昼は子守り 夜はパーリー
おはようございます。
今日の天気は快晴です。
何時もより少し早くシェルが来て、朝から風呂に入れられ、何時もは塗られない良い匂いのクリームを全身に塗られ、着替え。
オフホワイトのYシャツに、濃い青紫の蝶ネクタイ、クリーム色の三つ揃いのスーツ。半ズボンだけど!
ズボンにはサスペンダー付き、ポケットには青紫のチーフ。
髪も整えられ、お着替え終了。
どう見ても七五三。
アールスハインも似たようなスーツ姿。
だがスタイルが良く姿勢も良いのでモデルのよう。眩しい。
アールスハインが王子様な事を思い出しました。
抱っこされて、食事室へ。
二日振りのマトモなメニューに気合いが入り過ぎたのか、アンネローゼが既に着席し、ソワソワと落ち着き無く体を揺らしている。
まだ誰も来ていないのに、
「おはようございます、ハイン兄様、ケータ様。遅いですわよ!」
「おはようローゼ」
「おはようー」
苦笑気味に返事を返すアールスハイン。
その後、メイドさんに手を繋がれて双子王子、イングリード、王様が部屋へ。
少し遅れてリィトリア王妃様、クレモアナ姫様。二人は普段と変わらないドレスだけど、肌の輝きが違う。
キャベンディッシュ以外の全員が揃ったので、食事が運ばれてきたが、そこで、
「これは、どう言うことですの?!なぜわたくしのメニューだけみんなと違いますの?」
体をブルブル震わせて、怒り心頭のご様子。
それも当然だろう、アンネローゼの食事だけ、肉とパンが半分になって、サラダだけが倍の量になっているのだから。
「当然ですわ、ローゼの食事は、これから体重が戻るまで、この量しか出さないようにお願いしましたもの」
「酷い酷い酷い!」
「ア、ン、ネ、ロー、ゼ?」
これから叫び出そうとするタイミングで、リィトリア王妃様の低い声での名前呼び。
反射で硬直するアンネローゼ。
「わたくしも、クレモアナの仕打ちは酷いと思って注意しようとしました。ですが、クレモアナに言われて、貴女のメイドに確認したら、貴女、ドレスのサイズが減るどころか増えたそうね?メイドがお直しするのが間に合わないと泣いていましてよ!」
ぐうの音も出ないアンネローゼ。
「更に、メイドに確認したら、カルロとネルロのおやつの時間に乱入するだけで無く、メイドのおやつまで奪ったと言うじゃないの?わたくしそれを聞いて情けなくて情けなくて」
リィトリア王妃様が俯いて肩を震わせる姿に、双子王子がオロオロしている。
「ですから、わたくしも心を鬼にして貴女のダイエットに協力することに決めましたの!アンネローゼ、これからは貴女の甘えは一切許しませんことよ!」
強い強い目で見られたアンネローゼは、何一つ言葉も無く、静かに座って俯いた。
その目からポロポロと涙が流れるが、誰一人同情はしない。
双子王子でさえ目も向けずに、黙々と食べてる。
アンネローゼも泣きながらモリモリ食べてるし何の問題も無い。
静かな朝食が終わり、それぞれの予定へ。
昼前から始まるのは、チビッ子中心のお茶会と言う名のパーティー。
お城の中庭に集まったのは、4、5歳から13歳までの子供達とその保護者。
王様とクレモアナ姫様は、最初の挨拶に顔を出しただけで、後を仕切るのはリィトリア王妃様。
上品で華やかで豪華なドレスで着飾ったリィトリア王妃様はそれはそれは綺麗だったが、王族として挨拶をしたアンネローゼの目が、用意された軽食とお菓子に釘付けなのを、凍えるような目で見ていたのが、心底恐ろしかった。
俺が参加する義務は無いけど、双子王子に両手をガッチリ握られて逃げられなかった。
物珍しく見てくる、好奇心一杯のチビッ子集団の目線が痛いです!
