お茶会と言う名のパーティー
【6/10 書籍発売】
本日書籍発売になります。よろしくお願いします。
書き下ろしのアールスハイン視点とか購入特典SSとかもあります。
おはようございます。
お天気は晴れ。
朝早くから起きて風呂に入ってクリームを塗られて、何時もよりちゃんとした服を着る。
本日は王太子妃様主催のお茶会の日でござる。
名目上お茶会と言っているが、昼間に行われる普通のパーティーと変わらない規模のお茶会。
招待客は王都に住んでる高位貴族ばかりだけど、王太子妃様の親しくしてる家ばかりだそうで、気軽に寛いで!とか言われた。
無理じゃね?
他国の王族の開くパーティーに参加するだけで緊張するのに、主役にされてるからね!
パーティーの話題の一つとして、会場真ん中にアイスドラゴンの死体でも置いとく?って提案してみたけど却下された。
令嬢や婦人達が気絶するって。
リュグナトフ国なら嬉々として触りに来る令嬢は多いだろうにね?
助の緊張が半端ない。
それに影響を受けてディーグリーも緊張してる。
ユーグラムは無表情だから分かりにくいけど、こっちも実は緊張してるっぽい。
アールスハインはほどほど。
俺は?普通。本日の主役はアールスハイン達で俺はオマケだからね。
ページュリーの先導で会場に向かうと、既に王太子妃様だけでなく王太子様までが会場入りしてて、王太子様直々の紹介で皆に注目されながら会場に入っていく。
そして予め用意してた綺麗に包装された箱を、王太子様に献上する。
冒険者はどの国にも所属しない独立した組織なので、王族相手でも跪いての礼はしない。
まあ、それは建前で、普通の冒険者は跪く人も多い。
ただアールスハインは大国の王子様なので、跪かれると王太子様と王太子妃様の心臓に悪いので止めて!って言われました。
頷いてお礼を言った王太子様が箱を開けると、青く輝く鱗と皮、黄色い濁りのない目玉が出てくる。
一目で内包される魔力が高いと分かるドラゴン素材。
会場中がどよめいてる。
意味が分かっていない婦人や令嬢も多いけど、招待を受けた貴族家の当主とかが、ゴクッと唾を呑む音まで聞こえる。
王太子様が態々階層更新したことまで説明してくれて、貴族当主達の目の色が変わってる。
ドラゴン素材ってそんなに欲しいもの?
この後ギルドに売りに出したら物凄い値段が付きそうね?
ディーグリーの目がキランと光ってる。
王太子様はドラゴンメイルを作るそうです。
そして目玉は王太子妃様の宝飾品に加工されるそうな。
会場にいる人達からうっとりしたような溜め息や、羨ましそうな視線が多く注がれる。
後は普通にパーティー。
昼間のお茶会と言う名目なので、若い貴族も多く参加してて、アールスハイン達に熱い視線が注がれてる。
ミルリング国の料理はまだまだ改良される前のリュグナトフ国の料理と同じレベルなので、俺の食える物が野菜と果物しかない。
見た目は華やかだし匂いも凄く良いのに食えないって!これは拷問なのか?
果物の盛り合わせをつつきながら、皆も食は進んでない。
王太子様はリュグナトフ国の改良後の食事の味を知っているので、苦笑気味。
王太子妃様は不思議顔。
そんな王太子夫妻と話ながら適度に貴族の人達と挨拶をしたり、話を聞かれたり。
今後アシュリ鉱山へ派遣される冒険者が増えそうな予感。
ドラゴンメイルは男の子の憧れですか、ミスリルの剣と同じ扱いですかそうですか。
俺にはその感覚が全然分かんないけど!それよりも美味しい物が食べたいですよ!
こっそりマジックバッグから取り出した料理を食べつつ、会場の様子を観察。
令嬢達の熱い視線が突き刺さってるけど、王太子様が一緒なので近寄っては来ない。
王太子御夫妻にもこっそり料理を分けている。
上品にお淑やかにむさぼり食っております。
特に王太子妃様が!出せば出すだけ食ってるけど、そのほっそいウエストのどこに入ってるの?
