雨の理由
誤字報告、感想をありがとうございます。
2巻買ったよ!の声も大変嬉しいです!ありがとうございます!
街から出てそれ程歩かない場所に、他の木とたいして変わらない木がある。
その木をペシペシ叩きながら声を掛けてみる。
「しぇかいじゅ~の爺ちゃん居ますか~?ケータですよ~」
返事が無いのでさらにちょっとだけ魔力を込めてペシペシすると、声が、
『ホォーホォーホォーホォーホォーホォー………………』
鳴いてんね?え?もう一年以上前に再生してからずっと笑ってんのかしら?いくら長生きな聖獣だからって、ずっと笑い続けてんのかしら?
「な、なぁ、これが本当に世界樹なのか?普通の木に見えるけど?」
ずっとペシペシしてたら助に疑われた。
「うん。しぇかいじゅ~。そんで笑ってりゅ」
「笑ってる?何で?」
「たぶん、さいしぇーしてから、ずっと笑ってんね?」
「再生してからって、もう一年以上経ってるよな?」
「うん。でも笑ってりゅ」
「へ、へ~。間違いないなら良いけどよ?」
「しぇかいじゅ~の爺ちゃ~ん、聞こえてますか~?ケータですよ~」
『ホォーホォーホォ?おお、小さき聖獣ではないか!おや?随分と離れた場所におるの?いつの間に移動した?』
「じゅっと移動してるよ!」
『そうであったか?まあ良い。我に何か用か?』
「うん。北たいりくの雨を降らしぇてるせーじゅー知ってりゅ?」
『北大陸とな?ふむ、暫し待て……………………青龍じゃの』
「せーりゅー?どんなせーじゅー?」
『元はリヴァイアサンの突然変異であったが、あまりに酷く暴れまわるもので、以前のフェニックスによって鷲掴まれ宙に放り出されてからは、空への憧れを拗らせて餌も食わずに海から飛び上がるを繰り返し、やがて精霊となり、その後聖獣となった変わり種である。変わり種である故、自らの力が満ちても自力では子孫を残せず、力の暴走を恐れた神によって宝珠を与えられた。その宝珠に力を貯める事で子をなそうとしていたようだが、何と言ったか?帝国とやらの王に騙され、宝珠を奪われてからは延々とあのように嘆いておるの』
「あー」
『帝国の秘術とやらで、青龍本人は宝珠に近付けもせんようだ。哀れなものよ』
「誰もたしゅけてくれないの?」
『他の聖獣とはあまり関わろうとはせんようだ』
「う~ん、でも、ほうじゅ返したらあめやむ?」
『嘆く理由は無くなるだろう』
「分かった~。ありがとうごじゃます」
『助けるのか?』
「あめで困ってる人多いかりゃね」
『ホホ、小さき聖獣は心優しき聖獣だな』
「そ~でもないよ、代わりにやって欲しいことありゅし」
『ホホ、強かなのもまた良し。何かあればまた相談に来るが良い』
「うん、ありがとう!」
世界樹の爺ちゃんから話が聞けたので、皆にも事情を話す。
「へ~、リヴァイアサンから聖獣にってそれもまた凄い話だね~?」
「精霊から聖獣ってのもすげぇよな」
「宝珠ですか、彼の帝国にその様な秘密が有ったとは」
「それを知ってか知らずか、いや、知っているからこそあのような場で争いを続けているのか?」
「そうでしょうね。でなければとうの昔に争いの場を移していても不思議ではないでしょうし」
「ククククク、で、俺らはそのど真ん中に入っていってお宝をかっ攫うわけか!面白れ~じゃね~の!」
「ハハハ、楽しそうだよね~!」
助とディーグリーの言葉に、アールスハインも笑ってるし、ユーグラムも頷いてる。
我がペット達も身震いしたりピョンピョン跳ねたりしてるし。
皆さんとても好戦的。ヤル気満々かよ!
おはようございます。
天気は微妙?この辺は晴れてカラカラだけど、目的地付近は土砂降りだろうと思われ。
世界樹の爺ちゃんに話を聞いて、ヤル気満々の皆と相談をして、ディーグリーの爺ちゃんと婆ちゃんには事情を話さないまま、冒険者の依頼を受けるってことで二日後には出掛けると挨拶。
訓練所に通ってるナタクとヤサクの顔も見られたし。
ちゃんと栄養の有るものを食べて良く寝て適度に体を動かすと、子供ってたった三ヶ月で見違える程逞しくなるのね?
出会った頃のガリガリでヒョロヒョロで小汚なかった姿からは想像も出来ない程の美少年になっててビックリだね!まだまだ線は細いけど、これから何とでもなるだろう。
まあそれはおいといて、では出発です!
