年末年始
おはようございます。
まだ夜明け前だけど。
大晦日の早朝ともなれば流石に寒いです。
この辺では30センチ積もるか積もらないかくらいの雪が、年に数回降る程度の積雪量だそうです。
今日から年末年始のお祭りが始まります。
年末最終日の今日は、神様に一年の報告と感謝をして、年明け一日目に一年の健康と安全を祈る祭りです。
今年は、途中で神様の交代なんて前代未聞の事が起きたので、新しい神様を祝福するためにも、何時もの年より盛大に祝われるそうです。
夜が明けないうちに起こされて、身を清めるためにお風呂に入り、一年で一番よく着た服を着て、教会に行き祈ります。
司教さんから聖水を貰い、家の一番陽のあたる場所に置いて、今日一日はパンと水しか飲み食いせずに、家族と共に静かに過ごします。
陽が沈んだら、朝着た服を燃やして灰に聖水をかける事で、一年の悪運を洗い流すそうです。
お城の敷地内にある礼拝堂は、厳かで静謐な空気に満ちています。
肌寒さも一瞬忘れるような清浄な空気が流れているように感じます。
明けた朝日が射し込む細長い窓を背に、代替わりしたばかりの神像が…………………………………………ギャル男神の像を見た途端、空気が台無しに。
自分で作っといてなんだが、清涼な空気台無しだよ!ちょっと神妙な気持ちになってたのに、ギャル男神像のせいでぶち壊し。
この世界の人達は、ギャル男神像を見て大丈夫だろうか?とても不安。
腰に手をあて目を挟むように横ピース。
笑顔っちゃー笑顔だけど、神の威厳とか神々しさが感じられない。
周りを見れば、皆さん真面目に祈っているので、大丈夫そうだけど。
若い神父さん?達が数人、ゴスペル的な歌なのか祈りの言葉なのか、独特の節をつけて歌うように語ってる感じ。
黒い全身を覆うローブを着てるのに、服の上からでもわかるくらい、全員がゴリゴリのマッチョなので、声が太く大きくて迫力がある。
中でも一際マッチョで大きな太い声の神父さん?が、ちょっと他の神父さん?達と音がずれてて、笑いを堪えるのが大変。
音痴の自覚のない人っているよね。
祈りの時間はそれ程長くない。
お城の礼拝堂なので、人もそんなに多くないからサクッと終了。
何時もの食事室に入ると、珍しくキャベンディッシュが居た。
今日の食事はパンと水だけなので、アンネローゼが不満そう。
ドライフルーツとか木の実とかの沢山入ったパンなので、満足感はあるんだけどね。
食事が終わり、隣のサロンへ。
お茶は出ず、水を飲みながら、
「お父様、ロクサーヌ母様はどうされたの?」
と、クレモアナ姫様が口を開いた。
まだ子供達にはロクサーヌ王妃様の事は秘密だったからね。
「ロクサーヌは、勝手に遠征に付いて行って呪いを受けて、今は離宮で療養させている」
「ええ!大変な事じゃありませんの?何故お父様はそんなにのんびりしてらっしゃるの?」
「すぐに命に関わる呪いではない、ロクサーヌの日頃の行いが招いた結果でもある。だから今回は反省させる為にも、暫くは呪いを受けたまま療養させる」
「まぁ、それでは年始のパーティーは、ロクサーヌ様は参加されないんですの?」
リィトリア王妃様は、ロクサーヌ王妃様の体の心配は全くしていない。
ロクサーヌ王妃様の体の頑丈さを知っているし、王様がロクサーヌ王妃様を危険な状態でほうって置くわけがないと言う信頼が有るからだ。
それはクレモアナ姫様も同じなのか、
「まぁ、ロクサーヌ母様がパーティーをサボるのは何時もの事ですものね。それにしても、ロクサーヌ母様を寝込ませる呪いとはどんな呪いですの?精神的攻撃を受けるものなのかしら?ロクサーヌ母様なら肉体的な呪いならば、自力で呪いをはね除けそうですが?」
「ハハッ、ある意味精神攻撃かも知れぬな、ロクサーヌの受けた呪いは、体から力が抜けて動けなくなる呪いだ。あのロクサーヌがおとなしくベッドに寝たきりでおるわ」
王様が笑ったから、ロクサーヌ王妃様が呪いに掛かってても笑い話として話せる。
