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草原演習3日目

 おはようございます。

 今日の天気も雨です。

 起きた時に、おでこに乗ってたスライムにはギョッとしたけど、ソラがスライムをつついて遊び出したので、昨日ペットになった事を思い出しました。

 スライムの名前はハクです。

 シロか迷ったんだけど、スライムがハクの方に反応したからね!

 着替えて食堂へ、雨のせいか普段よりは生徒達の顔もくもりがち。

 朝食の後は馬車に乗って草原へ。

 3日目なのでなれてきた感のある草原。

 スライム改めハクは、ユーグラムの胸ポケットに入り、ヤル気満々で触手を出し入れしている。

 そんな姿をユーグラムが無表情で撫でている。

 今日もスライムがワラワラ出てくるが、ハクが一撃で倒すので、俺は虫魔物中心に、アールスハイン達は獣系の魔物中心に狩って行く。

 ディーグリーは出番が少ないが、スライム素材は中の液体ごと査定に出す方が、高額買取りになるので文句は無いらしい。

 そう言う所は商人の息子って感じだ。

 虫魔物も靄の濃い魔物を中心に狩って行くが、昼休憩までに結構な数が集まっている。

 来る時の馬車の中での先生の話では、去年よりも魔物の数がかなり多く、重傷ではなくても怪我人も多い様だ。

 そもそもこの草原に、こんなにスライムが大量にいることが異常らしい。

 無理せず逃げる事も戦略の内だって説得してた。

 今のところうちの班は無傷で切り抜けているが、森に出るはずの無いロックリザードが出た様に、この草原にもいるはずの無い魔物が出る可能性も無いとは言えない。

 視界が悪いが、油断せずに行こう!

 そう気持ちを引き締めた途端に、視界の端に黒い靄を発見!今までに無いくらい濃い靄の色に、皆に注意を促す。

 ガサッガサッと近付く音はゆっくりだが、足音は重い。

 草に遮られて魔物の姿はまだ見えない。

 このままでは、間近になるまで魔物の姿を確認出来ないので、一旦上空に上がり周りを確認する。

 草に隠れて魔物の姿は見えないが、周りに他の班も見えないので、


「ゆーぐりゃむ、ばりあ!(ユーグラム、バリア!)」


 俺の声を聞いたユーグラムは、直ぐ様皆を囲むバリアを張ってくれたので、魔物の周り目掛けて火魔法を放つ。

 魔物を中心に半径5メートルの草を高温の炎で焼き払って即消火。

 焼き払った範囲の1メートル程外側にいたアールスハイン達は、バリアのお陰で無事に済み、直ぐ様魔物を視界に入れられる場所に出る。

 俺もアールスハイン達に合流して、魔物と対峙する。


「な、何でこんな草原にミミックがいるの~?!」


 ディーグリーが叫ぶが、ミミックってダンジョンとか言う洞窟にいるもんじゃ無いの?自分で動く足とか無さそうなのに、どうやって歩いて来たんだろう?

 よーく見てみると、洋風バスタブについてる猫足みたいな足がついていて、それでズリズリ歩いていた様子。

 装飾過多な宝箱型魔物は、俺達の存在に気付くと、沈黙しただの宝箱のふりをした。


「………いや、遅いから!お前が近付く音とか聞こえてたから!今さら宝箱のふりしても遅いから!」


「…………グケケケケケー」


 ディーグリーの突っ込みに、ミミックが今さら威嚇の声をあげる。

アールスハインとユーグラムがビミョーな視線を向けていた。

間抜けな様子と異なり、高温の炎でも無傷なところは、意外と強い?