俺に付き合わされて、会場の隅に居るアールスハインは、小さな淑女達に、遠巻きに見られて苦笑している。
一通りの挨拶が終わり、後は自由に、となった途端に周りを取り囲まれた。
「お前、こんなにちっちゃいのにパーティーに出るなんて、生意気だぞ!」
「そーだそーだ!ちーびちーび!」
周りを取り囲まれて、口々に文句を言うのは如何にもヤンチャそうな、双子王子よりは二、三歳年上の男の子のグループ。
「「うるしゃい!ケータしゃまはしゅごいから、みんなにみしぇてあげよーとしたのに、おまえたちキライ!!」」
双子王子よ、息ピッタリに庇ってくれるのは嬉しいが、俺は見世物ではありません!
「なにおー!おまえたちも生意気だぞ!」
中でも体の大きな一人が、癇癪を起こし殴りかかってきたが、常にバリアを張ってるので何て事は無い。双子王子も範囲内に入ってるし。
バリアに反発されて尻餅を付く男の子。
何があったのか理解出来ない顔で、キョトンとしていたが、自分の攻撃が通じなかった事に腹を立てたのか、立ち上がって更に殴りかかってきた。
だが何度やっても同じ。
双子王子は、自分がやったわけでもないのにドヤ顔してるし。
終いに泣き出した男の子。
つられて泣き出す周りの子供達。
騒ぎを聞きつけ、男の子の保護者が駆けつけた。
自分の子が誰を相手にしていたのか気付いて、顔が青ざめる。
「カルロ王子、ネルロ王子、も、申し訳ありません!家の愚息が、ほら、お前も謝りなさい!」
男の子の頭を鷲掴み、無理矢理頭を下げさせる。
男の子は更にギャンギャン泣き出して、注目の的に。
「まあまあ賑やかね?」
登場したのはリィトリア王妃様。
保護者の顔が更に青くなる。
「「リィトリア母しゃまー」」
リィトリア王妃様に両脇から抱きつく双子王子。
「何があったのか話してくれる?」
優しく聞くリィトリア王妃様に、
「この子がー、にゃまいきってー」
「なぐろーとしてー、ケータしゃまのバリアにー」
「「まけたー」」
自慢気に話してる。
「も、も、も、申し訳ありません」
「フフフ、ノエル伯爵、子供のした事ですもの、そんなにお気に為さらず、ちょっとやんちゃしてしまっただけですわ。」
リィトリア王妃様のお許しが出たので一先ず場は収まったが、まだグズグズしてる男の子に目線を合わせたリィトリア王妃様は、
「でもね、男の子が自分よりも小さい者や弱い者を虐めるのはとても格好悪い事よ!小さい者や弱い者を守ってこそ、男の子ですからね!」
と、確りと釘をぶっ刺していた。
目が笑ってなかった。
真正面から見た男の子は、ガクンガクン頷いて、父親の足に顔を押し付けてしまった。
うん、ちょっと怖かったね!
そして双子王子に手を引かれ飲食コーナーへ。
アンネローゼが絶好調です。
下品にならないギリギリの所で、菓子を貪っております。
お城のお菓子は改良済みなので、他の子供達と御婦人方にも大人気で、アンネローゼだけが目立ってる訳では無いけど、そんなに食ったら夕飯抜かれるぞ?と、心配にはなるくらい食ってる。
リィトリア王妃様は他の御婦人に捕まっているので、こっちを見ていないとは言え、メイドさんや侍従さんは確り見てるぞ?
双子王子に挟まれて、お菓子を食いながらそんな事を考えてたら、
「ヒッ!」
と、短い悲鳴を上げてアンネローゼが、背筋を延ばし汗をかきだした。
アンネローゼの視線を辿れば、顔は笑ってるのに、恐ろしく冷えたリィトリア王妃様の視線が、アンネローゼにグッサグッサ突き刺さってた。あれは絶対ビーム出てたね!
