キノコの………里?
誤字報告、感想をありがとうございます。
おはようございます。
天気は晴れ。
砂浜で朝御飯を食べたら荷物をしまって森に突入。
ドワーフの街からは、テンション上がって幌馬車で飛んで来たけど、冒険者らしくこの先は歩いて森を踏破しようと話し合った。
人の通らない鬱蒼とした森は暗くて湿気が多くて、足元もぬかるんでたり滑ったりで大変歩き辛い。
そして見たこともない虫が大量に出てきたり、見たこともない魔物が突然襲ってきたり。
足場が悪い中で戦うのは困難で、皆はちょいちょい怪我してる。
そしてユーグラムが暴走しがち。
虫を見て条件反射で即攻撃、はしなくなったけど、ほんの少しだけ我慢出来るようになったけど!沢山の虫がまとまってウゴウゴしてるのを見ると、問答無用で攻撃します。
そしてその後始末が大変。
虫魔物も生き残る為に逃げようとして縦横無尽に飛び回るものだから、火魔法なんか放った時は大変だった!
全体をバリアで覆おうとしても、逃げだしたり飛びだしたりで全部を一度には無理だし、その前に消火もしなきゃだし。
助とアールスハインはユーグラムを羽交締めして押さえ、ディーグリーとペット達が飛び出した虫を狩る。
俺がバリアと消火。
それでも森の中では多少の配慮をしていたのか、川辺では虫柱、小さい虫がトルネードしてるのを見て無言のまま火を放ち、燃えにくいもんだからさらに火力を足し、終いに火災旋風か?!ってくらいの火の竜巻を起こしたり。
ギャーギャーワーワーしながら騒がしく森を歩いていたら、山の斜面に着きました。
登りになってるな~とは思ったけど、エルフの住んでる山とは別の、もっと低い山だったらしく、森に埋もれて分かんなかった。
登りながら進むと小さな川があり、虫を警戒しながら水の入れ替えをして、ふと上流を見ると、赤や黄色や青の森の中では見かけない色鮮やかな色彩を発見。
まだ遠くて何なのか分からないので近寄ってみることに。
山の中の川辺なのでとても歩きにくいけど、見通しは良い。
暫く歩くと、原色の何かの正体がハッキリと見えてくる。
それは燦々と輝く太陽の下、あり得ない程鮮やかな色彩の巨大キノコの繁殖地だった。
目に痛いほどの原色のキノコ。
それが所狭しと生い茂り、三メートル程の高さとなっている。
そしてその巨大キノコの間を忙しなく動き回る小さな人達。
「きのこのしゃと?」
「山じゃねーのがおしいな!」
「ケータよりちったい人はじめて見た」
「なに族なんだろうな?見たことねー種族っぽい」
「しらゆき姫の小人っぽい」
「ああ、確かに。あの帽子も童話に出てきそうな帽子だな?」
助と話しながら近付いて行くと、こちらに気付いたらしい小人が甲高い声で叫んだと思ったら、里に居た小人全員が、カサササササッと一斉に動きだし姿を消した。
「え?はやっ!」
ディーグリーの呟いた通り目にも止まらない速さで姿が見えなくなった小人達。
「あれは幻獣の町で微かに見えたリトルマンではないでしょうか?」
「ああ!無理に捕まえると驚いて死んじゃうって言う!あ~、じゃあ交流は無理にしない方が良いかな?」
「そうだな。無闇に驚かせても悪いしな」
と言うことで残念ながらキノコの里はスルーすることになった。
のだけど、なんか足元を覆う勢いで、ちっさい動物がワラワラ集まってきて囲まれた。
一瞬虫かと条件反射で魔法を放とうとしたユーグラムが固まって、よく見てみたら、フワフワモコモコの小動物がワラワラ寄ってきてた。
アールスハインの掌サイズの小動物は、子犬だったり小兎だったり子猫だったり、ハムスターもリスも鼠も、狸に狐も居る。
その全員が円らな瞳でこっちを見てる。
え?なにこれ?可愛いけど多いよ?
下手に動いたら踏んでしまいそうで身動きが出来ないでいると、カサササササと音がした後に、五人のリトルマンが身を寄せ合いながら、
「どど、ど、動物達をかえっ、返して欲しいもん!」
勇気を振り絞って発言したんだろうけど、
「ええ~と、急に囲まれたんだけど、連れていってくれる?俺達はここから動かないし、君達の里にも近寄らないからさ」
ディーグリーが何時もより優しい声で言ったのに、言葉を発する度にビクッビクッと震えて小さく飛び上がる。
こっちは皆して害は無いですよ~、と両手を上げてるんだけどね?
そんな俺達の態度を見て、恐る恐る近寄ってきたリトルマン達は、自分達の近くに居る小動物を抱っこしようと手を伸ばすと、小動物は嫌がるように抗議の声をあげて、より俺達側へ集まってくる。
これは何が起きてるんですかね?
拒否られたリトルマン達は泣きそうな顔してるし。
俺達が苛めてるみたいに見えるんじゃない?
