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帰国までの道のり 2

【書籍発売中】


誤字報告、感想、買ったぞのメッセージをありがとうございます!

自身ではまだ本屋さんに行けてないので実感が無いのですが、大変嬉しいです!ありがとうございます!

 おはようございます。

 天気は晴れ。

 今日と明日は護衛依頼も一旦休み。

 ユーグラムは朝から教会へ。

 アールスハインと助は街の衛兵とか冒険者ギルドで盗賊などの情報集め。

 この街からリュグナトフ国までは荒野なので、盗賊は滅多に出ないけど魔物の分布とかも情報があれば、って念のため。

 来る時にも思いがけずワームの群れに遭遇したしね。

 ペット達は部屋でお留守番するそうです。


 で、俺はディーグリーと一緒にラバー商会に来てる。

 王様から貰った原石を原石のまま持ってても意味が無いからね。

 ラバー商会に売っても良いし、腕の良い職人さんを紹介して貰っても良いし。


 ディーグリーは行きにも顔を出したので、お店に行くとすぐに奥に通された。

 お茶を出されて暫く待つと、店長さんとトウガンさんが一緒に来た。


「あれ?トウガンは原石の買い付けに行ったんじゃないの?」


「今回はくじ引きで負けまして、競りには参加出来なかったんです」


 しょぼーんと落ち込むトウガンさん。

 外国に本店のある商会は、原石の取引に参加するにも、参加出来る人数が決まっていて、それを公平にくじ引きで決めるそう。

 それは商会の規模や人数に関係無く、一商会一回と厳密に決められてるそうな。

 そしてトウガンさんは今回はハズレ。


「まあ、それは残念だったけど、かえって良かったかもね?」


「何が良いんですか?クジに外れたんですよ!原石が買えないんですよ!」


「クックックッ、そんなトウガンに凄い知らせ!ケータちゃんたら、王様直々に原石を頂いちゃったんだよね~!それの加工を頼もうと思って来たんだよ~!」


「は?はあ?王様って、ミルリング国の王様ですか?なぜ?!王様直々に原石を賜るって、何をしたらそんな事態に?!」


「王太子殿下直々に、料理を教えてくれって頼まれてね~」


「あー。噂の坊っちゃんの料理。あれは元々ケータ様からの教えですからねー」


「噂では聞いていますし、レシピも送られてきたのですが、そんなに美味しいのですか王様直々に褒賞を賜るほど?」


「流石に外国にまでは広まってないですよね?柔らかいパンや臭みの無い肉は、リュグナトフではだいぶ有名になってきましたよ?今、ラバー商会で一番力を入れている事業は、料理人の育成ですからね」


