魔法大会当日
おはようございます。
今日の天気は晴れです。
今日は魔法大会当日です。
だからって俺は見学するしかやることは無いんだけど。
着替えて朝ご飯を食べたら、高位貴族用の保護者控え室に行きます。
見学に来た親に、朝の挨拶をするためです。
控え室には、王様、宰相さん、将軍さん、教皇様、テイルスミヤ長官に、イングリード。
アールスハインは挨拶と同時に、王様に俺をパスします。
なぜ王様も当たり前のように受けとる?
今日も王様の膝で観戦することが決定したもよう。
王妃様方と姫様方は、今日も来られませんでした。
どっかの国の王妃様とお姫様が来てるので、その接待らしいよ。
アールスハイン達が、本選出場者控え室に向かって部屋を出ると、この部屋にいる人達も観客席に移動する。
貴賓席はゆったりとスペースが取られ、各席毎にテーブルも配置されて、いつでもお茶を飲めるようにデュランさんもスタンバってる。
隔離されたスペースは、特別感があるけど、舞台とはかなり距離があって、臨場感は味わえないちょっと寂しい席だ。
ルールとかは、剣術大会とほぼ一緒で、舞台から落ちるか戦闘不能で負け。
武器や体術は使わず、魔法のみで闘う。
最初に闘う20人が舞台に上がる。
今回も20人5組、全100人が本選出場。
舞台上で円になり、外側を向いて一礼、内側を向いてそれぞれ構えると、
ーーーガガーンガーンガーンーーー
鐘の音を合図に戦闘開始。
この第一組には知り合いがいないので、のんびり観戦。
色んな種類の魔法が飛び交うが、中級魔法の槍はあまり多くない。
テイルスミヤ長官が、ちょっと渋い顔をしている。
学園卒業時のテストで中級魔法の一定威力以上を出すと、魔法庁に推薦してもらえるはずなんだけど、この組にはテイルスミヤ長官のお眼鏡に適う人はいないらしい。
まぁ、魔法庁入庁ってのはエリート街道らしいから、そんなにポコポコ出ても困るだろうけどね。
バリアと魔法玉を同時に発動出来る人はおらず、魔法玉を打った直後を狙われて負けてしまう人が多い。
特に目を引くような魔法の使い方をする人はおらず、ちょっと退屈になってきた俺は、デュランさんが出してくれたジュースを飲もうと、テーブルに手を伸ばす、が、ふと視線を感じて周りを見る。
皆前方の試合に夢中でこっちを見ている人はいない。
それでも感じる視線。
更に探すと、下、俺の張ったバリアの外側に、黒いウニョウニョを発見。
目など無いのに視線を感じる不思議。
こちらを見ながら?少しづつ這い寄って来るウニョウニョ。
俺がガン見している様子に、気付いたのはデュランさん。
「ケータ様、どうかされましたか?」
「ここに、くりょいうにょうにょがいりゅ(ここに、黒いウニョウニョが居る)」
指差して訴えて見たが、デュランさんには見えないらしい。
不思議そうに首を傾げている。
俺とデュランさんの会話から、王様も俺の指差す先を見るが、やはり首を傾げている。
あとほんの少しでバリアに触れる位置まで来たウニョウニョ。
バリアに触れた途端、パチッと音が鳴って、皆にもウニョウニョの姿が見えるようになったらしい。
「これは、以前見た覚えがあるな」
「にょりょいねー(呪いねー)」
「アールスハインの体から出ていたのだったか」
「しょー、にてりゅ」
「誰に向けられているか分かるか?」
「しゃー?ここにーりゅしとにょだりぇか?(さー?ここにいる人の誰か?)」
「…………テイルスミヤ長官を」
「は、ここに…………確かに以前、アールスハイン王子の時に見た呪いに酷似しておりますね。ケータ様、このバリアは先程この呪いを弾いたように見えましたが、呪いを防げるのですか?」
「ふしぇげりゅよー、こうぎぇきしゃりぇりゅと、ばいがえちしゅりゅー(防げるよ、攻撃されると、倍返しする)」
「それは頼もしい限りですね!では私はこの呪いの返された先を追跡致しましょう」
「ああ、頼む」
王様に撫でられたよ。
デュランさんが良い笑顔でジュースを差し出してくれたので、お礼を言って美味しく頂きました。
特に被害が無かったので、騒ぎにはせず、テイルスミヤ長官がバリアに弾かれてどっかに飛んでった呪いを追いかけて行った。
気付くと第二組の試合が終わっていて、アールスハインと助が勝ち残っていて、舞台から降りていく所だった。
第三組には、イライザ嬢が出場していてバリアとの同時発動は出来なかったけど、中級魔法の水槍を飛ばし捲って敵を吹っ飛ばして勝ち残ってた。
ちょっと怖かったのは内緒。
宰相さんとイングリードが立ち上がって喜んでたよ。
第四組はディーグリーの無双で終わりました。
俺達の中では、助と良い勝負の最下位なんだけど、他の人に比べるとかなりレベルが高い事が分かった。
最後の第五組は、当然ユーグラムの独壇場だった。
魔法自慢の元生徒会長も、それに張り合おうとしたキャベンディッシュも瞬殺されてた。
