アシュリ鉱山のダンジョン 3
【6/10 書籍発売】
誤字報告、感想をありがとうございます!
何時もよりもさらに誤字報告が多いのは、見直す時間が中々取れないから、と思いたい。
すみません、反省してます!
フクフクふわふわのプラムに抱き付いていつの間にか寝てた俺です。
ゆさゆさされて起きると、また傷だらけで苦笑してるアールスハイン達。
戦闘は終わったようで、ドロップ品が部屋のど真ん中にあり、ディーグリーとユーグラムはプラムに抱き付いている。
取り敢えず起きて皆に治癒魔法を掛けて部屋を出る。
一匹入る前と出た後で姿が変わっていて、何時も以上に鉱山からの見学者がザワザワしてるけど、構わず休憩スペースへ。
ユーグラムとディーグリーがプラムに引っ付いて離れないので、夕飯は作り置きのカレーと熊肉のカツでカツカレー。
カレーの香りには敵わなかったのか、ユーグラムとディーグリーも食卓について、皆さんガツガツ食べる。
ガツガツガツガツ食べて、何度もおかわりしてる。
カレーは飲み物ですか?そうですか。
寸胴いっぱいのカレーが一食で無くなった。
そしてプラムのもふり大会が開催されてる。
うん、癖になるさわり心地だからね!
進化?したプラムは、背中側が薄灰色で、腹側が真っ白。ジャンガリアンですか?
円らな真っ黒の目にフクフクの頬っぺた、前世のハムスターよりも鼻先が短い感じ?
丸っとしたと言うよりぽてっとしたシルエットの、さわり心地の良いハムスター。
尻尾だけが以前の名残を残してほんのり赤と灰色の縞々。
とても可愛い。
大きさが可笑しかろうと、フワモコのぽてっとした生き物はとても可愛い!
だけどよ~~~く見ると、出し入れ自由な爪が妙に鋭かったり、ビタンと床を叩く尻尾が威力増し増しだったり、ちょろっと出てる前歯が鋭利だったり。
プラムさん、可愛さだけでなく、強さも増し増し?
おはようございます。
天気は相変わらずの雪。
ダンジョン内なら雪は降らないけど、外の鉱山では幾つものかまくらのようなものが出来ていて、そこからこちらを観察している様子。
酒盛りしているのも見えるので、肴にされてる感じ。
朝御飯を食べて新たな部屋へ。
扉を閉めた途端に攻撃が来るのは予想済み。
今日のドラゴンは黄色と水色の二匹。
何時ものようにヒャッハーと飛び出そうとしたアールスハイン達よりも先に飛び出したのはプラム。
「ヤヤヤーーーー!」
雄叫びを上げて水色のドラゴンに向かって突進していく。
水色ドラゴンもボケッと見ている訳もなく、ブレスで水の弾丸を撃って来るけど、プラムのバリアに弾かれてる。
「ヤ!ヤ!ヤヤ!」
一言ごとに鋭い爪で攻撃するプラム。
アールスハイン達の魔法剣と同じくらいドラゴンを傷付けてる。
「ヤッヤーー!」
掛け声と共にクルッと回転しながら、尻尾での強力な打撃!
小型とは言えドラゴンを吹っ飛ばす威力。
「Gurrrrrrr」
壁に激突したドラゴンがプラムを睨みながら威嚇するように低く鳴く。
「ヤーヤヤー」
挑発するように鳴くプラム。
「あいつ、あんなに強かったのか」
ボソッと呟くページュリー。
隣で訓練してた奴の実力に驚いている様子。
だけどね、飼い主である俺の方が驚いてるから!
アールスハイン達が四人がかりで倒そうとしてる魔物を、一匹で危なげなく相手してるから!
愛玩動物としか思ってなかったのに!
何故か他のペット達はプラムの様子を見守る態勢。
一応ページュリーの訓練には付き合ってるハク。
でもページュリーもプラムの戦い振りが気になるのか、よそ見して何時もより多く飛ばされております。
よそ見しながらも支障無くバリアが張れるようにならないとね!
プラムのバリアはユーグラム並みに丈夫らしく、バリアごと飛ばされる事はあっても、傷一つ無く戦えてる。
アールスハイン達はユーグラム以外、意外と怪我してる。
それに治癒魔法を飛ばしながら眺めてる俺達。
ポメラニアンスタイルのラニアンを撫で、デブ猫スタイルのソラの腹を揉み、ハククッションに埋もれて、たまに頭の上のルクスに頭の上を歩かれて。
もうページュリーも集中出来てないので、一緒に観戦してる。
「プラムつぇ~な~」
「ね~」
「俺も訓練したらあれくらい強くなんのかね?」
「なんじゃない?」
「アールとかタスクとかには追い付ければ良いな~」
「がんばれー」
「おう、よし!ハク手伝ってくれるか?」
「ム!」
ハククッションがいなくなってしまったので、今度はラニアンがクッションになってくれた。
これもまた良し!
