海辺の町
誤字報告、感想をありがとうございます!
一番最初にその病が発症したのは、海辺にある小さな町だった。
漁師である父親が熱を出した次の日には二人の子供、その次の日には妻が順に熱を出し、それを心配した近所の者が食事を運んだりと世話をして熱を出し。
隣近所の者が熱で寝込む頃には、最初に発症した漁師の父親は身体中に緑色の発疹が出来膿を出す始末。
その膿が皮膚を爛れさせ、酷い痒みとなって身体中を掻きむしる様は常軌を逸したように見えたと言う。
発疹から出た膿に触れると感染する、と当初は考えられていたが、よくよく調べてみると発疹が出る前から感染は広がっていて、軽い痺れが十日程続いた後に、発熱している者が多く居た事が判明。
今は一人でも発症した者が居る町自体を封鎖して食料だけを運び入れ、教会の治癒魔法とバリアの使えるものだけが看病をしているようだ。
そんな話を聴きながら現場に到着してみると、そこは凄惨な状況だった。
元々がそれ程裕福な町でもなかったのか、病のせいでそうなったのかは分からないが、広場に布と支柱だけのテントが張られ、筵の上に多数の患者が横たえられ、その全員が体中緑色の発疹に覆われ体を掻きむしっては痛みにもがいている。
臭いも酷い。生きたまま腐っているように見える。
事前に説明を受けた神官には決してバリアを解かないで下さい!と言われた意味がわかった。
たぶん皆の目には見えてないけど、俺の目には黒い霧が町を覆っているように見える。
この霧に触れると感染するのだろう。
それは患者の体からも滲み出ていて、肌を透けて血管に入り込んでいるように見える。
久々に鑑定で見てみたら、❮寄生魔液虫:液体型魔虫、魔力にひかれて血に潜るよ!❯とか出た。
さらに凝視すると、❮強い魔力を餌にすれば釣れるよ!❯とも書いてある。
相変わらず微妙な解説だが役にはたちそう。
何の魔法も込めずに魔力を玉にして、近くに居る患者の体に近付けると皮膚がビクビク震えて、膿の出る傷口からビチャッと液体が飛び出してきた。
赤黒い液体が魔力玉に引っ付いてニュルニュルしてる。とても気持ち悪い。
でも液体の抜けた患者さんは呼吸が穏やかになってる。
魔力玉の魔力を吸い尽くした液体魔虫はまた患者の体に戻ろうとボタボタ垂れるので、燃やしてみた。物凄く臭かった!患者さんの膿より臭かった!患者さん達に微妙に距離を取られた!神官さんに怒られた!
魔力玉ではすぐに食い尽くされて他へ行ってしまうようなので、前にダンジョンで手に入れた魔物用の餌を作って、そこに魔力を込めてみるテスト。
魔物の餌は薬師ギルドの人が興味津々で手伝ってくれました。
薬師ギルドの人達は、原因が液体魔虫と教えたら、何故か凄く悔しがってた。
理由を聞いたら一番最初に候補に上がったものの、以前に出た液体魔虫の症状とは違うので、早々に却下されたそうだ。
もう少し検証するべきだった!とぼやいてた。
大量に餌を作り、そこに魔力を込めて団子状に丸めて患者の近くに置いてみる。
面白いように傷口から飛び出してくる液体魔虫。
それを長いトングのような器具で集めて、さてどうしよう?燃やすと臭いので水に沈めたら死ぬ?液体だから凍らす?と色々試した。
液体魔虫が抜けた患者さんには治癒魔法が効くので、神官さん達も手伝ってくれる。
みるみる元気になる患者さん達。
そんな患者さん達に、治癒魔法が使えない神官さん達が炊き出しを配って、治っていく人がどんどん増えてく。
二ヶ月近く苦しんでいた人も多いので、皆飢えてヒョロヒョロだけど、目には輝きが戻ってるし、血色も良くなってるしご飯も食べられるので一安心。
まだ皮膚表面は緑色してるけど、と思ったら、比較的元気そうな若者が、体がガビガビなのに耐えられず海に突っ込んでって体を洗ったら、不思議なことに緑色が消えました!ただ、物凄く傷にしみたらしくうめいてたけど!
水で洗っても落ちなかったのに海水だと落ちた不思議。
取り敢えず町の人は全員が液体魔虫が抜けたので、良しとした。
あ、液体魔虫は凍らせても生き残ってたけど、雷魔法一発で死にました!
駆除方法も分かったので、当座の食料だけ置いて次の町に行きます!