カボチャプリン出したら王太子様が溶けました!
うっとり~とした顔になって、ちょっと別の世界に行っちゃった感じ。
王太子妃様が肘でつついても戻ってこない。
この国でもお料理教室開くべき?
アールスハイン達がさりげなく王太子様のだらしない顔を隠しながらもパーティーは順調に。
ちょっと昼間からのお酒にやられちゃった若者がこっちに突撃してこようとしたり、想いが募っちゃった令嬢が突進してこようとするのを、ページュリー他近衛騎士が速やかに会場の外へ連れ去ったり。
楽団の近くで踊り出す人が現れたり。
楽しく愉快にパーティーが進行している最中、ぽっかりと開いた会場中心に現れた若い男女が二人。
何となく皆が注目するなか、
「皆様お聞きください!私、イーディス・アヴァンス公爵令息は、今この時を持って、ミラベル・キミッヒ伯爵令嬢との婚約を破棄し、こちらにいるミルキー・ピッコリーノ男爵令嬢と新たに婚約を致します!」
宣言した。
どっかで聞いた話ね?
婚約破棄が流行ってんの?
王太子御夫妻が唖然とするなか、中央の二人は今にもブチューっと始めそうな勢いで引っ付いている。
そしてその二人に近付いて行く令嬢。
会場はシーーンと静まり返り、楽団の音楽さえ止まっている。
「イーディス様、この様な場で宣言なさる事ですか?場を弁えて下さいませ!」
「うるさい!お前は最近私から逃げ回っていて、まともに話を聞こうとしないじゃないか!だから仕方無くこの様な場所での宣言としたのだ!」
「はあ、まともにお話が出来ないのはあなた様の頭が悪いからですわ!しかもそちらの男爵令嬢に良いように言いくるめられて、この様な場で婚約破棄などと、ええ、ええ、了承致しますわ!あなた様とは一刻も早く関わりを絶ちたいですもの!」
「言うに事欠いて一刻も早くだと?!負け惜しみのつもりか?!だが残念だったな!お前がミルキーにした悪逆の数々は証拠が上がっている!観念するのだな!」
「どうぞお好きに、恥をかくのはあなた様の方ですわ!証拠と言ってもどうせそちらの方の証言しか無いのでしょう?」
令嬢は豪快にハンッと鼻で笑ってる。ちょっと怖い。
「あなた達、そこまでよ!このお茶会の主催者として、これ以上の無礼は許しません!速やかに去りなさい!」
さっきまで隣に居た王太子妃様があっという間に場を鎮めた。
そして若者達の親を呼び出し、近衛騎士に命じて別室に移した。
「とんだ茶番で場を荒らされましたが、皆様、どうかお気になさらず続けてお楽しみ下さい」
王太子妃様に言われれば、気にはなってもその話題を蒸し返す訳にもいかず、その場は和やかな雰囲気に戻った。
邪魔は入ったけどパーティーは無事終了し、お開きとなった。
最後に一言!とばかりに勧誘と告白の嵐に巻き込まれたけど、皆見事なスルーっぷりだったよ!
借りてた部屋へ戻り普段着に着替えて、街に戻ろうとメイドさんに声を掛けると、もう少しだけお待ちを!って止められちゃったので、お茶を飲みながら待ってると、部屋のドアが開いて、どっかで見覚えのある令嬢が入ってきた。
部屋の中に人が居ると思ってなかったのか、ビックリして固まる令嬢。
さっき公爵令息とブチューっとしそうだった男爵令嬢だった。
ドアを閉めた男爵令嬢は驚いて暫く固まってたけど、ドアの外が騒がしくなると、ドアに耳を当てて外の様子をうかがっている。
バタバタと走る音や何を言っているかは分からないけど騒がしい声も聞こえる。
うん。逃げてきたのね?
あれだけの騒ぎを起こして、逃げられると思ってる根性が凄いね!
