森と言うか山
明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いいたします!
空飛ぶ幌馬車が完成してお披露目もしたので、それじゃあバイバイ!と出発しようとしたんだけど、おいこら待てやぁ!とドワーフに止められて、昼前なのに酒盛りに突入。
皆で温泉に入って、半裸のままキンキンに冷えたジョッキを渡され、
「「「「「カンパーーイ」」」」」
と唱和してグビグビーーーブハーーーゲブゥーーー。
とゲブゥーーーまでが流れのように全員が同じ行動を取った。
皆にはドワーフエール原液のままだと強すぎるので、三倍くらい薄めてやったけど。
料理のメインはドラゴン肉。
俺達の取り分ではなく、ドワーフ達の御馳走として出されたそれは、巨大な串に肉の塊をぶっ刺して、焚き火で回し焼き、焼けた所から削いで食べていくシュラスコみたいな料理。
ドラゴン肉は噛みごたえのある肉汁たっっっっぷりの肉でした!
一口噛んだだけでジョワッと溢れる肉汁はいったいどこから来るのか?
固さも繊維とかではなく、みっちりと密度が濃い感じの固さなので、俺でも噛みきれない事もない。
ただし味は塩のみなので、美味しいんだけど!物足りない。
なので色々タレを用意しました!
酢コショウ、レモン塩、ネギ塩、おろしポン酢におろし醤油にワサビ醤油、ニンニク醤油ニンニク味噌。
それらを並べてつけて食べての繰り返し。
ドワーフ達も興味を持って一緒にワイワイ食べて味の感想を言い合って、ドワーフ達はニンニク醤油と酢コショウに塩を少しが気に入ったみたい。
コショウと醤油をディーグリーから買ってた。
ニンニクはすぐそばの森に生えてるそうです。
ほぼ二日に渡って酒盛りをして、皆がヘベレケになって気絶するように寝て、昼過ぎに起きてやっと出発。
入ってきた時とは別の出入り口に案内されて、今度こそバイバ~イ!
大勢のドワーフに見送られて地下都市を出ました。
地上へ続く洞窟を抜けるとそこは森。
大陸のどの辺りなのかもわからない森。
仕方ないので上空に上がって周りを確めようと幌馬車を飛ばす。
ディーグリーが興味津々なので、運転の仕方を教えて運転を代わる。
ハンドルとアクセルとブレーキしかないので、運転は自動車よりも簡単。
ただ空も飛ぶので、飛んでる時はブレーキの効き方が違う。
ゆっくりと減速しながら下降してく感じ。
空中停止は出来ないので、急停止は無理です!
上空を旋回するように飛ぶと、正面遠くに三角の山。
右にドラゴンを狩った山。
左に延々森で後ろも森。
見渡す限りには人の住む場所は見えない。
これはどっちに進むのが正解なのかね?
北大陸の最高精度の地図にも、魔の森の情報はないのでさっぱりです。
仕方ないので何故かマジックバッグに入ってた棒を倒して行き先を決めてみる。
別に目的地があるわけでもないので、適当でも良いんじゃない?
倒れた棒は正面にある山を示した。
そんじゃぁレッツゴー!
正面に見える山は、結構な速さで空を飛んでるのに、大きさが変わらなく見える。
実は物凄く遠くにある巨大な山だった?!
まあそれでも一晩休んで翌日の夕方には着いたけど。
うん。山だと思ってたのは、半分が山で半分が世界樹だった。
正確には、山で半分隠れて見えなかったけど、山と同じ大きさの世界樹があった。
そしてその根本にはエルフの街があった。
空から飛んできた俺達は、絶賛攻撃対象として警戒されてます!
ちゃんと入り口から離れた位置に着地して、幌馬車しまってから徒歩で近付いたのに、街の入り口に兵士らしきエルフが大勢いて、こちらに武器を構えたり何時でも魔法が撃てるように準備してたり。
まあこのまま突っ込んでってもバリアがあるので無傷だろうけど、揉め事を起こしに来た訳ではないので、離れた位置で両手を上げて止まります。
ヨボヨボのお爺ちゃんエルフを先頭に、エルフとしては屈強に見える兵士らしき人が何人もで近寄ってきて、目が合う位置で止まると、お爺ちゃんエルフが跪いて泣き出した!