双子王子は我関せずで、そこそこ食べたら二人でどっかに遊びに行った。
やっと解放された俺は、飛ぶとまた別な騒ぎを呼びそうだったので、歩いてアールスハインの所へ。そのままこそっと抜け出しました。
部屋に戻ってシェルの淹れてくれたお茶を飲んで休憩。
子供達のお茶会はだいたい3時頃お開きになって、今度は夕方頃から、14歳以上のパーティーが始まる。
なぜ14歳なのかと言うと、幼年学園を卒業する歳だからだ。
幼年学園の最終学年の年始のパーティーで、大人の仲間入りとして、デビュタントと言う御披露目を行うらしい。
デビュタントを終えた後は、法律的にも結婚が認められるんだとか。
結婚の早い世界である。
デビュタントを迎える子は、国花である白い薔薇を身に付け、白い衣装で参加しているので分かりやすい。
アールスハインは去年済ませた。
そんな話をシェルから聞きながら、俺も着替えさせられる。
一応アールスハインに付いている妖精だから、パーティーにも参加するらしい。
クリーム色のスーツから、濃紺に銀の刺繍が入ったスーツ。
蝶ネクタイとチーフは、明るめの青紫。
何と、アールスハインとお揃い。
アールスハインのネクタイは、アスコットタイとか言う、スカーフをおしゃれネクタイにした感じ。よく知らんけど。
まあ、大きさが大分違うので、比べられても微笑ましく見られるだけだけど。
今のシェルみたいに。
シェルは黒の燕尾服。とても似合ってる。
時間になる少し前に、助が部屋に入ってきて、その姿は、正式な近衛騎士の制服が白を基調にした金の装飾なのに対して、形は同じで色が黒、そこに銀の装飾がされている。
学ランを豪華にしたような服。
これは、王族個人の護衛に与えられるらしい。
「お~けーた、立派な七五三だな?」
「たしゅきゅも、まごにもいしょーらな!(助も、馬子にも衣装だな!)」
「「ナハハハハハハハハ!」」
と一頻り笑って、会場へ向かった。
結構な距離を歩き、王族専用の待機部屋に入ると、イングリードと王様が既に居て、軽食を食べていた。
王族は、挨拶が多くて食べる暇があまり無いので、今の内に食べておくんだって。
俺達も混ざって食べる。
衣装を汚さないためか、どれも一口で食べられる大きさ。
俺の口には大きいので、シェルがよだれ掛けのようにスカーフを巻いてくれた。
助とイングリードに笑われた。
無駄に豪華な衣装を汚すのも怖いので、我慢したけど!
粗方食べ終わり、食後のお茶を飲んでると、リィトリア王妃様とクレモアナ姫様の登場。
王様とイングリードが、ササッと立ってエスコート。
実にスマート。
ついアールスハインを見ると、目を逸らされた。
シェルが笑っております。
リィトリア王妃様は昼間のお茶会とはまた違った、豪華さと華やかさと、露出も多いので妖艶さまで備わって、でも気品も有って、凄かった。
クレモアナ姫様は、やっぱり豪華で華やかだけど、ちょっと妖艶さには欠けるよね。
どっちもこの上なく美人で眼福です!
よく見ると、リィトリア王妃様は青紫の衣装、クレモアナ姫様は赤の衣装を着てるけど、形がお揃い。
装飾品が違うし、印象が大分違うので、お揃いにはなかなか見えないけど、仲の良い義母娘である。
「ふちゃりとも、きりぇーねー!(2人とも、綺麗ねー!)」
二人の周りを一周して、誉めといたよ!
「まあ、ケータ様も可愛らしいわ!」
クレモアナ姫様に捕獲され、チュッチュされそうになったが、
「ダメよクレモアナ、紅が落ちるわ」
リィトリア王妃様が止めてくれたので、頬っぺたが真っ赤にならずに済みました。
二人も軽食を取り一息ついてる所に、キャベンディッシュ登場。
「キャベンディッシュ遅いわよ!女性より支度に時間がかかるなんて失礼よ?」
「申し訳ありません、クレモアナ姉様」
らしくもなくすぐに謝り、デュランさんの勧めた軽食をモソモソと食べる。
「皆様、そろそろお時間です」
デュランさんの声で、皆が立ち上がる。




