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肉日和

誤字報告感想、ありがとうございます!


 鉄板の上でジュージューと焼かれるぶ厚い肉の塊。

 湯気にまで味があるかの様に涎が口内に溢れる。

 軽く塩コショウされ、ニンニクチップの載ったそれがシェフの手によって切り分けられる。

 表面の程好く焼けた焦げ色に対し、切り分けた断面の赤身の強いピンク色。

 皿に取り分けられたそれを、箸で挟む。

 箸で挟んだだけでその柔らかさが伝わる事に感動を覚える。

 いただきます!



 バチッと目が覚めた。

 先程まで見ていた夢の余韻に打ちのめされる。

 何で夢ってああも良い所で覚めてしまうのか。

 あの柔らかい肉を一口食べてからではダメだったのか?涙の滲む目をソラが嘗めてくれる。

 ザリザリの猫舌は、嬉しいけれど少し痛い。


「にきゅ」


 つい呟いた声に、今度はハクが慰める様に触手でテシテシしてくる。



 おはようございます。

 夢見が悪くてテンションだだ下がりですが、今日はお外に行くので、入念な準備体操をします。

 夢の恨みは現実で晴らします!

 シェルが来てお着替えです。

 街の外に行くので、演習の時に着ていた厚手のシャツとハーフパンツ、雨合羽風ローブを着ます。靴はちっさいのに作りの確りしたブーツです。

 俺、ほとんど歩かないけど。

 アールスハインもいつの間にか用意が整っていて、演習には行かなかったシェルも、今日は一緒に行きます。


 食堂に行けば、助、ユーグラム、ディーグリーも用意万端調えて、笑顔で挨拶してくれました。

 演習ではないので、荷物は自分の武器と小さな鞄くらい。

 周りの視線がとても訝しそうですが、構わず朝食を取り、学園の馬車ではなく、乗り合い馬車に乗ります。

 街中を走っているのにとても揺れます。

 そんなに長距離乗る訳ではないので我慢出来るけど、これ、街の外に行く時はかなり厳しい旅を覚悟した方がいいかもしれない。


 街の門を越える時に、皆が首から下げたドッグタグを門番に見せます。

 学園生は、演習が始まる時に全員が冒険者登録をして、冒険者の身分保証として渡されるのがドッグタグ。

 なんて事ない金属板に見えるのに、実は魔道具で、倒した魔物の記録とか、犯罪行為の有無とか、ランクとかが自動で記録されると言う優れもの。

 ここに居る皆は、演習で魔物を狩り捲ったので、冒険者ランクはCランク。

 普通の学園生はFからDランク。

 助は騎士科でダンジョンに行くのでCランク。

 ダンジョンはCランクからしか入れないらしい。なので騎士科の入学条件に、Dランク以上の冒険者って項目が有るんだって。

 シェルもシレッとDランクタグ出してる。

 アールスハインにくっついている妖精扱いな俺は登録させてくれなかった。

 おのれ!