薬師ギルドの人達は、調合とか実験とかに慣れているので、餌作りもお手の物。材料も安価な素材だし、俺のマジックバッグに大量に入ってるので、ドンドンドンドン作ってくれる。
何故か作った餌を自分で試食してみる人が続出。
魔物餌はラピットと言う突然変異の兎魔物の膀胱とフロックと言うカエル魔物の唾液と苦渋草と言う苦渋い草を混ぜたような味がするそうです。
え?どれか一つでも食べた事あるの?って聞いたら、薬に使う素材は一度は口にするのが薬師の矜持です!とかキリッ!とした顔で言われた。
うん、まあ頑張れ!俺は絶対に食わないけどな!
薬師の人達が身悶えながら作ってくれた餌に魔力を込めて団子にして患者の近くに置いて、暫くしたら回収。水瓶に沈めて雷魔法でズドンと一発駆除。物資を置いて次へ。
薬師五人と俺とユーグラムで次々と町や集落を回る。
治癒魔法とか炊き出しは教会からの神官さんに丸投げ。
俺は荷物を運ぶのと餌に魔力を込める係。
ユーグラムは最後の雷魔法の係。
我がペット達はルクス以外は戦場へ。アールスハイン達の方へ行きました。
我がペット達は意外と好戦的。
魔物と間違われないように赤いピカピカ光る魔道具のバンダナを巻いています。
俺にも同じように赤いバンダナを巻かれました!俺のは光らないけどな!
疫病と思われた液体魔虫の被害にあった町や集落は全部で三十四箇所。
馬車移動なので全部回るのに十日もかかった。
幌馬車の荷台で薬師さん達が餌を作ると言う時短もしたけど、馬車の速度は変わらないので時間がかかった。
後から考えてみれば、作ってもらった餌を俺とユーグラムが手分けして飛んで配ればもっと早くすんだのにね?俺も多少場の雰囲気に呑まれてたのかもね、とちょっと反省した。
帰りの馬車では、薬師さん達に餌のレシピをどこで手に入れたのかを聞かれたり、他に役立ちそうなレシピはないのか聞かれて、消臭剤のレシピを教えて大量に作ってみたり。
途中の町で散布して臭いが消えるのを確認したりした。
疫病として封鎖された町は回り終えたので、最初の町に戻ってみたら、皆さんヒョロヒョロなりに立って歩いて仕事してた。
拝まれた。
今度は俺だけでなく、薬師さん達やユーグラムも拝まれてるのでまあ気にしない!
凄くお礼も言われて、落ち着いたところで薬師さん達が話を聞いたら、最初に発症した漁師が言うには、海に変な虫が浮いてたそうで、魔物と思って銛で攻撃したら液体をかけられたそうな。
それ以外は心当たりはないらしい。
そしてその浮いてた虫はどうなったのかは確認してないそうです。
形状を聞いてみたら、生肉色の団子虫風。
心当たりがある気がするね?
もし思ってた団子虫なら、死んではいないだろうね?無駄に頑丈だから。
まあ、もし今度見かけても攻撃しないように言い聞かせてお城に戻りました。
お城に戻ったら今度は報告。
と思ったら王様とイングリード、将軍さんは居なくて、宰相さんと何とか大臣とか言う偉い人達が集まる前で原因と解決策と対処方法の説明。
まだもうちょっと支援は必要だろうけど、無事解決しました!と報告。
沢山お礼を言われた。
肉色の団子虫の話で宰相さんの顔が大変微妙になった。
戦場の方の状況を聞くと、魔物の数が尋常でないらしい。
まだ辛うじて国境は越えられてないけど、それも時間の問題かもって。
王様とイングリード、将軍さんは現地に向かってるそうです。
ササナスラ王国に潜伏している暗部の報告では、今もまだ魔物は続々とダンジョンから溢れ続けていて、段々獣型の魔物も増えてるとか。
ササナスラ王国の巨大ダンジョンの深層階には獣型の魔物が多く出るらしいので、強さも増していそう。
ササナスラの王城に潜り込んでる暗部の報告では、ササナスラ王国国王もここまで大量に魔物が溢れるとは考えてなかったらしく、慌てている様子だとか。
ササナスラ王国の町や街にも相当な被害が出ているとか。
そんじゃまあ、お手伝いに行きますかね!
ちったいからの流れで、他の作品も読んで下さる方がいて、その作品の誤字報告も続々と。
エンドレス誤字修正に目が死んでおります!
反省もしております!
頑張ります!




