森演習2日目 モフモフをモフモフに!
感想いただきました!
ありがとうございます!
嬉しかったので、本日は二話投稿しときます!
これからもよろしくお願いします。
黒豹は大人しく俺に撫で回されて、全く逃げる様子が無い。
皆も珍しげに眺めて、ディーグリーが撫でようと手を出したら、
グルルルルル
と唸られた。
慌てて手を引っ込めたが、半分乗り上げる様に撫でていた俺は平気らしい。
「助けてくれたのが誰か理解しているとは、利口な獣ですね」
グルルルルル!
感心してユーグラムが言うと、言葉に反応したかの様に、黒豹がユーグラムに唸った。
まるで言葉を否定するようなタイミングで、皆で驚いてしまう。
「今、さ、この子ユーグラムの言葉を否定しなかった?俺の気のせい?」
「俺にもそう見えたが?」
「こりゃーあれだな!ただの獣なんかじゃ無く、妖獣って奴じゃねーの?魔物の特徴は無いし、ただの獣にしては覇気が有りすぎる、目になんつーの?理性がある?ように思う。ケータ様は妖精族だから、仲間意識が湧いたんじゃねーの?」
ニスタさんの言葉に、フスンと鼻を鳴らす黒豹、
「あー、ニスタさん正解っぽい、今の完全に言葉が分かった上での返事じゃん!妖獣って初めて見たけど、んー?呪われてたせいか、強そうだけど大分草臥れて弱ってるね、毛に艶も無いし、体も細いし、妖獣って何食べるんだろう?」
ディーグリーが言いながら、カバンから携帯食料を出して口元に持っていくが、黒豹は顔を背けるだけ、ユーグラムが果物を出しても見向きもしない。
相手が悪いのか?と俺が差し出しても、手を舐めるばかりで、食べようとはしない。
「ちみは、にゃにたべましゅかー?(君は、何食べますかー?)」
俺の質問に、黒豹は俺の手を舐めるばかり、で、俺は昨日の精霊とのやり取りを思い出すと、掌に魔力を集めて黒豹に差し出す。
俺の小さな掌に乗った魔力の塊を、黒豹はそれは旨そうに舐めた。
「魔力を舐めた!妖獣って妖精と同じって事?でも実体があるしねー?」
「あー、何だっけなー、何か昔聞いた覚えがあんだけど、思い出せねーなー?」
「それは妖獣に関する事ですか?」
「んー、確か、妖獣ってのは、妖精を守るために存在しているから、実体があるし、妖精とは違って、魔力だけじゃ無く、何か他の物も食うとか?そのために妖精が、妖獣の捕ってきた獲物を何かするとか?」
「………………つまり妖精と妖獣は共生関係にあると言う事でしょうか?それならばもしかしたら、妖精は妖獣の捕ってきた獲物を浄化した、とかでしょうか?」
「おう!それそれ!浄化だ浄化!浄化してない獲物を食い続けると、力が弱ってその内ただの獣になるって聞いた気がする!」
グアウ!
と黒豹が、怒ったような、不満だけど正解みたいな顔で吠える。
器用な獣である。
ユーグラムよりも表情が豊かだ。
試しにマジックバッグの中のウサギ魔物を取りだし、浄化してから黒豹の前に置き、
「どーじょー」
と促すと、俺を一舐めした黒豹は、嬉々としてウサギ魔物を食べた。
あっと言う間に食べきって、こちらを窺うので、マジックバッグからキツネ魔物を出し、浄化してから差し出す、これもあっと言う間に食べきって、こっちを見るので、更に三匹ずつウサギ魔物とキツネ魔物を出し、1度に浄化して差し出すと、凄い勢いで骨も残さず食べきって、満足そうに俺の顔を一舐めした。
不思議と食後の血生臭さは無かった。
腹が満たされた黒豹は、俺達から少し離れると、体を伸ばす様に大きく呼吸をし、全身に魔力を流したのか、一瞬光り、こちらに近付いてきた時には、見違える様に毛艶が良くなり、顔もどこか凛々しく見えた。
俺の前で横になると、触って良いよ!とばかりに見て来るので、遠慮せず撫で繰り回した。
素晴らしい毛艶になった黒豹は、触り心地抜群で、サラサラツヤツヤの毛並みは、いつまでも触っていたくなるものだった。
随分のんびりしてしまったが、そろそろ時間なので、移動しないといけない。
名残惜しいが、別れの時間だ。
「じゃーねー、こんどはきをちゅててねー!(じゃーねー、今度は気をつけてねー!)」
と黒豹から離れて手を振るが、黒豹は俺が離れた分近付いて来る。
不思議に思って首を傾げれば、
「もしかしてー、妖獣君ケータ様に付いてきたいんじゃない?」
ディーグリーの言葉に同意するように、ガウッ!と吠える黒豹。
俺は居候の身なので、アールスハインを見る。
「連れて行くのは構わないんだが……この大きさだと学園の許可が下りるかどうか?」
「そうですね、魔物の従魔を持つものはいますが、妖獣と言うのは珍しいですし、従魔契約をしている訳では無いので、大型の妖獣に許可は難しいかも知れません。」
ユーグラムは名ばかりとは言え、生徒会の副会長なので、学則には詳しいらしく、困ったように教えてくれた。
言葉を理解出来るらしい黒豹は、学則が何かは分からないが、このままでは連れて行ってもらえない事は理解したらしく、俺達から少し離れると、再び全身に魔力を流し先程よりも強く光ると、次に見えた姿は、可愛らしい子猫の姿だった。
にゃー?