微妙な空気の中、突然俺達とリトルマン達の間に立ち、小動物を脇に抱いたプラムが、
「ヤーヤ、ヤヤヤ!ヤヤ!」
何かを訴えてるんだけど、なに言ってるかはさっぱりわからない。
「ぷりゃむ~?」
「ヤヤ!ヤ~ヤヤ、ヤヤ、ヤヤ!」
うん、わかんないけど、小動物を俺に差し出して何かをしろと言ってる様子。
取り敢えず受け取って抱っこしてみる。
フワフワモコモコの兎と猫ですな?
そんな俺の手を掴んだプラムは、頻りに掌を叩く。
そして俺の掌を口元に運び、食べる仕草をして見せる。
「せーまほー玉?」
「ヤヤ!」
うんうん頷かれる。正解のようです。
言われた通りに聖魔法玉を作って見せると、抱っこしてた小動物が両側から身を乗り出して聖魔法玉に鼻先を近付けてくる。
で、円らな瞳で俺を見てくる。
食べるの?
「ど~じょ~」
許可してみたら、聖魔法玉をベロンベロンなめて、暫くなめると今度は腕から逃げ出し、別の小動物が腕に飛び乗ってきた。
新しく乗ってきた小動物も暫くベロンベロンしたら交代。
それを何度か繰り返すと、聖魔法玉が無くなってしまった。
そしたら足元から一斉に切ない鳴き声が!聖魔法玉を新たに作ったら、また代わりばんこに乗ってきた。
集まっていた小動物に一通り聖魔法玉をなめさせたら、小動物達がプルプルと身を震わせ、一斉に里の方へ走っていった。
何をするのかな~?と見てたら、巨大キノコに登って、ゲロ吐いた?
えーー?
ゲロ吐かれたキノコは途端に変色して、自然な色味に変わる。
隠れて様子を窺っていたリトルマン達が踊り出した!
え?何が起きてるの?一連の変化を呆然と見ているしかない俺達の元へ、また小動物達が集まってきて、ミューミューキャンキャン吠えだした。
聖魔法玉を幾つか作って出してやると、ベロンベロンなめてまたキノコに戻っていく。
原色で派手な見た目から茶色や焦茶色に戻っていくキノコ。
その間を踊りながら駆け回るリトルマン達。
えー、誰か説明してくれませんかね?と思ってたら、スキップしながら近寄ってきたリトルマンのお爺ちゃんが、
「ありがとうございますだもん!ありがとうございますだもん!お陰様で集落がよみがえったんだもん!」
だもん?方言ですか?
満面の笑みでお礼を言われた。
理由を聞いてみたら、リトルマンの住処、家でもあるビックマッシュルームは、住み心地が良いのだけど、小動物達に定期的に浄化をして貰わないと毒になるらしく、リトルマンに毒は効かないけど、目立ってしまって魔物や他の種族に狙われてしまうそうで、非常に困っていたんだとか。
普段は自然界にある魔力を取り込んで、ちょっとずつ浄化をしてくれる小動物達は、魔の森自体に元々聖魔力が少なく、ここ最近さらに聖魔力が枯渇してしまって、浄化が間に合わなかったらしい。
説明されてる間も、どんどん色を変えていくキノコ。
あのキノコは食べられない種類で、毒のキノコは暫くたつと枯れて腐るそうです。
腐る前に俺達が到着したことに、物凄く感謝された。
大人でも俺より小さいリトルマンは、ずんぐりむっくりな体型で、まさに童話に出てくる小人って感じ。
その小人さんがキノコの家に住んでるって、本当にメルヘンだね!
前に幻獣の町で聞いた話によれば、リトルマンは森の番人とも呼ばれ、木の伐採や植林を行い森を豊かに保つのが得意なんだとか。
姿を隠すのが得意で、豊かな森にはリトルマンが隠れ住んでいると思われているそうな。
元々は魔の森ではない普通の森に住んでたらしいけど、人間族に追われて魔の森に移り住んだのだとか。
説明してくれたお爺ちゃんは長老だって。
長老のお爺ちゃんが笑顔で話しているので、恐々と寄ってきたリトルマンの子供達が、俺達をツンツンつついてくる。
小動物を抱っこして上目使いにツンツンしてくる子供達に、ユーグラムがほわほわしてる。
俺は人一倍小動物に集られてる、と言うか埋もれてる。
頭の上に乗ってるルクスが抗議するようにピヨー!と鳴いてる。
助とアールスハインは下手に触ると潰してしまうとでも思っているのか、固まって動けないでいる。
ディーグリーは逆にツンツンし返してビクビクさせている。
そんな様子を見て、リトルマンの大人達も集まってきて、次々に木の実や果物、食べられるキノコや薬草などを貢ぎ物のように置いていった。子供達は大人達に回収されていった。
最後に長老のお爺ちゃんが、深々と頭を下げなから、
「ありがとうございましただもん!ありがとうございましただもん!」
と言って去っていった。
ディーグリーに言わせると、希少な薬草や木の実なんかもあって、ホクホク顔になってる。
長老のお爺ちゃんの話では、純度の高い聖魔法玉を取り込んだので、あと数十年は浄化に困らないだろうとの話。
珍しい種族との交流は、呆気なく終わりました。
最後に俺のポッケに潜んでた小動物をルクスが摘み出して放り投げてたけど!




