ダンジョン後 2
【6/10 書籍発売】
誤字報告をありがとうございます!
とても面倒なんだけど、ドラゴンの素材は全て俺のマジックバッグに入っているので、交代の度に俺も冒険者ギルドへ向かう。
風のドラゴンはそのまんまウインドドラゴンと呼ばれ、使用可能な素材にするまでは四時間ほど掛かる。
ドラゴンの素材は魔力を残したまま加工するのが難しいらしいよ。
次もウインドドラゴンを出す。
二匹目が出てくるとは!とか驚いて小躍りしてる爺さんとドワーフ。
巨大筋肉は無言になってる。
最初に六匹いるって言ったよね?
ドラゴンって事で興奮してて聞いてなかったな?
たまにギルドに行って宿でダラダラして三匹目。
赤色のファイアドラゴンを出すと、
「「「「ふおおおーーー!」」」」
今度は巨大筋肉も一緒に叫び出した。
寝ないで加工を続けそう。
助、立ち会い頑張れ!
宿で寝てたら早朝に起こされて、起きてみたらギルドに居た。
そしてドラゴンを出せ!と催促された。
爺さん達の目がギンギンで怖かったので、黙って黄色のアースドラゴンを出した。
無言で加工を始めるのが更に怖かった。
宿に帰って朝御飯を食べて、また宿でダラダラ。
街に出ても美味しいものが期待出来ないのが寂しい限り。
ディーグリーはラバー商会へ。
ユーグラムは教会へ。
助は寝てて、アールスハインは立ち会い。
あまりに暇なので麺打ちをしている。
肉体強化を使えばコシの強い麺も打てます!
生麺パスタ、うどん、焼きそば用の麺、ラーメン用の麺。
中華包丁のような麺切り包丁が無いので、切るのはパスタマシンなので長さは短めだけどね。
昼は焼きそばを作りました。
野菜もたっぷり入れて、ジュージュー焼いてたら助も起きて手伝い出した。
丁度よく帰ってきたディーグリーとユーグラムと一緒にズゾゾーっとすする。
アールスハインの分はちゃんと確保してあるよ!
プラムはすすれなくて口回りがベタベタになってた。
ハクは取り込んで茶色になってたし、ソラはワイルドに食らってて、ルクスは麺1本を振り回しながら食ってた。
ラニアンは生肉です。
交代の時間になったのでディーグリーと一緒にギルドに行くと、ギルド長の爺さんとドワーフおっさん達がテカテカしてた。
え?なぜ?
水色のウォータードラゴンを出すと、ニカッと笑って受け取って、すごい速さで加工し始めた。
手際が断然良くなってる!
ディーグリーを置いてアールスハインと宿へ。
焼きそばを出して、お昼寝。
起きたらギルドに居た。
デジャブ?…………ではなかった。
俺を抱っこしてるのがユーグラムだもの。
爺さんとドワーフは目が据わってた。
巨大筋肉は死んだ目をしてた。
そっと青いドラゴンを出す。
これもウォータードラゴンと言うそうです。
ドラゴンだけでなく、魔物全般、強くなる程色が濃く大きくなるんだとか。
やはり無言で加工を始める人達。
動かしてる手が物凄く早い!
ディーグリーに抱っこされて宿に帰る。
王太子妃様からの返事はまだ来てないらしい。
夕飯は宿の近くの露店で買った物を食べた。
宿に泊まってるのに、一切外食しないのも怪しまれるからね。
夕飯を食べ終わったと同時にギルドからお使いが来て、加工が終了したとのお知らせ。
大きさが倍くらいあったのに、時間が短くなってる!
あ、ちなみにペットと俺が狩った最後のドラゴンはまだ出してません。
報告はするけど、これ以上爺さんとドワーフに負担を掛けたらヤバイ感じだったので!