「えええ?そんな、人を育成してまで広めたい事ですか?」


「チチェもレシピだけでは再現が難しかったから、いまいち美味しさが分からないのでしょう?」


「ええ、まあ。料理人も困惑してましたから」


「う~んそうか~、じゃあまずは簡単に料理をしてから、お昼を食べながら原石の話でもしよっか」


「ええ、坊っちゃんが料理されるんですか?!」


「チチェ、俺だってもう冒険者になって暫くたつんだよ!成長だってするよ~」


 ケラケラ笑いながら調理場に向かうディーグリー。

 トウガンさんは嬉しそうに、チチェ店長は納得行かなそうな顔でついてくる。


「ところでチチェ、料理のレシピと一緒に、石臼の改良案も届いてたでしょ?あれは完成してる?」


「はい。一応書かれていた通りに作ってはありますが、試しに粉を引いてみたところ、粉のきめは細かくなりましたけど、パンにしたら変わりませんでしたよ?」


「パンの作り方も違うからね~」


「はあ、そうなんですか?二次発酵とか言うのも意味分かりませんでしたし」


「挽いた粉はまだある?」


「ええ、結局使い方が分からなくて、いつもの粉を使ってますんで、まだあったと思います」


「うん。じゃあまずは作ったものを食べてみてよ~」


 調理場に行くと、料理人に説明して、一緒に作って貰う。

 その方が覚えられるしね。

 パン生地をこねて丸めて一次発酵。

 その間に肉にガガ針をぶっ差して血抜き。ダバダバ出る血の量に言葉もない料理人。

 綺麗に手を洗って、またパン生地をこねて丸めて二次発酵。

 肉の筋を取り部位に分ける。

 解体から料理まで慣れたディーグリーの手際に、チチェ店長がとても驚いている。

 トウガンさんは感心しながらとても楽しそう。

 料理人さんは、いまいち作業の意味が分かってない感じ。


 二次発酵の終わったパン生地を成形して焼く。

 焼くのは普通のパンと同じ工程なので、料理人さん任せ。

 その間に肉料理。

 味をより分かりやすくするために、軽く塩コショウを振っただけのステーキ。

 あとは付け合わせにサラダとスープで完成。

 焼き立てパンにバターを塗ってガブリ!俺とディーグリー以外がガチンと歯を噛み合わせる音が。

 驚いてパンを凝視して、恐る恐るもう一口。

 外はパリッとなかはフワモチの食感に驚いて言葉もない。

 あっという間に一個完食して次に手を伸ばす。

 その合間に肉を食ってまたガチン!そして固まってもう一口、その後はパンと肉で延々、なくなるまでループする。

 俺とディーグリーは程々に食べてニヤニヤ皆を見てる。

 作った分を完食して呆然としてる人達に、


「どうよ?これで柔らかい肉とパンの価値が理解できた~?」


 ニヤニヤしながら聞くディーグリーに、物凄く深刻な顔でチチェ店長が、


「ええ。大至急この街に居るラバー商会傘下の料理人に通達します!これは食の革命が起こりますよ!」


 大袈裟な事を言い出した。

 料理人さんもうんうんと深く頷いてる。


「たったあれだけの手間で、これだけ劇的な変化が起こるとは!この街の食生活が一変するでしょう!争ってでも手に入れたい料理です!」


 おおう。真剣すぎてちょっと引く。


「ある程度の人数が作れるようになってから売りに出さないと、本当に争奪戦が起こり得ますね!」


「石臼の改良版も増産して頂きたい!それと新鮮な肉を確保する為にも、冒険者ギルドにも掛け合って頂ければ!もしくは依頼を出すなども検討して欲しいですね!」


「ええ、勿論ですとも!坊っちゃん、トウガン、悪いが色々忙しくなりそうなんで失礼しますよ!」


 そう言ってチチェ店長と料理人さんは急いで出掛けていってしまった。


「本題はまだ話してもいないのに~?」


「ハハハ、チチェは夢中になると一つの事しか出来ませんからね。仕事が早いですから、多少他の事が後手に回っても挽回出来ますし」


「まあいいや、チチェよりトウガンの方が宝飾品関係は詳しいしね?」


「ええ、是非とも王様から直々に賜った原石と言うのを、見せて頂きたいですね!」


 食堂から応接室に戻ってきて、勝手知ったるなのか、トウガンさんがビロードっぽい布を机に敷いて、


「原石をこちらに置いてください」


 と言うので、マジックバッグから取り出す。

 大きさはバラバラでバスケットボールくらいの大きさから野球ボールくらいの大きさまで全部で二十個。

 トウガンさんがワナワナしております。


 手袋をはめた手で慎重に原石を持ち上げ、色んな角度から見て、色や形を確かめて重さを確め、匂いまで嗅いでいる。

 そっとビロードの上に戻し、


「はあ~~~~~、流石王家に献上されるだけの原石。質は間違いなく最上級、今まで私が扱った事のある原石とは比べ物にならない程の価値の高い原石でしょう。坊っちゃん、この原石を加工して、普通以上に加工が出来たとして、その後はどうされますか?」


「ん?どうするって売るでしょ?ケータちゃんもいらないって言うし、売ってお金で持ってた方がまだ使い道があるでしょ?」


「この原石を加工して仕上がった宝飾品を、簡単に買える者はおりませんよ?おそらく高位貴族の家宝として数世代は受け継がれるべき宝飾品になると思います」


「はあ?数世代って?!そんなに純度の高い物なの?それに加工前でそれが分かるの?」


「私はね、身内には宝石狂いと呼ばれるほど宝石には執着が有るんですよ!これは間違いなく、数世代溶けることなく残る物だと確信しています!宝飾品に目が無いご婦人ならば、喉から手が出る程の品になりますね!予め販売先の優先順位を決めた方が良いでしょうね」


「あー、トウガンがそこまで言うならそうなんだろうけど、ケータちゃんどうする?いっその事王家に献上しちゃう?その方が後々の面倒も無いし?」


「そ~ね~。かこーちんはケータだしゅよ。そんでおうけにけんじょーしゅる」


「そうね、ご婦人達の争いに捲き込まれたくないしね~。トウガン、加工賃はどれくらいになりそう?」


「これだけの原石ですから、一流の職人に依頼しますし高いですよ?」


「ケータおかねもちよ?」


「うん、俺よりずっとお金持ちだね!」


 原石の加工賃は、最初に手付けとして職人の言い値の三分の一を支払い、仕上がった品に商人が最初の値段が妥当かどうかの交渉をして、最終の総額が決まる。

 商人が価値無しと判断すると、最初の手付け金しか払わなくて良いし、不当に価値を貶めようとする商人には、職人が手付け金を返金して売らないことも出来る。

 値段の高い原石が上手く加工出来るとも限らないギャンブル的な要素もあったりして。

 最初の手付けが法外な値段だと、商人は依頼しないし、その辺の駆け引きもあったりでとても大変そう。

 トウガンさんは目をギラギラさせてとても楽しそうに依頼する職人を脳内で検索してる感じ。

 こうなると人の話が聞こえないそうなので、原石を置いて、加工出来た仕上がり品は、ラバー商会を通じてリュグナトフ国の王家に配達して貰う事だけ約束して宿に帰りました。


 帰った宿には領主のご息女と伯爵令嬢がメイド数人を連れて来ていて、宿の食堂に陣取っていた。

 相手をしているのはアールスハインと助。ユーグラムはまだ教会から帰っていない様子。


 食堂入口から中を覗いて、


「うわ~、面倒事の予感しかしな~い!でもアールとタスクだけに任せておけないか~」


 諦めのような声を出して、何故か俺を抱っこして食堂に入っていくディーグリー。

 気付いたアールスハインと助の目が、明らかにほっとしてた。


仕事が忙しすぎてストレスが溜まり、ちょっとちったいさんがつまずき気味。

殺伐とした内容になりそうで、気分転換に短編を書こうと思ったのですが、話を短く纏める能力ってどこで売ってるんだろう?

無駄に長くなってしまったので、投稿するかは不明の長編になってる模様。

取り敢えず色々頑張ります。

ぬるく見守って頂けるとありがたいです。

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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[一言] 王様から褒章として貰った物を加工はともかく別の国の王族に献上って正直良くないと思うんだけど… そもそもお礼にって貰った物を要らないから売ろうってなる思考から理解できないけど(困窮してるとかな…
[一言] 褒賞として下賜された物の扱いとしては大間違いだと思うけどね。
[気になる点] ガガの針 肉に使うのは良いけど そういや洗った描写ないよな [一言] 書籍買ったぞ
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