生活魔法って基礎じゃないの?
またまた訓練所に参りました。
俺が、生活魔法と名付けた魔法を皆習いたいそうです。
ちゃっかりテイルスミヤ長官までいます。
インテリヤクザな担任は、興味無さそうだったのに、洗浄の魔法を掛けると、ちょっと興味をもったらしい。
テイルスミヤ長官は、料理の魔法しか知らなかったので、洗浄の魔法をかけたら物凄く驚いていた。
では、魔法を教えていきます。
と言っても、それほど難しい事は無く、ただ水の玉を風魔法でかき混ぜて、マイクロバブルを作り、それを頭から被るだけ、と解説すると、全員の呆れ顔。
まずテイルスミヤ長官が、
「いいですかケータ様、まず、ケータ様のように二つの魔法を同時に展開出来る者は、この国でも10人に充たないのですよ!」
「しょーなのー?」
「そうなんです!二つの魔法を同時展開し、それを混合し発動するのが上位魔法と呼ばれるものなんです!」
「みじゅまほーの、おんどかえりゅのはー、ねちゅまほーでしょ?」
「?熱魔法?聞いたことも無いですが………確かにそう言われると、水の温度を変えるのは熱魔法と言われてもおかしくは………………」
ブツブツし出した。
テイルスミヤ長官が、一人の世界に旅立ってしまったので、アールスハインの所に戻り、
「やってみりゅ?」
「テイルスミヤ長官は無理だと言ったが、まぁやるだけやってみるか!」
「しょーしょー、かじぇのまほーじゃなくても、みじゅのたまをぶりゅぶりゅしゅりぇばあわあわなるとももうよ」
実際に水の玉を出して、掌の上でブルブルと振動を与える。
暫く続けると、水の玉が白っぽくなる。
ほら、と差し出せば、皆して指を突っ込んで納得した様子。
早速それぞれが水の玉を出して、練習し出した。
その場に留めて振動させるってのが難しいのか、インテリヤクザな担任が水の玉を吹っ飛ばし、テイルスミヤ長官に直撃した。
その事で一人旅から帰って来たテイルスミヤ長官が、皆の様子を見て納得し、自分も練習し出した。
流石に魔法庁長官、それほど時間を掛けずに完成させたので、続けてドライヤーの魔法を教えといた。
ユーグラム、シェル、アールスハイン、ディーグリーの順に順調に完成させていく。
ディーグリーは、水の温度を上げるのを忘れて、冷水を被り涙目になったが。
ドライヤーの魔法はそれほど難しくないので、皆無事完成させた。
インテリヤクザな担任は、何度も何度も水の玉を吹っ飛ばしては、テイルスミヤ長官に呆れた溜め息を吐かれていた。
シェルとテイルスミヤ長官は、料理の魔法を!って迫ってきたけど、料理の魔法こそ火とバリアと風の魔法を使うよ?って言ったら、考え込んでしまった。
ユーグラムがどんな魔法かを聞いてきたので、バリアを器や鍋として、火魔法で料理すると説明した。
ディーグリーが実際に見たいと言った途端、シェルがプリンの材料を俺に差し出してきた。
しかも午前中の3倍の材料有りますけど?
テイルスミヤ長官も、凄く期待した目で見てきた。
君達食べたいだけでしょ!
作りましたよ。
巨大なバリアボウルで、午前中作ってて思ったんだけど、何も火魔法使わなくても、水魔法で最初から水を熱湯にしとけば、火魔法いらないじゃん、て。
巨大な深皿を出して、バリアの蒸し器に突っ込んで、出来上がったのは、巨大なプリン。
深さ10センチ、直径50センチの巨大なプリン。
何だろ?とてもシュール。
シェルが全員にスプーンを配り、一斉にスプーンを突っ込もうとするのをバリアで阻止!
非難の目を向ける皆を片手を上げて制す。
「こりぇはー、ひやしゅともーっとおいちくなりゅよ」
と言って、バリアごと冷やすイメージ!
フワッとバリアが光って完成。
蓋のバリアを解除して、スプーンで一掬い、んまーーい!