アールスハインと一緒に、ギルドにドラゴン素材を引き取りに行ったら、爺さんとドワーフ達はグッタリしてるのに満面の笑みだった。
巨大筋肉は虫の息だった。
お礼を言ってマジックバッグにしまったら、
「貴族様に献上した残りはウチに売ってくれよ~」
ヒヨヒヨの声で訴えてた。
了承して宿に戻ると、こちらを監視してたのか?ってタイミングでページュリーが王太子妃様の手紙を持ってきてた。
翌日、朝からページュリーが宿を訪ねてきて、一緒に朝御飯を食べた後にお城に向かった。
近衛騎士団隊長だけあって、すんなり応接室まで通されて、お茶とお菓子を出されて暫く待機。
やはりこの国のお菓子も硬くて食えない!アギアギしても歯が立たないので、諦めてプラムにパス。
ゴリッガリッと咀嚼するプラム。
やはりお菓子からして良い音ではないと思うの。
そして最初から砂糖が大量に入っている紅茶。
砂糖の多さが富の象徴とばかりに大量に入ってる砂糖。
全然喉が潤わないし、とても体に悪そう。
折角出された物を全く手をつけないのも失礼に当たるので、皆もそれなりに口にしてるけど、その顔はとても美味しそうには見えない。
部屋の隅に待機してるメイドさんがとても不思議そうな顔をしてる。
王城で出されるお菓子は、この国の最高峰の筈だから、その顔になるのも分かるけど、世の中にはもっと美味しいものは有るんだぜ!
主に俺のマジックバッグの中にだけど!
部屋の外が騒がしくなって、ノックの後に騎士がまず部屋の中を軽くチェック、俺達が立ち上がると数人のメイドさんを連れた王太子妃様が部屋に入ってきた。
挨拶のために頭を下げて、王太子妃様が座って声を掛けてくれるまでそのままの姿勢。
「頭を上げてお座りなさい」
そして王太子妃様がページュリー以外を部屋の外に出した。
「まずはダンジョンでの階層更新おめでとうございます。通常ならば夜会を開くのですが、なにぶん王城なので、申し訳ありませんがお茶会程度の昼の集まりになってしまいます。お許し頂ければ」
「いえ、大変光栄に思います」
ここで話すのはアールスハイン。
王族同士の会話だね。
ページュリーがへりくだる王太子妃様をぎょっとした顔で見てる。
王太子妃様とアールスハインを忙しなく見てる。
「ありがとうございます。それでは三日後にお茶会を致しますので、是非ご参加下さい」
「ありがとうございます。それで、今回の到達階層ではドラゴンが出たのですが、ドラゴンの素材は新鮮な内に加工をしないと、素材としての質が落ちてしまうため、ダンジョンを管理されているログセラー伯爵の薦めもあり、先に冒険者ギルドで加工をさせて頂きました。王太子妃殿下にはどのような素材を献上すればよろしいですか?」
「ドラゴン?!いえ、そんな!それはアールスハイン殿下が自らのお力で手に入れられたもの、献上などと!」
「いえ。それがこの国の慣例ならば、是非ともお好きな部位をお選び下さい。王太子妃殿下がお受け取りにならないとなれば、他の貴族も受け取れなくなりますから」
「え、ええそうね。それならばアールスハイン殿下のお使いになら無い部位などあれば………」
「王太子妃殿下、私は一介の冒険者ですよ。王太子妃殿下のお選びになった部位以外は売り払う予定なので、どうぞお好きな部位をお選び下さい」
「ですがドラゴンの素材と言われましても、わたくしには判断が出来かねます」
王太子妃様が凄く困った顔になってる。
そして部屋の外が何やら騒がしい。
コンコンコンとノックの音がして、王太子妃様が応答すると、見た目からして執事!って感じのおっさんが王太子様の登場を告げた。
立って挨拶待ちの態勢に。
王太子様にも話が通っているのか、執事さんを残して他は部屋の外に出された。
「ようこそミルリング国へ!アールスハイン殿下、お久しぶりです!」
「王太子殿下、お久しぶりです。今は一冒険者として活動しておりますので、ご挨拶もせずに申し訳ありません」