そう言う絶対の信頼があるから、チビッ子達も笑い出した。
「フフッ、そんな状態のロクサーヌ母様なら是非一度見てみたいわ!父様、お見舞に行っても良いのでしょう?」
「いや、今すぐの命の危険は無いが、少々解くのが面倒な呪いなのだ、複数の神父と魔法庁の職員が呪いの解呪にあたってくれている。見舞いは邪魔になるから控えてくれ」
意味ありげにニヤリと笑う王様。
その笑みの意味を正確に理解したのは、リィトリア王妃様、クレモアナ姫様、イングリード、アールスハインに俺。
それ以外は王様の言葉を鵜呑みにして、お見舞に行けない事を残念がっている。
キャベンディッシュだけは、関心が無いのかぼんやりと明後日の方を向いている。
ロクサーヌ王妃様の呪いの話が進んで、しかもそれを俺が解呪しないのは、ロクサーヌ王妃様への罰って事を理解させる。
そこまでが、昨日の打ち合わせ通り。
これでたぶん、ロクサーヌ王妃様が明後日のパーティーの時間に、ルーグリア侯爵家に乗り込む事はバレなくてすむだろう、と言う思惑。
実際にバレて無いかは微妙。
リィトリア王妃様とクレモアナ姫様あたりは、何か企んでる事はバレてそう。この二人ならバレても吹聴する事はなさそうなので大丈夫だろう。
その後解散。
今日明日はゆっくりと過ごすのが習慣だけど、女性陣は、明後日からのパーティーに向けてのドレスや装飾品等の最終確認と、肌や髪等の磨き上げに忙しいので、邪魔をしてはいけません。
キャベンディッシュはいつの間にかサロンから居なくなっていて、イングリードは街に見回りに行った。
双子王子にせがまれてアールスハインと庭へ。
助とシェルも交ざって、かくれんぼして鬼ごっこして、と、とにかく走り回った。
昼食も朝と同じパンと水。
アンネローゼがグヌグヌしてた。
午後も双子王子のお守り。
子供二人に振り回されて、アールスハイン、助、シェルがお疲れ気味。
俺は飛んでただけなのでなんて事無かったけど。
夕方早めにお風呂に入って、中庭に集まる。
朝から着ていた服を一ヶ所に集め、王様が代表して火魔法で火をつける。
それ程時間がかからずに燃えた服の灰に、朝礼拝堂で貰った聖水をかける。
夕飯もパンと水。
アンネローゼが、不満は言わないものの、一口食べるごとに溜め息をつくので、終いにクレモアナ姫様に怒られてた。
本日はそれで終了。
おはようございます。
今日もまた夜明け前起床。
お風呂に入り、新しい服を着て礼拝堂へ。
お祈りをして、パンと水の朝食。
王様、王妃様、クレモアナ姫様、イングリードは明日の打ち合わせ。
双子王子はアンネローゼが何処かへ連れて行った。キャベンディッシュは知らない。
アールスハインは、助と二人で剣と魔法剣の鍛練。
俺はソラとハクと遊んでた。
昼食もパンと水。
午後の鍛練中、庭の隅に反応したソラとハクが、何かに飛び掛かり、ハクの触手で縛られソラに咥えられて目の前に連れて来られたのは、メイドさん。
何事?とよくよく見てみると、メイドさんの胸の辺りにウニョウニョ発見!しかも見た目普通のメイドさんなのに、目に生気が無い。
アールスハイン達も近付いて来て、
「どうした?」
「にょりょわりぇてーね(呪われてるね)」
「彼女が?」
「しょー、しょらとはきゅがちゅかまーた(そう、ソラとハクが捕まえた)」
「………………………ケータ、ちょっとこのメイドを離して、何処に向かうか確かめたい」
「あーい」
ソラもハクも、人の言葉がわかるので、俺が頼む前にさっさとメイドさんの拘束を解いてくれる。
メイドさんは何事も無かったかのようにまた歩きだした。
多少ふらつきながら歩くその後ろを付いていく。
やがて辿り付いたのは、小ぢんまりとした建物。
「ここは………ロクサーヌ母上の休養されている離宮」
アールスハインの言葉にも反応する事も無く進むメイドさん。
目的の場所を確認した途端、助が王様に知らせに走る。
見張りに立っていた騎士は、特に警戒すること無くメイドさんを通す。