と伺う様に俺の足にすり寄る子猫。
無意識に抱き上げ頬擦りしながら、アールスハインとユーグラムを見ると、可愛いは正義のユーグラムは、口を押さえフルフル震えていて、アールスハインは困ったように苦笑する。
「この大きさならば問題は有りませんね!ええ!これならば多少のことは捩じ伏せて、許可をもぎ取って見せますよ!」
ユーグラムに火がついてしまったので、何とかなりそうである。
黒豹改め、黒猫ごと俺を抱っこしたアールスハインが、
「ケータの護衛にもなるし、ちゃんと面倒見られるな?」
と聞いてきたので、うんうん頷くと、黒猫は不満そうにフスン!と鼻息を吐いた。
黒豹とは違い、黒猫の姿でその仕種は、生意気そうで、実に可愛らしかった。
拠点に向かう道中は、俺と黒猫が付近の魔物を狩り尽くし、アールスハイン等を呆れさせた。
しょうがないじゃない!黒猫の食料を確保しないといけないんだから!と言えば、従魔用の食料は学園の許可が有れば、有料だが支給されるらしい。
まぁ、今捕まえてマジックバッグに入れとけば、タダなので狩りは止めないけどね!
拠点につくと、昨日よりも多くの生徒が既に到着していて、俺達の班が最後だった。
インテリヤクザな担任が、俺の抱く黒猫を見て一瞬目を見張ったが、特に何も言わずに、獲物の査定場所に顎をしゃくった。
査定場所に行くと、昨日と同じ査定員の人がいて、俺達を見ると腕捲りをし、気合のためかちょっと鼻息を荒くした。
まずはアールスハインが、次々魔物を出し、特に大物にも会わなかったので、昨日とは違いスムーズに査定を終了した。
それでも他の班よりは多くの魔物を出したらしく、後ろの方がざわついたけど!
次に俺の番。
俺が次々出して行く虫魔物に、ユーグラムが後退りしているが、査定員の人はとても嬉しそうな様子で査定していく。
虫魔物は、浄化をしても黒猫があまり食べたがらなかったので全部出すと、その数は160にもなった。
山を作る虫魔物に、ユーグラムが大分離れた場所に行ってしまったが、査定員の人はメチャメチャ喜んでいた。
以上で今日の演習は終了となり、後は馬車に乗って学園に帰るだけ。
馬車の中では、天井からぶら下がるブランコに、俺と子猫が乗っている事で、ユーグラムが幻の花を飛ばし、令嬢達がキャッキャして、いつもより賑やかな帰路になった。
学園につくと、まずは学園長の元へ。黒猫の許可を貰うためだ。
ユーグラムとなぜかディーグリーも一緒に学園長室へ。
学園長はすぐに会ってくれて、黒猫を抱く俺を見た秘書さんが、又もやうちの子に!って大騒ぎして追い出されたりした。
「…………成る程、妖獣ですか、確かに彼からは強い魔力を感じます。理性の有る目をしていますし、無意味に生徒を襲う様な危険は無いでしょう。良いでしょう学園の滞在を許可します。しかしケータ殿またはアールスハイン王子かその侍従から離れ、単独での行動は控える様に、お互いにトラブルは避けたいでしょうからね」
「分かりました。許可して頂きありがとうございます」
「ありーとーごじゃましゅ!」
アールスハインとお礼を言って、学園長室を出る。
「無事許可が下りて良かったですね!」
ユーグラムが、自分の方が嬉しそうに言って来るので、
「ホントだよね~、許可が下りなかったら、ユーグラム何するか分かんなかったもんね~!」
ちょっと本気での心配を混ぜて、ディーグリーがからかえば、
「……………そんな事はしませんよ?」
と意味深な間で答える。
寮の前で着替えて食堂で集合の約束をして、一旦別れた。
部屋に戻ると、シェルが俺の抱く黒猫に目を輝かせ、事情を話すと、早速従魔用の食事の手配をしてくる!と言って、止める間も無く出て行った。
どうやらシェルは動物か、もしくは猫好きらしい。
着替えは既に用意されていたので、アールスハインと風呂に入る。
黒猫も嫌がりもせずに一緒に風呂場に入って来たので、ワッシャワッシャと洗ったら、黒い泡が出たので、3回も洗い直した。
風呂上がりに、ドライヤーの魔法で乾かすと、フワフワサラサラツヤツヤになった!シェルが触りたそうに手をワキワキしていたが、黒猫は唸るばかりで一切触らせ無かった。
お互いにもう少し慣れが必要だね。
従魔は普通に食堂で主人とご飯を食べて良いらしいので、黒猫を抱いて更に黒猫ごと俺を抱っこしたアールスハインとシェルと一緒に食堂ヘ。