「みみきゅてー、どーやってたたきゃうの?(ミミックって、どうやって戦うの?)」


「そうですね、通常ですとダンジョンにしか居ない魔物なので、魔法で牽制しつつ剣で攻撃、あの宝箱の中の核を破壊すれば倒せます」


「まず、槍とかの長物で蝶番を壊すのが常道かなー」


 俺の質問に丁寧に答えてくれるユーグラム。

 ディーグリーも補足してくれて、大体の戦闘の流れを知る。

 ミミックは先程から、挑発するように宝箱の口をパカパカ開け閉めしている。

 何だかそれがこちらを馬鹿にしているように見えるので、正しく挑発なのだろう。

 ミミックは通常動かずに、獲物を待ち構えて闘う魔物なので、速度はそれほど気にしなくて良いのかもしれない。

 口の中に見える金銀財宝は、ほぼ幻影なので、攻撃も躊躇わず行った方が良い。

 黒い靄がとても濃いので、かなり強い魔物なのかもしれないが、何だか挑発するだけで移動しないし、魔法もまだ打って来ないしで、のんびりと倒しかたを話し合ってしまった。

 そんな俺達に焦れたのは、ここまでも意外な程好戦的だったハクで、ユーグラムのポケットから飛び出すと、一直線にミミックに向かい、大口を開けたミミックの中に入ってしまった!

 あまりに急で素早い行動に、誰も何も反応出来ずにいるうちに、ミミックに呑まれて?しまったハク、


「はきゅー!!」


 ビックリし過ぎてバリアも張らずに、ミミックに突っ込もうとした俺を、アールスハインがキャッチした。

 抱き込まれたのを外そうともがく俺に、


「落ち着け!良く見ろ!」


 と荒い声で言われたので、ミミックを見ると、ミミックは口の開閉もせずに、ピクリとも動いていない。

 不思議に思っていると、ミミックの体から黒い靄が消えて行く。

 数秒後、パカッと開いた口から、何事も無かったかの様に、出てくるハク。

 ポヨンポヨン跳ねて俺の胸に、スリスリと身を寄せるその様は、誉めてー!と言わんばかりで、一気に気が抜ける。

 ダランとアールスハインの腕に凭れると、確りと抱っこし直されて、八つ当たりのようにハクをモニモニしてやった。

 ハクは嬉しそうにプルプルしてた。

 そんな俺達を余所に、ミミックに近付いたディーグリーが、


「やっばい!超レアきた~!」


 と叫んだ。

 何事かと見ると、ディーグリーは手に薄汚れた革のポーチを2つ持っていた。

 アールスハインとユーグラムも気になったのか、近付いて行くと、


「ヤバイよこれ!マジックバッグ!」


 と叫んだ。


「ほ、本当ですか?それは、とても貴重な物が手に入りましたね!ダンジョンでも滅多に出ない物なのに!」


 ユーグラムも歓声をあげる。

 二人が大喜びしているが、それほど貴重な物なの?と、アールスハインを見ると、苦笑して頭を撫でてきた。


「ちょうど2つあるから、一つずつ持てるな」


 アールスハインの言葉に、


「ええええ!いやでも、ミミック倒したのハクちゃんだし、貰う訳には………」


 欲しい!と顔に出ているのに、遠慮しているディーグリーが面白い。


「俺達は既に持っているから、必要ない、二人が使ってくれ」


「ええ、良いのかな~?ハクちゃんとケータ様も良いの?売ればかなりの金額になるよ?」


「どーじょー」


 俺が譲る意思を伝え、ハクはプルプルしてるだけ。


「ディーグリー、ここは有り難く頂いておきましょう、今後の働きで返せば良いんです!」


「…………どんだけ働けば返せるか分かんないけど、有り難く頂きます!ケータ様、ハクちゃん、アールスハイン王子有難うございます!」


「有難うございます」


 二人にお礼を言われた。

 俺は草原を燃やしただけだけど。

 一応見せてもらうと、今二人が持っている大荷物がすっぽり入って、後熊魔物が一、二匹入る位の容量、畳三畳分くらいかな?ディーグリーの方はベルトに装着出来るウエストポーチ型、ユーグラムは斜め掛けの縦長の箱みたいなポーチ型。