教皇様が立ち上がって拍手してて、気付いたユーグラムが無表情で手を振ってた。
午前中の試合が終わり、昼食を取るために控え室に戻る。
控え室に戻る途中合流してきたテイルスミヤ長官は、無事刺客を捕らえたらしい。
返された呪いは、病気の症状に似ていて、体が徐々に動かなくなって、やがて死に至る。
そんな事を目的とした呪いだったらしく、俺のバリアで効果が倍になって跳ね返されたもんで、その場で動けなくなったらしい。
こんなはずじゃ無かったって刺客が叫んでたって、テイルスミヤ長官が王様に報告してた。
尋問と解呪は城に帰ってからするそうだ。
お付きの騎士さんが先に城へ運んで行ったって。
王様の護衛は?って聞いたら、呪いも返せるバリアがあれば、どんな刺客が来ても心配無いって、テイルスミヤ長官に笑顔で宜しくお願いされた。
控え室には既に食事の準備が調っていて、数人のメイドさんが料理を運ぶ準備をしてた。
上座に座る王様の隣に俺の子供椅子がセットされてる。
王様に座らせてもらって、本選一回戦を勝ち抜いた生徒が来るのを待っている。
アールスハインを筆頭に、いつものメンバーとイライザ嬢、後は勝ち抜いただろう知らない生徒が五人。
ガチガチに緊張してるのは二人の男子生徒だけで、残り三人の令嬢は多少緊張してはいるが、ガチガチでは無かった。
親しげに話す様子から、イライザ嬢の友人の高位貴族の令嬢達だと知った。
イライザ嬢も椅子に座ったが、隣は元々座ってた宰相さんで、反対隣には友人の令嬢が座ってしまったので、イライザ嬢の隣に座れなくなったイングリードが、ちょっと不貞腐れた顔をしてるのが面白かった。
王様とこっそり笑ってたら、宰相さんが黒い笑顔でこっちを見てきた。
いつの間に来たのか、部屋の隅でシェルが密かに爆笑してた。
軽い挨拶が終わり食事が始まる。
剣術大会にはいなかった教皇様とテイルスミヤ長官も居たので、賑やかな魔法談義で話が盛り上がった。
俺は食べるのに必死で参加しなかった。
かっっっっったい肉を、上品に食べながら話すって、俺には難易度が高過ぎだと思うの。
令嬢達も、普通にかっっっっったい肉を食ってたし、何なのかしら?あの細い顎のどこにそんな咀嚼力を隠してるのかしら?魔法?魔法なの?身体強化魔法って聞いたことも、使ってるのも見たこと無いけど、実は皆達人級に使えてるのかしら?今度テイルスミヤ長官に聞いてみよう。
俺一人、肉とのデスマッチをしていると、皆食べ終わってて、俺は敗北の二文字を背負って、フォークを置いた。
今回も負けてしまった。
だが今に見ていろ肉め!爺ちゃん婆ちゃん直伝の技で、お前をやわやわにして美味しく食ってやるからな!と闘志を燃やす俺だった。
午後の部に出場するためアールスハイン達生徒が部屋を出て行くと、刺客を運んで行ったはずの騎士が一人大慌てで帰って来て、将軍さんに何か耳打ちした。
将軍さんは、険しい顔をして騎士に質問しているが、騎士も詳しい事は分からないのか、頻りに首を振っている。
将軍さんが立ち上がって王様の前に来ると、小声で、
「先程報告があり、牢に入れていた元王妃クシュリア様が姿を消したそうです。捜索はしておりますが、牢番が呪いに掛かり意識不明な為、いつから姿が見えないのか分かりません。城に常駐する神官の手には負えない程の呪いだったようで、今すぐ命に関わる事は無いとの事でしたが、話を聞くのは遅くなります」
「分かった。私もすぐに城に戻ろう」
「いえ、それには及びません。捜索は私が指揮を引き継ぎますので、陛下は大会が終わり次第城にお戻り下さい。出来れば教皇猊下にご同行頂けると有難いです」
「分かった、そのようにしよう。教皇殿にもご同行願う」
「宜しくお願いいたします。それでは私はこれで、ケータ殿、呉々も陛下をお願いいたします」
「あーい、がむばりゅまーしゅ!あ、ちょちょっちょまっちぇ……………………えーと、こりぇでーにょりょいとけるきゃも?(はい、頑張ります!あ、ちょっと待って、………………えーと、これで呪い解けるかも?)」
俺が作ったのは、飲み水に聖魔法を掛けて、バリアの容器でくるんだ物で、唾液に触れるとバリアが溶けるように設定して作った物、ピンポン玉位あるそれを、呑み込ませると、体の中に聖魔法が満ちる仕様になっている。
呪いは強い聖魔法を受けると、解けて無くなるので試しに作ってみた。
他の人の魔法だと、魔力反発が起こって大変な事になるけど、俺の魔法はなぜか大丈夫なので、この3ヶ月大勢の人を一気に治す魔法を開発したのだ。
聖魔法を水に溶かして、雨みたいに降らすのが一番効果があったので、呪いにも効くはず。
それを将軍さんに説明してから渡すと、頭がもげるかと思う位撫でられた。
王様と宰相さんが険しい顔をしているが、今ここで出来る事は無いので、控え室を出て会場に。
将軍さんは城に向かった。