ドアの外ばかり気にしてる令嬢の後ろにそっと忍び寄って、キュッと両腕を縛り上げる助。
そのままドアを開けて外に声を掛けようとしても、誰も居なかったようで困ったように振り向く。
お客とは言え、王城内を勝手に歩く訳にはいかないので、誰かが来るまで待つ。
その間床に転がしてる令嬢の五月蝿いこと五月蝿いこと!
あまりの五月蝿さに、我がペット達も気に入らなかったのか、ハクは触手で令嬢の口を塞ぎ、ソラとラニアンは大型犬サイズになって、上半身と下半身に乗っかっている。
プラムは額をペチペチ叩いてるし。
ルクスだけ不参加。
それでもまだモゴーーー!!とか叫んでる令嬢。
たまにソラかラニアンの体がちょっと浮く。二匹とも魔法で重さを調節してるのに、力強いな?!
面白くなってきて観察してたら、メイドさんが部屋に入ってきて、ペット達に拘束されてる令嬢を見て、慌てて部屋から出ていった。
間も無く近衛騎士が部屋に入ってきて、我がペット達に困惑してる。
手が出せないことが分かったので、我がペット達は速やかに撤収したよ!
そして改めて厳重に捕縛される令嬢。
五月蝿いので猿轡もされてる。
部屋から連れ出される時も、部屋の壁とドアに足を掛けて抵抗してたし、凄い根性だね!
しまいに簀巻きにされて担ぎ出されてたし!
「凄い令嬢だったね~?」
「ある意味見上げた根性だったな?」
「ソラとラニアンを一瞬とは言え持ち上げてましたしね」
「口を塞がれてても叫んでたしな」
「よく、あんにゃのに、しっかかったな?」
「そこは本性隠すだろう?」
「あたまわるそうだったよ?」
「相手も同レベルだから引っ掛かったんじゃねーの?」
「「「あー」」」
全員が納得したところで、ページュリーが部屋に入ってきて、逃げ出した令嬢の話をしてった。
「結局、世間知らずの高位貴族のボンボンが、阿婆擦れの手管でコロッと転がされたんだな!」
「まあその通りなんだが、あの阿婆擦れが相当でな。歳も誤魔化して男爵家に嫁入りしといて、その上で学園に通ってたってんだから」
「他に被害者は?」
「まだ調べきれてねーが、相当数居るらしい。夫である男爵は全く知らなかったらしく、泡吹いて倒れた」
「そんで転がされた公爵子息と伯爵令嬢は?」
「それは各家での処分となるが、婚約は破棄されるだろう。王太子妃様主催のパーティーでやらかしたからには、公爵家当主もただじゃすまないだろうしな。伯爵令嬢は最初止めたにも関わらず、相手に一方的に責め立てられたようだし、話を聞くに冤罪をでっち上げられてたようだし、お咎めは無しだろうが、婚約破棄ともなれば、多少の傷はつくだろう」
「気の毒な事だな」
「全くだ。王太子妃様も気の毒がって、他国に留学を勧めてたよ」
「暫く国を空ければ、噂も静まるか、良いんじゃね~の?」
「そこでお願いがありますの」
王太子妃様登場。
「もし皆様のご都合が合えば、リュグナトフ国まで彼女の護衛をお願いできないかしら?」
冒険者として護衛依頼を出されました。
ミルリング国は山岳地帯が多く、観光には向かないので、ダンジョンにも行けた事だし別にこのまま帰るのは問題ない。
と言うことで、リュグナトフ国に帰る事になりました。
同盟国なので留学生の受け入れもわりと頻繁だし、本人も前向きに留学を希望してるので依頼を受ける事に。
ただまあ、伯爵令嬢なので伯爵家からの護衛も手配するそうなので、出発は一週間後。
そんなすぐ?!とも思ったけど、噂が広がる前に国を出たいらしいよ。
誤字報告、感想をありがとうございます!
購入特典SSには本では消えてる筈のヤツが出てきたりします。
見付けて楽しんで頂けると嬉しいです。