さぁ皆お食べ!とにっこり笑ってやれば、我先にスプーンを突っ込む皆。
シェルとテイルスミヤ長官は、午前中も食べたのに、冷した事でまた味わいが変わった事に衝撃を受けているのか、スプーンをくわえたまま固まり、他のメンバーも同様に固まっている。
この隙に、多目の一人分をバリアで作った小皿に取り分けて、この場からちょっと離れる。
ハッと我を取り戻したのは全員ほぼ同時、そこからは無言の闘いが繰り広げられた。
6人のガタイの良い男が寄り集まって、無言で争う様はとてもむさ苦しい。
普段、結構どころかかなり人気の男子達なのに、訓練所にいる令嬢達がドン引きして、遠巻きにヒソヒソやっているが、ヒソヒソされている本人達は、全く気付かずにプリンに夢中になっている。
俺が自分の分を食べ終わるのと同時位にあの巨大プリンを完食した男達は、それは気合い充分に、料理魔法の練習に取り掛かった。
インテリヤクザな担任までも、今までの苦戦振りは何だったんだ?と聞きたくなる位簡単に、洗浄魔法とドライヤーの魔法を習得し、皆に混じって料理魔法を練習し出した。
取り敢えず、水の温度を自由に変えられて、それを一時間は維持出来ないと、料理魔法としては不便なので練習。
それが出来たら、水の温度を保ちながら、バリアを張る練習。
最後に水の温度を変えながら、バリアを自分のイメージ通りの形に造る練習。
それらを全員が、普段見せない真剣さで練習に励んだ。
テイルスミヤ長官は、水の温度調節とバリアの同時発動は、難なくこなせたけど、バリアの形をイメージ通りに造るのに大分苦戦した。
普段料理なんてしないので、今一要領が分からないらしい。
どうしても、さっき俺が作ったプリンの巨大深皿をイメージしてしまうらしい。
そんな量のプリンを毎回作ってたら、速攻糖尿になりそうで不安である。
少しずつ食べて、残りはマジックバッグに入れておけば良いが、テイルスミヤ長官の勢いを見てると、作った側から全部食い尽くすような危険性を感じる。
まぁそれは、気合い充分に練習する全員に言えるのだが。
気合いは充分でも、中々に難易度の高い魔法だったのか、完全に習得出来た者はおらず、テイルスミヤ長官が後はバリアの形だけ。
ユーグラムも水の温度調節とバリアを同時発動に何度か成功。
シェルとアールスハインはバリアを張ったまま温度調節が難しいのか、熱湯にしては水の玉を弾けさせていた。
ディーグリーは同時発動に苦戦中。
インテリヤクザな担任は水の温度調節に苦戦中。
鍋を特注すれば、簡単に火魔法だけで作れるけど、と提案してみたけど、全員に却下された。
魔法以外で作るのは、何だか負けた気がするらしい。
意外に皆負けず嫌いだった。
習得はまだだけど、それなりに練習の成果を出した所で本日は終了。
教師二人以外のメンバーで、食堂へ向かいました。
心なしか皆いつもよりお疲れのご様子。
若干いつもより時間を掛けて到着した食堂は、恒例の二股女劇場が繰り広げられていたが、今日は出直す気力も無いのか、こそっと隅の席に移動して、さっさとメニューを注文してた。
しょうがないので、給仕の人以外には見えにくくなるバリアを張ってあげた。
ユーグラムが感心してバリアの説明を求めたので、説明したら、普段から頻繁に魔法を使っているから、上達が速いのだと更に感心された。
「ケータ様ったら、簡単に魔法使い過ぎー!」
「にゃんできゅーにしゃまちゅけた?」
「尊敬の表れです!ちょっと自分の魔法の概念を壊された感じなんで!」
「おーげしゃー」
「いやいやいや!本当だから!侮ってた訳じゃ無いけど、その可愛い見た目に騙されただけだから!」
「みんにゃ、むじゅかちくかんがえしゅぎとももうよー」
「?どう言う事です?」
「みんにゃ、みじゅのたまのおんどかえれるでしょー?」
「はい、それ位は幼年学園の生徒でも出来る者はいますからね」
「みじゅのたまはみじゅまほーで、おんどかえりゅのはねちゅまほーとももうの、どうじはちゅどーできてるねー」
「……………熱魔法と言うのは聞いたことがありませんが、テイルスミヤ先生にも同じ事を言ってましたね」
「まほーはいめーじでしょ?みじゅがこおりゅのもー、ふっとーしゅりゅのもー、みんなみたこちょありゅからでちたでしょー?」
「確かに、幼い頃は水魔法、熱魔法等と区別せずに習いましたからね」
「おなじとももうよー、どらいやーもあったかいかじぇだしゅでしょー?」
「ああ、確かに!風魔法と熱魔法を同時に使っていると思えば、同時発動ですね!」
「えー?じゃあ俺達って、子供の頃から同時発動出来てたってことー?」
「しょーしょー」
「難しく考えない…………鍋の中で沸騰するお湯を想像…………」
ディーグリーが、俺の言葉で何を思ったか、テーブルの上にバリアで作った鍋を出し、その中に沸騰したお湯を入れた。
グラグラと沸き立つお湯は、そのままの温度を保っている。
「………………これって、出来たって事で良いの?」
「しょーしょー」
「こ、こんな簡単に…………」
ユーグラムが落ち込んだ。
アールスハインとシェルも、ディーグリー同様に成功した。
ユーグラムが更に落ち込んだ。
食後、試しにユーグラムがやってみたら、無事成功したが、ちょっと悔しそうだった。
以上で、今日は終了です。