 小汚いので今すぐ使うのではなく、一旦持ち帰って洗ってから使うらしい。

 容量も小さいし、小汚いけど、二人はとても嬉しそうなので、まぁいいや。

 装飾過多のミミックの死骸は、誰も要らないので、査定に出す事になった。

 折角綺麗に焼き払ったので、ここで昼休憩を取り拠点に向かう。

 午後は特に変わり無く、サクサク魔物を狩りながら進み、もうすぐ拠点につくと言う頃、拠点の方向から複数の声が聞こえる。

 叫び声、慌てる声、助けを呼ぶ声、闘っているのか雄叫びも聞こえるし、剣を打ち合うような音もする。

 警戒しながらも素早く拠点に向かう。

 到着した拠点は、大量に押し寄せた狼魔物の群れに蹂躙されていた。

 闘えない者は、元は救護用テントだっただろう場所に、複数人がそれぞれにバリアを張って狼魔物を防いでいる。

 その真ん中では救護担当教師が怪我人の治療をしていて、多くの冒険者も狼魔物と闘っていた。


「ユーグラムは離れた場所にいる魔物の殲滅、ディーグリーは牽制しつつ令嬢達の避難を、ケータは救護所の確保と治療を!」


 アールスハインの指示に、返事もそこそこに自分のやるべき事のため散開する。

 俺は救護所のテントを中心に、目に見えるよう半透明の巨大なバリアを張り、バリア内に聖魔法を満たす。

 そうすれば、多少の怪我は勝手に治るし、恐慌状態の精神を多少落ち着かせる事が出来るらしい。

 バラバラに個人で張っていたバリアを、生徒達が解除していく。

 聖魔法で落ち着きを取り戻したのか、バリアの外の状況を良く見て加勢に向かう生徒も出てきた。

 闘いに向かない令嬢達が、教師の指示で怪我人の振り分けを行っていく。

 俺は重傷を負った生徒の元へ。

 教師二人は初めて見る顔だが、教師同士何か聞いていたのか、俺を止める事はなく、場所を空けてくれる。

 狼魔物にやられただけあって、傷口はズタズタ、取り敢えず教師の二人と近くにいた令嬢の何人かに手伝ってもらって服を脱がせ、掌全体から消毒薬を霧吹きみたいに吹き出させ、怪我人の傷に吹き付ける。

 毒も消えろーと願ったので、解毒も済んでいるはず!水魔法の使える令嬢達に、傷口を洗っておくように頼んで、俺は傷の治療を進めていく。

 深い傷や危険な場所にある傷から治していく。

 こう言う時は、本当に魔法は便利だと思う。

 体の構造とか内臓の大体の位置が分かっていれば、治れー!と念じて治癒魔法を掛けるだけで治ってくれるんだから。

 初見の教師二人は、俺の治療速度に声も無く驚いているが、構わず次々治していく。

 重傷者の治療が終わるのにそれほど時間は掛からなかった。

 ちょっと休憩したいと言うと、笑顔で了承してくれて、椅子まで用意してくれた。

 俺のバリアは基本、どんな種類のバリアでも反撃効果が有るので、バリアの外から攻撃しても、同じ強さで反撃するので、バリアの外の魔物は、何もしなくても傷付いて行く。

 周りを見ると、アールスハインは単身で狼魔物をバッタバッタと倒しており、ディーグリーは複数の令嬢を守りながら、バリアの方に向かって来る。

 ユーグラムは少し離れた場所にバリアを張って、離れた場所から向かってくる狼魔物を鉄パイプみたいな武器から魔法を放って倒している。

 時間にして約1時間後、狼魔物の殲滅が済んだ。

 多くの男子生徒と冒険者が雄叫びをあげ、令嬢達が安心したのか座り込む。

 軽傷者の治療も終わり、狼魔物の死骸を回収したら、査定を始める。

 急な襲撃だったので、狼魔物の討伐数等は、冒険者や教師の見立てで、活躍に応じて大雑把に班ごとにポイントに反映されるらしい。

 アールスハイン達に合流して、査定の列に並ぶ。

 査定を済ませた生徒から、早々に馬車に乗り込み、定員になったらすぐに出発。

 そうしてどんどん人数が少なくなって、俺達の番に。

 次々魔物を出していき、最後にミミックを出すと、周り中が驚きの声をあげた。

 教師に事情を聞かれて答え、査定が済むと馬車に乗り学園へ。

 馬車に乗る全員が疲れて無口になる。

 学園について、支度を整え食堂へ。

 今日は疲れたので、食事が済んだら早々に寝ました。


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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
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ケータさん 毎日レア魔物に会いすぎ(笑)
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