 街の門は東西南の三つ有り、今回は森に近い東門から出て森に向かう。

 徒歩1時間くらいの場所に里山規模の手入れされた森が有り、そこにはあまり狂暴ではない魔物がいる。

 馬車で2時間くらい離れた森でないと、熊魔物とかの大物は出ないそうです。

 演習でもない限りDランクより下は街から出られないので、この森は新人冒険者を卒業し、駆け出しと言われる冒険者の多く集まる森。

 冒険者登録は10歳からで、森に来られる様になるのが早くて14.5歳くらい。

 同じくこれから森に行くのか、アールスハインらと同じ年頃の少年少女のグループが幾つか見える。

 街道の両脇は草原。

 アールスハイン達の膝丈の草原は、俺が入って行けば完全に埋もれる。

 そのなかには角の生えた鼠、兎や狸等の魔物が居る。

 庶民にはそこそこ人気だそうです。

 でも助は、旨くないからパスとのこと。

 今日の狙いは豚の魔物と、鶏みたいな鳥の魔物。

 猪の魔物は、豚の魔物より強い代わりに旨いらしいよ。

 あと、助的には蜥蜴の魔物肉もオススメらしい。

 駆け出しの冒険者達は、何組かは草原に駆け出してった。

 よく見ると草原組は、厚手の服やナイフ、ローブ等の軽装で、森へ向かう組は革鎧や剣、大きめな鞄を持っていてそれなりにちゃんと装備を調えている。

 装備の有る無しで森に入れるか入れないかも分かれるようだ。


 そして森に到着。

 入口に入った途端、ユーグラムが虫除けの香を焚きだして、ガサガサゴソゴソ周り中で音がした。

 それを森まで来た冒険者達がすかさず捕獲。

 虫魔物はものによっては結構稼げるからね。

 ユーグラムは周りから変な目で見られてるけど気にもせず、ディーグリーのお店で買ったお高い虫除けを、惜し気もなく使ってる。

 まあ、俺だって自分の顔より大きいてんとう虫とか嫌だけどね。

 先頭を歩くのは助。次にアールスハインとディーグリーが横並びに進み、そのちょっと後ろを俺が飛んで、ユーグラム、最後はシェル。

 虫虫虫虫虫たまに鼠、虫虫虫、流石森の中、虫が多い。

 無表情なのに眉間に皺のユーグラム。

 クケークケーと鳴く、やたら派手な鳥は結構いるが、「あれは食えない」の助の言葉でスルー。

 他の冒険者は、なんとか仕留めようと罠とか弓矢とか魔法とか頑張ってるけどね。

 森を歩いて1時間くらい、何かを発見した助が手を上げ皆を停止させた。

 前方を見てみると、鮮やかな全身水色の足の長い鶏?が盛んに虫魔物を捕食している。

 大きさは助の胸の高さ、足が異常に太く、首は短い。ズングリとした魔物である。

 肉は多そう。色は不味そう。

 まだこっちの存在には気付いていないので、ここはサクッと魔法でね!

 風魔法でサクッと首を狩りましたがなにか?


「たしゅきゅー、しゃかしゃにぶりゃしゃげてー(助、逆さにぶら下げて)」


「いやいや無茶ゆーな!こんなんぶら下げられる枝ねーわ!お前にはあれが有るだろ、ガガ針!」


「ああ!んじゃこりぇ(ああ!んじゃコレ)」


「ああ、羽根むしるのは街に帰ってからだぞ」


「あーい、しんじょーしゃしたりゃ、はやきゅぬけりゅ(はーい、心臓刺したら、早く抜ける)」


「はいはい」


 助にビックガガの針を渡し、その場で血抜き。

 首を落とされたのに、未だバタバタ暴れているが、助はサクッと針を刺した。

 この血抜きをいかに早く、いかに残りの血を少なく出来るかで肉の臭みが全然違う。

 その点この世界の方が断然便利!なんせビックガガと言う不思議生物が居て、その針と言うか嘴は、魔力と血を残らず排出してくれる!仕組みは知らんけどとても強い味方。

 これを発見した事で、城の肉は格段に柔らかくなった。

 なんせ俺でも噛みきれる!