「長老!どうされたのですか?何か攻撃を受けたのですか?!」
驚いてお爺ちゃんエルフの手を引いていたエルフが叫んでる。
「何を言う!お前達には分からないのか?!武器を収めよ!無礼な真似をしてはならん!」
ヨボヨボの体から出たとは信じられない大きな声で、若いエルフ達を叱るお爺ちゃんエルフ。
その間もずっと泣いてる。
困惑頻りの若いエルフ達。
お爺ちゃんエルフと俺達を見比べてる。
埒が明かないので、ラニアンに乗ったまま近付き、お爺ちゃんエルフの前で止まる。
「おおおお、おおう、おおおお」
何言ってるかは分かんないけど、ブルブル震える手をこっちに向けてくるので、握手してやったら、
「ああああ、おおうおおうおお~~う、あうあうあ~~~」
とかさらに泣き出した。
頭撫でてやった。
ひきつけ起こすほど泣いてた。
介護してた若いエルフが、訝しげな顔で俺を凝視してくるので、握手の手を出したら、俺の手を握った途端ブワッと溢れるように涙が出て、やっぱり号泣しだした!
えー?これどうすんの?
兵士っぽいエルフに、今度は手を出さずに目線だけ向けたら、ビクッとされて、暫く見つめ合ってしまった。
「わるいことしないから、まちはいってい~?」
聞いてみたら、号泣してる若い方が頭がもげそうな程ガクンガクン頷いて、手を街の方に向けるので、
「友だちもいっしょでい~?」
一応許可を取ったら、やっぱり泣きながらガクンガクン頷かれた。
お爺ちゃんエルフはもう息も絶え絶え。これ大丈夫?
皆の所へ戻って許可が下りたことを伝えると、刺激しないようにゆっくりと街に向かった。
お爺ちゃんエルフと号泣してる若いエルフは兵士におんぶされて運ばれてた。
街に入っても凄くジロジロ見られてる。
そして年配に見えるエルフに号泣される。
ラニアンを見て泣いて俺を見て泣いて、俺の頭の上のルクスを見ても泣いてる。
エルフの街が凄いザワザワしててドンドンエルフが集まってきた。
でも遠巻きに見られてるだけで誰も近寄ってこないので、宿の場所も聞けやしない。
世界樹と平行するように傾斜のきつい山があって、その山の斜面に街が広がってるんだけど、自然に溶け込んだ幻想的なエルフらしい街なんだけど、これじゃ見学も出来ない。
どうしようね?
集団で見張られてるなか三人のエルフが代表者のように出てきた。
ヒョロッとした体型のエルフらしいエルフの三人。
ちょっと服装が違うのは女の人かな?
引きずりそうな程皆髪が長いのは、髪の毛に魔力が宿ると信じられてるから。
ユーグラムも腰まで髪が長いしね。
俺の目の前まで来たエルフ三人は、その場に跪いて、
「聖獣様、ようこそおいで下さいました!聖獣様がこの街に訪れて下さるのはもう数百年ぶりもの事。我々エルフ一同歓迎致します!」
ハハーーッと地に頭つけて拝む勢いで敬われても。
「ふつ~にしてください。あと宿のばしょおしえて」
「は、は!宿?ははっ!仰せの通りに!」
すぐに立ち上がってササッと腰も低く手振りも交えて案内してくれる代表者のエルフ三人。
動きがピタッとあってる!
ザワザワしてるエルフ達の間がサーーっと開いて、宿への道が開く。
俺達が通った後をゾロゾロと着いてくるエルフ達。
数百年ぶりらしいから聖獣を見たことのないエルフも多いのだろう。
エルフの寿命がいくら長くても、号泣してた長老エルフ爺ちゃんくらいしか、実際に聖獣に会ったことなかったのかも?
会ったこともないのに聖獣ってわかるのも凄いけどね?
宿に到着すると、代表の三人が速やかに宿泊の手続きまでしてくれて、料金を払おうとしたら遠慮されてしまった。
いやいやいや、ここには観光に来ただけなので、料金は普通に払いますよ!
俺の言葉は何か無条件で聞いてしまいそうなので、ディーグリーが説得して普通に支払いをしました。
その辺の交渉はディーグリーに任せればだいたい上手く行く。
料金以上に豪華な部屋に通されて、リビングスペースで代表の三人とお話し合い。
ここには観光しに来た事、無駄に注目を浴びるのは不本意なこと、あと世界樹は聖獣な事も教えといた。
物凄く驚いてた。
チラ見されるのは仕方ないけど、無闇に付きまとったり無駄にお節介を焼かないこと、必要なものは自分でお金を払って買うので、貢いだりしないこと、を約束させた。
ものすっっっごく渋々納得してた。
なので騒がないなら、ってことで、前に南大陸のエルフの森で会った、名前は忘れたけど彫刻家のエルフが試作で作った俺とラニアンの木彫りフィギュアをあげてみた。
捧げ持つように帰っていった。
体は元気なんだけど、精神的に疲れたので、その日は部屋から出ずに過ごしました。
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