「「「行ってきま~す!」」」
ディーグリーと俺と助の声が重なった。
爺ちゃんと婆ちゃんとナタクとヤサクに見送られて家を出た。
街を出て暫くは徒歩。
街から離れ、人の目も無いことを確認してから、徐にボードを取り出し飛び立つ。
群雄割拠している元帝国の首都には上空から突撃します!
地上から近付いても邪魔が多いだろうしね!
ただ上空に居るだろう青龍にはあまり近付きたくないので低空飛行で。
いざ戦場の真上まで来ると、元帝国の首都を中心に、色んな国が王城に辿り着こうと戦いながら進軍してるのが良く見える。
青龍の姿は暗雲に隠れて見えないけど、そこに何か巨大なモノが居ることは分かる。
そして地上が茶色。
うん、土砂降りの中土の道を通ってくればそうなるよね?
敵味方の区別が付かない程皆茶色。
皆さんどうやって敵を見分けてんのかね?
元王城にはまだ誰も辿り着けておらず、その目前で激しく争ってる。
誰が誰か分からないけど、目立って強そうな人は何人か見える。
まあそんな戦場はお構いなしに城に直接突っ込むけれども!
一際高い尖塔の破れた窓から侵入。
ボードに乗ったまま階段を滑るように下りて、城内へ。
百年前に滅びたにしては小綺麗な城の中を飛ぶ。
埃やゴミは多少あるけど倒壊したり床や壁が崩れてたりもしない。
明かりは無いので魔法で光の玉を幾つも作り周りを照らして進む。
倒壊してはいないけど、絵や壺等の調度品も無い。
代わりに所々黒い染みがあるのは血痕ですか?
もうただの汚れにしか見えないけど。
何となく強い魔力を感じるままに飛び続けてると、城の地下深くまで来た。
もう何階分くらい下ったかは忘れた。
凄くダンジョンぽい作りの地下ですね?途中に何個も壊れた罠があったし。作動した罠はバリアのお陰で無傷だし。
そして辿り着いたのは地下の洞窟?
人工的ではなく天然物の鍾乳洞っぽい所。下は水浸し。
何処かから漏れる光を受けて、鍾乳石がぼんやり光る中、奥の奥の方に更に光る何かがあって、その周りをユラ~ユラ~と泳いでる何か。
近付いてみると、手前の所で阻まれた。
これはバリアとは違う、魔道具を使った結界かな?
周りを見てみると水の中に沈んだ魔道具があった。
聖獣の俺の事も弾く結界って中々強力ね?
透明度の高い水なので、バリアごと潜って魔道具をよーーく見てみる。
うん、古代魔道具と言われる類いの物で、中に閉じ込めたものから魔力を供給しながら結界を張り続けているね。
魔道具の知識の無い青龍では破壊出来ないかも?
結界の中央には立派で豪華な台座があって、その上に朽ちた座布団に載せられた光る玉。
どう見てもあれが宝珠で間違いないだろう。
そして天井を突き抜けるように上から魔力が降り注いで宝珠に吸い込まれてるし。
青龍の魔力を取り込んだ宝珠の力で結界が更に強化されとる。
無限ループってヤツだね!
ならどうするか?とても簡単。周りを囲むように配置された六つの魔道具の内、一個でも壊しちゃえば結界は消えるよね!
結界を壊すのは大変でも、魔道具を一個壊すのは簡単。
この結界は害意ある攻撃を通さないための結界なので、悪気無くプスッと刀を刺しても通ってしまう。
証拠に落ちただろう鍾乳石がゴロゴロと結界内に転がってるし。
結界を壊そうとするのは、害意ではなく善意ですよ~、と自分を誤魔化し正当化した気持ちでプスッとね!
カッター型の俺の刀は何の苦もなく魔道具を真っ二つにした。
途端に溢れる様に魔力が鍾乳洞全体に広がる。
百年も前から延々と聖獣の魔力を溜め込み続けた宝珠から漏れる魔力は、人間には毒な程強い。
結界が壊れると同時に皆にバリアを三重に張ったけど、ちょっと吸い込んだみたい。
バリア内でクラクラしてぐったりしてる皆。
仕方無いので宝珠をマジックバッグにしまって、さっさとその場を離れる。
いや、離れようとしたら、水の中に居た何かがサバーーっと出てきて邪魔された!
大きなニョロが居ました。
頻りに周囲を見回して何かを探している様子。
まあ何かって宝珠だろうけど。
巨大で白いニョロは、浮いてる俺に気付くと、吹っ飛ばす勢いで卵型移動魔道具に頬擦りしてきた。
ああうん。青龍の子供だね。
とぐろを巻いてその中央に俺の移動魔道具を抱えて、細長い二股の舌でベロンベロンしてる。
さてこのニョロさんはどうしよう?
今更ですが、キャベンディッシュが、バナナの品種だと知りました。
ワ○ピースの王子キャラは、名付けて投稿したあとに思い出したのに!バナナって!




