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やっと出国

【書籍発売中】


怒涛の誤字報告と怒涛の感想をありがとうございます!

書籍を読んでからこちらに来て下さる方も居て、大変嬉しい限りです!

ありがとうございます!

 ディーグリーからその日の内に幌馬車が届けられ、三日掛けて魔改造を施して、快適なキャンピングカーを作っていたら、キミッヒ伯爵令嬢の方が大変な事になっていた。


 キミッヒ伯爵令嬢は、教会が運営している治癒院に通い、軽い治癒魔法を使いながら、自分は将来ユーグラムの嫁になって、この教会に勤める事になるから、皆さんとは今から仲良くしておきたいわ!とか言って、王都で人気のお菓子を配り歩いたり、ユーグラムの婚約者だからと触れ回ったり、神官の奥様方のグループに混ざろうとしたり、色々とやらかしてるそうで、流石に教皇倪下も放置出来なくなって、ミルリング国の駐在大使にお手紙を出したそうな。

 内容は当然、貴国の伯爵令嬢が、我が息子との有りもしない婚約話を吹聴している。

 これは貴国の王家と伯爵家もご承知の事か?って事を丁寧な言葉で書いたらしい。

 そしたらその駐在大使は、当然初耳の事に仰天して、まずはその本人であるキミッヒ伯爵令嬢に直接話を聞くことに。


 結果、独りよがりの妄想が炸裂しているだけで、事実では無いことが判明。

 キミッヒ伯爵令嬢本人だけでなく、使用人も含め厳重注意を受けた上に、留学を取り消されたくなければ、今後一切教会への立ち入りを禁止し、二度とユーグラムの婚約者などと吹聴することの無いように使用人にも見張りを命じた。

 この命令に背けば、ミルリング国は教会から見放される事態になりかねないのだぞ!とか脅されたりして、やっと事態を呑み込めた使用人達が平伏して謝罪し、キミッヒ伯爵令嬢の実家である伯爵家にも報告の手紙を出し、学園の寮から一歩も出ない生活を送る、と固く誓ったそうです。


 取り敢えずキミッヒ伯爵令嬢の事は一段落したけど、国を出るのは決まってるので、準備を調えて挨拶をして出発。


 ちなみに、ユーグラムママは、キミッヒ伯爵令嬢の事は全く相手にしなかったそうです。

 何とかして神官の奥様方のグループに混ざろうとしてたキミッヒ伯爵令嬢を一目見て、息子の好みではないと断言し、一切関わろうとしなかったんだとか。

 ユーグラム曰く、教会で一番人を見る目があるのがユーグラムママなのだとか。

 ユーグラムママは神官見習いの面接にもこっそりと参加して、将来駄目になりそうな人を教皇倪下に忠告したりもしてるそうです。

 そのユーグラムママが、キミッヒ伯爵令嬢はユーグラムには合わないと断言してるので、他の奥様方や女性神官達は、温くと言うより同情的に見守っていたのだとか。


 まあ、なにはともあれ問題は片付いたので、出発!

 国内なので久々にボードを飛ばしてヒャッハーっと港町までかっ飛ばす。

 皆さんとても楽しそうですね?

 無駄に回転したりローリングしたり、落ちないとは言えはしゃぎすぎじゃない?


 港町までは馬車なら三日の距離だが、直線をかっ飛ばして行けば半日で着く。

 ただしここからが運と天候と交渉次第で何時船に乗れるかが変わってくる。


 この世界に正確な地図と言うのは存在せず、国ごととか、冒険者ギルド、商業ギルドごととかに独自の地図を作ってたりはするのだが、それは機密扱いなので一般の人が見ることは出来ない。

 旅をしながら冒険や行商を続ける者もいるので、ギルドで買える大雑把な地図に、自分で色々書き込んで独自の地図を持っている者も多い。

 この地図の精度がまたまちまちで、冒険者なら高値で売れる薬草の場所とか、危険な魔物の居る場所などを中心に書き込まれてたり、行商人なら町の特徴やどんな物が売れるか、どんな物を仕入れられるかなどが書き込まれてる。

