砂漠を抜けたよ
10月11日、2巻発売します!よろしくお願いします!
一週間、間違えて本屋さんに行って、並んでない事に落ち込んでたら、日付を間違ってたことに夜になって気付いた。
何とも言えない夜を過ごしました。
予定よりも快調に進んだカウメルは一日早く砂漠を抜けました!
目的地のブリュエンヌ国まではあと半日程走れば着く予定。
カウメルは疲れも見せず快調に走り、ブリュエンヌ国の国境の門近くにある貸しカウメル屋に返却したら、名残を惜しむ様に俺をベロンベロンなめてきた!
ベタベタになった。
貸しカウメル屋のおっさんが物凄く驚いていた。
「坊主、よっぽどカウメルに好かれる質なんだな?こんなにベロンベロンなめられる奴初めて見たよ!」
アッハッハッハッとか笑ってる。
あんまり嬉しくないんだけどね!
あ、馬車は人目につかない所で、俺のマジックバッグにしまっといたよ!
兄弟達があんぐりと口を開けて驚いてたけど、まあいつもの事だね!
そして歩いてディーグリーの爺ちゃんの住む家へ。
爺ちゃんちはそんなに大きくはないけど、丁寧に手入れされてるのが一目でわかる暖かみのある家だった。
ドアのノッカーを叩きながら、
「爺~ちゃ~ん、ディーグリーが来たよ~」
と緩く声を掛けると、家の中からではなく横の庭の方から、
「おう!ディーグリーとは懐かしい!…………?ディーグリーはこんなに婆さん似じゃったか?」
「久しぶり爺ちゃん!俺は昔から婆ちゃんに一番似てるって言われてたよ?」
「そうじゃったかの?孫も十人以上いるとわからんもんだ!アッハッハッハッ」
豪快に笑いながら玄関を開け、家に入れてくれる。
俺達の紹介とかしなくて良いんかね?
お客さんを招くのが好きだとディーグリーに聞いてた通り、応接間には通常よりも大きなソファセットがあって、全員がゆったりと座れた。
「あらあら沢山お客様が来たのね?ん?あら?貴方はディーグリーなの?まあまあ!大きくなって~!」
ほのぼのとした優しそうなお婆ちゃんがお茶を淹れてくれながらディーグリーの顔を見てふふふと笑う。
その顔はディーグリーにそっくりで、成る程血の繋がりが一目で分かるね!
ディーグリーが俺達の紹介をしてくれて、挨拶を交わし、砂漠で拾った兄弟の話に憤って、暫くの間泊めてくれる事になった。
ただ部屋が足りないので、俺と兄弟達は同じ部屋になったけど。
昼過ぎに着いて、夕飯は張り切ったお婆ちゃんが豪華料理を作ってくれたんだけど、うん、国が違うからか使っている香辛料とかは違うけど、この世界特有の料理だよね!
家庭料理なので味は薄めだけど、久しぶりの硬い肉とパンに大変苦戦しました!
あ、病み上がり?の兄弟に硬い肉とパンはダメなので、そこは鶏肉を柔らかく煮たお粥を出しておいたよ!
ディーグリー爺ちゃんが興味津々だったけど、流石に子供の料理を取り上げたりはしない。
そしてディーグリーがすかさず明日は俺が料理をご馳走するよ~!と言って爺ちゃんと婆ちゃんを心配させたり感心させたりしてた。
うん、硬くて臭い肉は食いたくないよね!
その日の夜は、兄弟と三人で風呂に入り同じベッドで寝た。
ペット達は足元でワチャッと寝てたよ。
そして警戒心の強い兄ちゃんが、やっと名前を教えてくれた。
兄ちゃんがナタクで弟君がヤサクだそうです。
おはようございます。
天気は晴れ。
早く起きたのでキッチンに向かうと、ディーグリーが爺ちゃんと何やら言い合っていた。
「おはよ~ございましゅ」
入っていったら、
「ケータちゃん!ここでも肉の処理方法は広めても良いんだよね?」
とか聞いてくるので、
「い~よ~」
軽く答えたら、
「こらこら、そう易々と知識を安売りしてはいかんだろう!」
怒られた。
「やしゅく売って、広めてくりぇれば、いろんな所で、おいし~ものが食べらりぇるでしょ~?」
「そうそう!利益よりも広めることを目的としてるから、バンバン教えて回ってるんだよ~!今ウチでは料理人の育成にも力を入れてるしね~!」
「それほどまでに違うもんかの?」
「これからご馳走するから、楽しみにしててよ~!」
ディーグリーと爺ちゃんは肉屋から届いた肉の処理で揉めてたらしい。
確かに血を抜いて筋を取った肉は、一見無駄に削っている様に見えなくもない。
爺ちゃんは納得はいかないものの、孫の言うことなら、と引き下がっていった。
ディーグリーと並んで朝御飯の準備。
朝からガッツリと肉を食うこの世界の人達って、とても丈夫だよね!
パンは今から作るのは大変だし時間も掛かるので、パンケーキを作ったよ。ベーキングパウダーが無いのでペタッと平べったいパンケーキになったけど、肉とか野菜とかを挟んで食べると旨いよ!
肉は朝なので塩レモンで焼きました!臭みの少ない肉だからこそ出来る調理方法。
肉はリザード系の肉なので、鳥もも肉っぽい味。
あとはサラダとワカメスープ。
俺達には定番のワカメスープだけど、魚介類を食べる習慣の無いこの国の人達でも食べられるかな?
出来上がり近くになると続々と皆も起きてきて、手伝いだした。
既に着席しているお爺ちゃんとお婆ちゃん、ナタクとヤサク兄弟がソワソワしてる。
そして朝食。
今回はナタクヤサク兄弟にも同じメニュー。
うん、爺ちゃんと婆ちゃんが貪り食ってますな!