「いえいえ、ご活躍は聞いております。この度もダンジョンの階層更新をされたとか、素晴らしいですね!」
「ありがとうございます。仲間にも恵まれております。ところで王太子殿下はドラゴンの素材ならばどの部位をご希望ですか?」
「ハハハ、ドラゴンとはまた夢がありますね!いつかドラゴンの素材が手に入るのなら、ドラゴンメイルは幼い頃に憧れましたね~」
「あなた!」
「ん?」
「ええ、是非ともドラゴンメイルをお作り下さい」
「え?」
「そんな!いけませんアールスハイン殿下!」
「王太子妃殿下から、王太子殿下へのプレゼントとしては、とても喜ばれると思いますよ?」
「え?なんの事だい?」
王太子殿下はドラゴンの事は聞いてなかったようで、とても不思議がってる。
王太子妃様から説明を受けて、途端に困った顔になる王太子様。
「ありがたいお申し出ですが、それは受け取れません」
「王族の方が率先して慣習を破ってはいけないでしょう?是非ともお受取り下さい」
アールスハインがごり押ししてる。
「ですが、それではアールスハイン殿下方のドラゴンメイルは足りなくなるでしょう?」
「十分に足りますよ。今回狩ってきたドラゴンは七匹いますので、小型のものでも一匹で一人分のドラゴンメイルが作れるでしょうし」
「七匹?!え?七匹ものドラゴンを倒されたのですか?!」
「その内六匹は小型のものでしたけどね」
「それでもドラゴンですよね?お強いとは聞いておりましたが、それ程までとは!」
信じられないのか、ページュリーの方を見て、ページュリーに頷かれてさらに驚いている。
王太子妃様は驚き過ぎて顔色が悪くなってるし。
「持っているのはウインドドラゴンが二匹分、ファイアドラゴン、アースドラゴン、ウォータードラゴンが二匹分、それとアイスドラゴンがこれは加工をしていないものがそのままありますが、どのドラゴンにされますか?」
唖然としてる王太子様と王太子妃様に構わずアールスハインが話を進めてる。
ページュリーは別の意味で唖然としてる。
自国の王太子殿下が敬意を持って殿下呼びするアールスハインの事を凝視してるし。
たぶん素材を置く用に用意されてる台に、ドラゴンの加工された素材を並べていく。
アイスドラゴンは加工もしてないし、丸々一匹あるのでここでは出せません。
部屋の隅に居て、やっぱり唖然とはしてるけど、いち早く正気付いた執事さんに軽く声をかけられて、出された素材を見てまた固まる王太子夫妻。
執事さんも珍しいドラゴンの素材に、心なしか目が輝いているように見える。
ドラゴンのドロップは皮と牙と爪と目玉、それと魔石。
これを加工しやすい素材として手を加えると、皮は皮と鱗に分けられ、牙と爪は芯とその他に分けられ、目玉と魔石は魔力が抜けないように処理される。
何処かの小国では、ドラゴンの目玉が王冠に飾られてるとか。
魔石は魔道具にすることしか考えてなかったけど、宝飾品としても使えるようです。
この世界の宝石は何年も置いとくと溶け消えちゃうそうだから、見た目綺麗な魔石の方が、価値が高かったりする。
ちなみに真珠は魔物の貝から出てくるので、魔石に似たような扱いです。そして値段が恐ろしいです!
そろそろと再起動した王太子御夫妻は、目の前のドラゴン素材にほう、と声を漏らして見いっている。
見てるだけで中々選んでくれないので、
「では、王太子殿下にはこの大きいほうのウォータードラゴンの鱗と皮を、王太子妃殿下には、この見た目も形も加工しやすそうなアースドラゴンの目玉を献上させて頂きます!他にご希望の部位があれば仰って下さい」
アールスハインが笑顔でゴリ押しに出た模様。
王太子御夫妻は大変恐縮していたけど、ゴリ押しに負けてました。
三日後のお茶会までは、客間に泊めてくれるそうです。
遠慮したのに、今度はこっちが負けました!