 同業者ならば盗んででも手に入れたい貴重な物なのだ。


 大雑把な世界地図としては、大陸は大きく分けて二つ。

 北大陸と南大陸。

 リュグナトフ国は南大陸。

 リュグナトフ国は南大陸のほぼ半分を治める大国だ。

 これから向かおうとしてるのは北大陸。

 大陸の形は、タラコ唇のキスマークみたいな形をしていて、唇の間に隙間があり、そこに歯にくっついた青海苔みたいに点々と島がある感じ。

 アマテ国はそんな青海苔のうちの一つ。

 大陸と大陸はほんの少し接する場所もあるけど、そこは魔の森なので、人間では行き来出来ない。

 内海と呼ばれる唇の隙間を船で渡るのが一番安全とされるルート。

 大陸の外側は、外海と呼ばれ、大陸付近には幾つかの島はあるけど、その外側に船出して帰ってきた者はいないとか。


 ラバー商会は世界を股に掛ける大商会。

 ユーグラムは一神教の世界の宗教の頂点に立つ教皇倪下の息子。

 アールスハインは南大陸のほぼ半分を治める大国の王子。

 何が言いたいかと言うと、この三人のコネとか権力とかを使うと、各々の組織が独自に保有する精度の高い地図が手に入ってしまうと言うこと。

 で、その三人が持ち寄った地図を一つに纏めてしまうと、世界でも唯一の最高精度の地図が出来上がってしまうと言うこと。

 この地図を印刷して売りに出せば、孫子の代まで贅沢して暮らせるくらいの価値有る地図が出来上がってしまった。

 ただ精度が高すぎて、その辺で気軽に広げられないと言う事態に陥ってるけど!態々精度を落とした大雑把な地図に書き直して持ち歩かないといけなくなってるけど!


 内海は海流が複雑で、大陸を渡る船は年に数週間しか安全に渡る事が出来ない。

 海流は巨大な魔物の影響でもあるので、気紛れに流れが変わる事もあるとか。

 経験豊富な船乗りでも、運に任せて出航して沈没することも有るそうです。

 天気予報は勘と経験の世界なので、契約した船長さんがGOサインを出さないといつ出航になるかもわからない。

 港町で待機すること八日。

 俺達が乗る予定の帆船に赤い帆が張られた。

 出航の合図。

 合図が出てから次の鐘がなるまでに乗り込まないと容赦なく置いていかれる。

 宿を出て急いで乗り込むと、出航準備の終わった船員さんが、


「あんたら、運が良いな?契約して1ヶ月以内に出航なんざ、かなり運が良い!これは流れもついてるかな?」


 ガハハ~とガラガラの声で朗らかに笑う船員さん。

 今回はラバー商会のコネではなく、冒険者ギルド経由で契約を結んだので、船室はアールスハインチームと俺のチームで狭い部屋を一部屋しか取れなかった。

 同じ船にはディーグリーの知らないラバー商会の人が居たり、貴族らしい人が居たり、俺達以外の冒険者チームも三組程。

 客船と言うよりは魔道具も使った大型帆船なので、人はそれほど多く乗れないようだ。


 ゴワーンゴワーンと銅鑼の音が響き、いよいよ出航。

 バサッっと広がる帆を見るとワクワクした気持ちになる。

 風を受けてゆっくりと進む船。

 波が来る度に揺れるこの不安定さも船に乗ってる実感が湧くね!

 見送りの人達が歓声をあげながら手を振るのがどんどん遠ざかっていく。

 湾を出ると一気に視界が開けて、水平線が見える。

 この世界の水平線も丸いんだよ!

 天動説とか地動説とかを論じる以前の世界のようで、船乗りは星を読んで進路を確かめたりはしているようだが、地面が動いているか空が動いているかには興味は無いらしい。

 そう言うものだと有るがままを受け入れて利用するスタイル。

 宇宙へ行くわけでもないので何の支障も無いようだけど。


 乗って初めて知ったのだけど、帆船て追い風より横風の方が速く進むのね?詳しい原理は知らないけど、船乗り達が意外と細かく帆を動かしたりして風を良いように捕まえてる感じ。格好いい!

 前回アマテ国に行った時の船の船長さんは海賊風だったけど、今回の船の船長さんは貴族風?装飾の多いヒラヒラした服を着て、優雅に舵を取ってる。

 船乗りだけあって色黒なので似合ってるとは言いがたいのが微妙だけど。

 風が良かったのか、半日も過ぎると陸地もだいぶ遠くなって、視界が海だけになってくる。

 そうなると退屈になってくる。

 アールスハイン達は他のチームの冒険者と模擬戦とか始めてるし、俺はペット達と眺めてるだけ。

 まだまだ食料も豊富なので釣りをする必要もない。

 オセロとかトランプも、揺れや風のせいで出来ないし。

 この暇な時間をどうしよう?


 ペット達と戯れて、他の乗船客に構われて、船乗り達にからかわれて、魔法で風を起こして速度を上げてみたり、釣りしたり昼寝したり朝寝したり、模擬戦眺めたり。

 たまに魔法で魔物を攻撃してみたり。威力がおかしいと騒がれたり。


 航海も半月も過ぎるとやることが無くて時間をもて余す。

 今日も今日とて、ペット達と一緒に船の揺れに任せて甲板をゴロゴロ転がってたら、何度も踏まれそうになって怒られたし。

 貴族のご婦人がやたらと固い菓子を食わせようとしてくるし。


 大陸を渡る船は、二ヶ月掛けて海を渡る。

 半月でもう退屈をもて余してるのにどうしろと言うの?!