野菜と肉を挟んだパンケーキを、下品にならない程度に貪り食ってる!
ちゃんと先に言っといたので、ナタクヤサク兄弟は、ゆっくりと良く噛んで食ってる。
食後のお茶を飲みながら、
「っかーーー!ディーグリーめ!こんなに旨いものを作って見せるとは!年甲斐もなく腹がはち切れそうだわい!」
「ふぅ、私もちょっと食べすぎてしまったわ!」
爺ちゃんと婆ちゃんが腹をさすってる。
「確かにのぅ、ケータ殿の言う通りこれが広まれば、色々な場所で色々な味の変化を楽しめるだろうの。旅の楽しみも増えると言うもの!これは是非ともワシも協力せねばなるまい!」
「ええ、ええ!是非ともこの柔らかく臭くないお肉を広めて下さいね!お肉屋さんで仕入れられれば、お料理も楽しくなるもの!」
「まあ、まずはラバー商会の支店で料理人に教えてくるよ~!あと昼には柔らかいパンもご馳走するからね!」
「うふふ、それは楽しみだわ!」
パン種を仕込んだら、ナタクヤサク兄弟との話し合い。
ずっと俺達と旅をするわけにもいかないから、色々と聞いて良いようにしてあげなくちゃね!
話し合いにはこの国の事情に詳しい婆ちゃんも参加してくれた。
何故か婆ちゃんは俺を膝に乗せて撫でまくってるけど。
「そうねぇ、この国は穏やかで犯罪も少ないけれど、周辺国は物騒な場所も多いから、孤児院に入るならこの国にした方が良さそうだけど、貴方達は生まれた国に帰りたい?」
婆ちゃんに聞かれたナタクが、
「家には帰りたいと思うけど、もう家族はバラバラになっちゃったし、もう少し大人になってから、家族を探してやり直せるならやり直したい。………………でも何で俺達の家族がバラバラにされたのか、それが分からない内はまたバラバラにされないかって怖くなる」
「そうね。突然だったのでしょう?ならば何か、誰かが原因でそうなってしまったのかもしれないけれど、それを知るには危険が有るかもしれないわ。それは分かっている?」
「分かってます!奴隷なんて犯罪に関わってるかもしれないことも」
「ならば貴方達は、まず身を守る手段を手に入れなくてはね!」
「身を守る手段?騎士見習いとか?でも奴隷は騎士にはなれないでしょう?」
「ああ、そこは心配すんな!お前らの怪我や病気を治すついでに、ケータがサクッと奴隷契約を解除しちまったから、お前らはもう奴隷じゃね~よ」
助が軽く事実をばらすと、
「あらまあ!そうなの?!奴隷契約ってそんなに簡単に解除出来るものでもないでしょう?ましてや違法な奴隷契約など?あらごめんなさいね」
婆ちゃんが唖然とした顔で俺を見てくる。
「いえ。本当の事ですから」
ナタクも婆ちゃんに答えてはいるけど、俺を凝視してくる。
「ケータは妖精族の突然変異なんで、魔法の威力がおかしいんですよ、聖魔法も得意なんでサクッと解除出来ましたね!」
何故か助がドヤ顔で言ってるし。
「まあそう言うことなら、お爺さんの知り合いに、孤児を集めて剣術と体術を教えている人がいるから、そこへ行ってみる?孤児院では十二歳になると出されてしまうけど、そこなら腕を認められれば一人前になるまで面倒を見て貰えるようだし」
「弟も一緒でも大丈夫ですか?」
「ええ、年齢は立って歩けるなら大丈夫だそうよ」
「弟は足が悪いので、無理かもしれないですね」
ナタクがシュ~ンとして言うのに、
「そりぇも治した」
今度は俺がドヤ顔してみた!
婆ちゃんとナタクが固まった。
「うん!兄ちゃん見て!俺、走れるようになったよ!」
弟のヤサクがソファから飛び降りて回りをタカタカ走って見せる。
「そ、ういえば、普通にあるってた!」
今頃になってナタクが思い出したように呆然と呟く。
そしてダーーっと涙を流し出した!
慌てたヤサクが走りよって抱き付くと、ヒシッと抱き締めて声も無く号泣してる。
「兄ちゃん、俺もう大丈夫だよ!歩けるし走れるし、今度は俺が兄ちゃんおんぶしてあげるからね!」
ヤサクの言葉を聞いて、もう兄ちゃん引き付け起こすほど号泣してる。
ナタクが泣き止むまでお茶を飲みながら待ってたんだけど、なかなか泣き止めなくて、昼食の準備を始めた。
ディーグリーと助が作る横で、婆ちゃんが凄く感心しながら眺めてる。
柔らかい肉と柔らかいパンの味を知って貰うために、ポークソテーとサラダにパンに果物とスープ。
焼き立てパンの匂いって暴力的に食欲をそそるよね!
庭にいた爺ちゃんを呼び寄せる威力だし!
やっと泣き止んで顔を洗ってきたナタクも席に着いて、ヤサクが運ぶのを手伝ってくれて昼食。
爺ちゃんと婆ちゃんの食欲が止まりません!
婆ちゃんそれ、一斤分くらいパン食ってるよね?!大丈夫?後で気持ち悪くならない?!
ちょっと心配になるくらい食ってた爺ちゃんと婆ちゃんでした!
誤字報告、感想をありがとうございます!
感想の返信は全く出来てないんですが、全てありがたく読ませていただいてます。
そしてこっそり頂いたアイデアを参考にさせていただいて出来たシーンもあります。
お?とか、ん?とか思ったシーンは、いただいた感想からかも?ありがとうございます!




