムはいずれ神官になるだろうに、体術が苦手で、あのゴリゴリの集団に入って行けるのだろうか?

 アールスハインに聞いてみたら、本人が苦手と言ってるだけで、Sクラスに入れる位には、体術も問題無く出来るそうです。

 脳裏に鉄パイプを振り回すゴリゴリマッチョなユーグラムが過ったのは内緒。


 お城に戻ると、まだまだ騎士達がバタバタしてた。取り調べは順調のようで、下っ端から事情聴取していくと、自分の罪を軽くするためか、ペラペラ簡単に喋るそうです。

 それを元に調べ、証拠が揃ったものから大物の取り調べ。

 親族からも逮捕者が続々出てるそうです。

 逃げようが無い。

 まだまだ主犯であるルーグリア侯爵までは時間がかかるそうだが、全財産を没収しただけで、相当な額になったとか。

 すれ違う騎士や、貴族の話を聞いてるだけで、ボロボロと余罪が見付かっている様子。

 自分達の開発した、呪いの魔道具に余程自信が有ったらしく、本当に油断していたタイミングで、家宅捜索が出来たのね!


 二股女の元養子先の、アブ男爵も捕まった。

 国外に逃げようとしてた所を、イングリードに捕まった。

 アブ男爵は、ルーグリア侯爵の手足となって、国内では手に入らない毒物や魔物の素材、違法薬物なんかを密かに密輸してた事が判明。

 命令に逆らえなかった!と本人は言ってるけど、屋敷に蓄えてた私財が半端無かったので、手下扱いでは無く、共犯の扱いで逮捕された。

 しかもアブ男爵は、自分がいつか切り捨てされないように、ルーグリア侯爵との交渉事は、全て外国の特殊な魔道具を使って、証拠を残していた。

 この数日で、あっと言う間に証拠も揃い、後は量刑を下し、公表し、刑が執行されるだけ。

 それも後数日で終わる、との予想。


 ルーグリア侯爵家、その共犯の親族家、配下の貴族家、逮捕され取り潰しが決定している家の全ての財産は、被害者への賠償と、教会の孤児院への寄進に充てられるそうです。




 三日後、お城の大広間に主だった貴族が揃い、宰相さんが、今回のルーグリア侯爵家の罪状を発表した。

 その配下の貴族家、共犯の貴族家の罪状もあわせて発表され、多くの貴族家の取り潰しが決定された。

 シンと静まりかえった大広間に、宰相さんの声だけが響く。

 下手に異議を申し立てれば、共犯を疑われる状況で、声をあげられる者はいない。


 この国に死刑は無い。

 最高刑は、終身奴隷落ち。


 大広間の多くの貴族が見守る中で、元ルーグリア侯爵を始め、共犯と配下の元貴族達に奴隷の首輪が嵌められた。

 抵抗しようと暴れる者も居たが、騎士に押さえ付けられ首輪を嵌められる姿は、見ている者達の失笑を買った。


 彼等はこれから、オークションにかけられ、主となる契約者に買われた後は、過酷な労働が強いられる。

 奴隷の首輪を嵌められている限り、魔法は一切使えず、契約した主の命令には逆らえなくなる。


 被害者に嵌められた奴隷の首輪は、アブ男爵の残していた資料により、速やかに無効化され、無事全員の首輪を外す事に成功。

 身元の判明した者から、賠償金と共に教会騎士に送り届けられ、付近の教会にも協力を求め、心身共に回復するのを見守られる。

 孤児となってしまった子供達のケアは、教会が請け負い、身元の調査も続行される。


 まだまだ、御取り潰しにあった貴族家の領地などの問題は山積みだが、一連の騒動が一応の終息をみたのは一週間後。

 その素早い対応に、今回捕まらなかった別の悪事に手を染めた者達が、震えたとかいないとか?


 連日の公務に追われ、家族と食事を共にする時間も取れなかった王様が、双子王子を抱き潰し、アンネローゼにチュー攻撃を仕掛け、俺にまでチューしようとしてきたので、バリアを張って全力拒否の姿勢です!

 おっさんのチューなどいりませぬ!





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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
死刑…ないんだ… 奴隷にして悪いやつに助けられて…ってならないのかな?
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