 どうせなら魔物でも出てそれを退治でもして退屈をまぎらわせたいとか考えていたからか、出ました魔物!


 海の魔物はとても巨大。

 陸の魔物も俺からすれば巨大なんだけど、海の魔物は予想もつかないくらい巨大な事もしばしば。

 ウツボに似た鋭い歯を持って、細かい角?がびっしりと頭部を覆ってる魔物が、船と並走するように泳いでる。

 一回でもその頭部で頭突きされれば船は沈むだろう。

 まあ見えないバリアを船全体に張ってるので大丈夫だろうけど。

 ただそのウツボ魔物のせいで、微妙に進路を変えられてる。

 船長や船乗りが慌ててるけどどうにも出来ない感じ。

 攻撃して良いですか?ダメなの?ちゃんと仕留めるよ?

 ウツボ魔物は体表がヌルヌルしてて、そのヌルヌルが魔法を逸らすんだって。

 大型帆船よりも巨大なウツボ魔物を一発で仕留められるとは信じて貰えず、何故か船長の小脇に抱えられている。

 これまでの半月で、俺の魔法が規格外なことは見て知っているけど、ウツボ魔物に通じるとは思われてない感じ。

 突然変異の妖精族って説明はしたんだけど、妖精の魔法の威力も知らないようだしね。

 ただ、このまま行くと目的地とは全然違う場所に到着してしまうので、乗船している魔法使い全員で一斉攻撃を仕掛けるかって話は出ている。

 相談も終わってウツボ魔物のいる側に魔法使いが集められ、さあ撃つぞ!ってなった時に、マストの上の見張り台にいた船員が何かを訴えて下りてきた。


「やべーぞ!この先に巨大な渦がある!このまま進んだら巻き込まれる!」


「さっさとそいつを仕留めろ!」


「帆をたため!少しでも進行を遅らせろ!」


 バタバタと大変な騒ぎになっているので、船長の脇から抜け出し、ユーグラムに声を掛けてサクっと退治してやった。

 一人でやったら目立つからね!

 ユーグラムの魔法は弾かれてたけど、俺の魔法は通ったよ!プカ~っと水面に浮かぶウツボ魔物の死体。

 急に海流を作り出してた流れが止まってしまったので、唖然としてる船乗り達。

 一足先に正気を取り戻した船長が、魔道具の起動を命じて、舵を切る。

 ゴゴゴゴゴと低い唸り声のような音がして、船の最後尾がゆっくりと開き、バシュッバシュッと何度かなった後に、


「掴まれーー!」


 船長が叫んだ数秒後、ドウッと衝撃が来て、シュバババババッと船が水面を滑る様に走り出した!

 何それ格好いい!と思いながらも甲板をゴロゴロ転がる俺とペット達。

 大人達は辛うじてその辺に掴まれたようだけど、軽くて手の小さい俺では咄嗟に掴める物が無かったよ!

 まあ飛べるので全然平気だけど!バリアもあるので無傷だけど!

 シュバババババッと進んでたのは十分くらい?最後はバシュッバシュッジョボボボとなって止まった。

 魔力が無くなってしまった様子。

 まあ危機を脱せたので問題なし。

 船長が俺とユーグラム以外の魔法使いに頼んで、魔道具に魔力の補充を頼んでた。

 俺とユーグラムもまだまだいけるぜ!って言ったのに、頭を撫でられて抱っこされてしまった。

 抱っこする必要とは?


 その後もたまに出る魔物を退治して、魔道具で何度か逃げて、渦を回避して、やっと水平線に蜃気楼ではない大陸の影が見えてきたのは二ヶ月後。

 予定よりも時間がかかったそうです。

 まあ全員が無事で船も無事なので問題ない!と貴族風に着飾ってるのにガハハと海賊みたいに笑う船長が言ってたので問題ないのだろう。

 さらに十日かかってやっと船旅の終わりが見えてきた。

 予定より長い航海だったので、最後の十日は新鮮な野菜や果物が無くなり、皆の顔色が悪くなってたけど!

 俺達は無事でしたよ?こっそりマジックバッグの果物食べてたし。

 ごめんね、皆に分けられる程には持ってなかったんだ!


この部分でストックが完全に終了してしまいました。

今後は、気分転換に書いた短編が2本有るだけで、ちったいは暫くお休みさせて頂きます。

なるべく早く戻れるように頑張りますが、気長に待って頂けるとありがたいです!

ここまで読んで頂いてありがとうございました!

またお会いできると嬉しいです!


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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
ルフィのサニー号ほどではないにしろ、贅沢を言えばもうちょっと現代世界には無い魔法描写が欲しかったかな。(^o^) あと、余計なお世話かも知れないけど、GoogleのGemini AIで「以下の文章よ…
長い船旅に食料準備大事(*´▽`*)
[良い点] 突然泣かされるとは思ってなかったですwww 後追いですがあともう少しで終わってしまうのがすでに寂しいです
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