 まあ、魔物が死んでから時間が経った肉なので、臭みは完全には消えなかったけどね。

 新鮮な肉なら、臭みはまだ無い、仕留めてすぐに、この場で血抜きを行えば臭みもなくなるだろう。たぶんね。

 魔物特有の臭みとかだったらどうしょもないけど。

 ビッグガガの針は優秀で、数分で血抜きが終了。血の跡を焼いて、マジックバッグにしまって次へ。


 次に発見したのは豚の魔物。

 白い地肌に赤い水玉模様。

 魔物って自己主張激しいのね。

 後からシェルが教えてくれた事によれば、逃げ足の早い魔物は割りと地味で、弱いけど大きい魔物は派手、強い魔物はそれぞれなんだって。

 あと、魔力量を測った時の、白黄緑青赤虹の色と、魔物の色は力関係が比例するって。

獲物の魔物は弱い方。

 虹色の魔物とか出たら、国が滅ぶレベルって。

 豚の魔物もその場で血抜き。

 近くを通った冒険者のグループに凄く変な目で見られた。


 その後昼休憩をして、何匹か狩って終了。

 本日の成果は、豚魔物三匹、鶏魔物六匹でございます。

 朝、手ぶらで出ていって、手ぶらで帰って来た俺達に、門番さんの憐れむような視線が。


「まあ、落ち込むな、始めは皆そんなもんだ」


 慰めの言葉まで貰ってしまった。

 まぁ誰も気にしないんだけど、ほぼ一緒に行って帰って来た冒険者に、物凄く怪しげな視線を向けられたけどね。


 街に入って、ディーグリーの知り合いの肉屋さんへ。

 前もって話を付けてくれていたので、休みなのにスムーズに中に入れてもらえた。

 以前にも来た肉屋の店主は、イングリード並みの巨大筋肉で凶悪顔。

 その悪の大物臭の店主はガジルさん。

 ディーグリーが前もって説明しといてくれたのか、新しい肉の処理方法に興味津々。

 取り敢えず全員に洗浄魔法を掛けて、


「うおおおー、なんだこりゃ!いやにサッパリしたぞ!こんな魔法が有るんだなー。やっぱエリート学生はちげーや!」


「いやいや、今魔法掛けたのケータちゃんだから!ま、俺達も教わって出来るようになったけど!」


「ほう、チッセーのにすげぇな!」


 頭をグリングリン撫でられた。


「もげるもげる!頭もげそうだから加減して!」


 ディーグリーに捕獲された。


「アハハハ、悪い悪い、子供には慣れてなくてな!」


 悪の大物顔だからな!心なしか肩が下がってるので、言わないでおいてあげるけど。


「それで?新しい肉の処理方法ってのは、どうやるんだ?」


「ああはいはい、ケータちゃん?」


 ディーグリーに促されて、徐にマジックバッグから魔物を出す。


「おおおい、お前さん今どっからこれ出した?!まさかマジックバッグじゃないだろうな?そんなもんホイホイ人に見せんじゃねーよ!拐われるぞ!」


 脅されました。

 顔怖いよ!


「まぁまぁガジルさん落ち着いて、大丈夫、ケータちゃんもそんな考え無しに街中で使ったりしないから!ここはほら、俺が信用して良い店だって話したから、ケータちゃんも安心してるんだよ!」


「お、おう、そうかよ。だが十分注意はしろよ!昔それで殺しあいも有ったって話だからな!」


「あーい」


 俺の軽い返事に、まだ多少不満そうではあったが、それ以上は言わず、肉に視線を向けたので、更に肉を出していく。


「おいおいおいおい、どんだけ出すつもりだ?こんなに一度に処理しきれねーよ!取り敢えず一匹づつにしろ!」


 怒られたので、一匹づつ残して後はしまった。


「ん?なんだこりゃ!血が完全に抜けてんじゃねーか!こんな完璧な血抜きどうやったんだ?!」


 驚愕って顔のガジルさん。

 俺はどや顔でガガ針を掲げてやりましたよ。


「ん?なんだ?槍のつもりか?そんなチッセー槍じゃ、虫の一匹も殺せねーだろ?」


「ちぎゃーう、こりぇでちーぬきしゅりゅ!(違ーう、これで血抜きする!)」


「んん?」


「あー、ガジルさん、このケータちゃんの持ってるビックガガの針を、魔物に刺すと、このように綺麗に血抜きが出来ます」


「何!それは本当か?試してみても良いか?」


「どーじょー」


 ガガ針をガジルさんに渡してやると、早速その辺に転がってる兎魔物にぶっ刺した。

 ドバドバ血が流れて、数分で止まる。


「うおっ!本当に血抜き出来た!すげー!」


 子供のように感激する悪の大物。

 そのギャップにシェルが痙攣する程笑っております。




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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[良い点] 魔物肉の血抜き処理に革命がおとずれそう(*´▽`*)
[良い点] 血抜きも良いのですが、手早く冷やすことも大事だと聞いたことがあるような?
[良い点] ガガ針良いですねー! これこそファンタジー(^◇^)♪
感想一覧
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