その騎士が、近付いて来たアールスハインに、訝しげな視線を向けて、
「アールスハイン王子、どうされたのですか?この離宮は今どなたも通すなと王より命じられておりますが?」
「お前はロクサーヌ母上の騎士だな?今入っていったメイドは知り合いか?」
「…………はい、ロクサーヌ様に専属で付いているメイドです」
「今すぐ先程のメイドの行動確認を!ロクサーヌ母上に危害を加える可能性がある!彼女は呪いを受けている、急げ!」
二人居た騎士のうち一人がその場を駆け出していく。
アールスハインは特に押し入る事は無く、その場で待機。
暫くすると、メイドさんを追って行った騎士が戻って来て、
「アールスハイン王子、お入り下さい。ロクサーヌ様がお会いになりたいそうです」
と言って先に歩き出した。
付いて行った先には、拘束されたメイドさんを片足で押さえ、苦い顔をしたロクサーヌ王妃様。
「ああ、アールスハイン、よく知らせてくれた。彼女は私に長年仕えてくれたメイドなので、油断していたわ!危うくとどめを刺されるところだった!」
面白く無さそうにフンと鼻息をつく。
「悪いがケータ殿、このメイドの呪いを解いてやってくれないか?理由なり原因なりを知らねばならんからな!」
「あーい」
メイドさんの胸から出てるウニョウニョをヌルッと抜いてやると、ビクビクっとした後に、メイドさんの目に光が戻る。
ロクサーヌ王妃様が足を退けると、
「い、いたい!いたたた!え?なに、何で私縛られてるの?」
混乱し出した。
正面に回りしゃがんだロクサーヌ妃が、
「エメリー、お前は先程まで呪われていた。何が有った?心あたりは有るか?」
「ののののろいですか?!わた、わたしが!わた、わたし死んじゃうんですか?!」
「落ち着け、呪いは既に解けている。死にはしないから安心して何が有ったか話せ!」
「う、は、はい、ええと、わたしは、一昨日はお休みだったので、昨日の昼食後にリリーさんにロクサーヌ様が体調を崩されて、離宮で療養されている事を聞いて、でもロクサーヌ様のお世話は先輩方がされるので、わたしはロクサーヌ様のお部屋の掃除をしていました」
「夜に何か何時もと違う行動を取ったか?」
「い、いえ、昨夜のお夕飯はパンと水だけだったので、夜中にお腹が空かないように何時もより早く寝たので………」
言ってて自分の食いしん坊エピソードに恥ずかしくなったのか、顔を赤く染めて俯いてしまった。
いたって普通の女の子である。
ロクサーヌ王妃様もそう思ったのか、微笑ましげにメイドさんを見て、先程よりも柔らかい声で、
「今日の朝からの行動は?」
「ええと、午前中は、お祈りをすませたら朝食を食べて、洗濯をした後、昼食を食べに食堂に向かって……………………?」
「どうした?」
「ええと、食堂に向かっていた時に誰かに呼ばれたような?」
「誰だったか思い出せるか?」
「……………………たしか、あれは、財務大臣の補佐の方で、リリーさんがちょっと良いなって言ってた……………シュピーネル様?」
「シュピーネルに会った時に何かあったか?」
「………………なにか、とつぜんむねのところに、石のよう、なもの、を、あてら、れて…………」
そこまで話すと、エメリーは酷く震えて、そのまま意識を失った。
ロクサーヌ妃は、エメリーの拘束を解き、軽々と抱き上げソファに寝かせると、
「ここまでだな、犯人は財務大臣補佐のシュピーネル。ルーグリアと関係が有るかはまだ分からんが、話を聞かねばな!」
「それはこちらで引き受けよう」
王様登場。
話を聞いていたのか、既に騎士を向かわせたらしい。
「アールスハイン、ケータ殿、よく気付いてくれた。お陰で妻が助かった」
と深々と頭を下げられた。
それは、王様の言葉ではなく、妻の危機を助けられた夫の言葉だった。
「いえ、ロクサーヌ母上が助かって何よりです」
「よかっちゃねー」
だから、アールスハインも俺も、重くならないように軽く返しておいた。