連日の昼飯抜きは切ないし、まだまだ幼いペット達に空腹を我慢させるのも可哀想なので、匂いが漏れないようにバリアを調節して、料理をしてます。
昨日カレーを食べ尽くされたので、それも新たに作り、その他にもビーフシチューやクリームシチュー、角煮等も作ってる。
それをペット達にも食べさせて、俺も食べる。
ページュリーも食べる。
ページュリーはまた訓練に戻り、俺は料理の続き。
カボチャプリンにモンブラン、スイートポテト。
フライドポテトを大量に揚げている。
たまに摘まみながら戦いの様子も見る。
トンカツチキンカツ、メンチカツにコロッケ、唐揚げ竜田揚げ、木の芽の天ぷらを揚げた所で油の匂いにやられて終了。
まあ魔物の肉を使っているので、みたいな料理だけど。
何処かの総菜屋か?ってくらい山盛りの揚げ物。
うん、揚げたてをそのまま冷めずに保存出来るからって、やりすぎた!
バリアの外を見れば、皆それなりに傷を負っているけど、戦闘もそろそろ終盤。
ページュリーもボロボロだけど怪我はなさそう。
カボチャプリン片手に観戦してたら、ペット達も寄ってきて、カボチャプリンに興味津々。
スプーンですくって食べさせてみたら、ソラとラニアンは一口だけで満足し、ルクスが容器に体ごと突っ込み食べている。
気に入ったのはわかるけど、自分の体積以上のプリンを食べ尽くすって大丈夫?
まるっとした見た目が、楕円になってますけど?
とても満足そうに、飛ばずにジャンプして俺の腕を登り、肩、頭へと登りそこでフクッと丸まった。
何時もよりプリンの分重くなった感触。
アールスハイン達だけでなく、プラムの戦闘も同時くらいに終了し、とても誇らしげにこちらに来る面々。
治癒魔法で傷を治し、ドロップ品の回収。
皮と肉と爪と牙、目玉と魔石。
それの二匹分を回収して、さて部屋を出ようとしたら、微かな声が聞こえた。
空耳かとも思ったけど、やっぱり聞こえる。
周りを見回して声の主を探していると、
「ケータ、どうした?」
「こえ、きこえる」
「声?」
皆もキョロキョロしながら耳を澄ましているが、俺以外には聞こえてない様子。
ん~?と思いながらも探していると、洞窟の奥、水溜まりと呼びたくなるような小さな泉から声が聞こえる。
覗いてみると、ボンヤリとしたシルエットと目があった?
「よんだ?」
『ああ、やっと見付けてくれた!助けてくれ!』
「どーしたの?」
『魔物に捕えられ、ここに閉じ込められた。自分では出られないんだ』
邪悪な気配はないようなので、泉に手を突っ込んで、その曖昧な存在を掴んでみる。
泉に手を入れた時にピリッとした静電気のようなものを感じたけど、特にそれ以外は無し。
パシャンと泉から引き抜いたのは、緑の半透明な人形のようなもの。
前にも見た覚えがあるね?
「かぜのせーれー?」
『ああ、元は風の大精霊と呼ばれていた。力を削がれ、だいぶ縮んでしまったがな』
「どんな~、まものにやらりぇたの?」
『あれは、リッチだと思う。通常の魔物には精霊は捕まえられないから』
「りっち~?」
「リッチは不老不死の骸骨の魔物だな」
アールスハインが説明してくれる。
『そう、ただし、通常のリッチなどに負けやしないんだが、あれは少々勝手が違った』
「どんなふう~に?」
『精神体である精霊を捕えられる、触手のようなものを持っていた。それで俺も捕えられた』
「しょくしゅ」
『そしてこのダンジョンの泉に封じられた』
「出られなかったの?」
『ダンジョンとは特殊な魔力に満ちていて、精霊の力が万全には使えない場所なのだ。その上水中に沈められた事で、身動きもままならず、力を吸い取られた。悪いがダンジョンの外まで出してはもらえないだろうか?』
「えっと~、もうちょっと居るよ?」
『ああ、人間のちょっとの時間など些細な事、小さき聖獣の時間でのちょっとならば、さわりがあるが』
「にんげんのちょっとなら、だいじょうぶ~?」
『ああ、それならば問題ない』
「せーれーなに食べるの?まーりょく?」
『ダンジョン内の魔力は食えんがな』
「せーまほーいる?」
指先に聖魔法の滴を作ってみると、
『おおお!これはありがたい!』
小さな両手で捧げ持つように受け止めて、ゆっくりと飲み込んだ。
フワッと光った精霊は、大きさは変わらないが存在感が増したように感じる。
ちょっとだけ濃くなった。
精霊や聖獣の言葉は人間には理解出来ないらしく、アールスハイン達にも説明して、精霊も暫くは共に行動することになった。
部屋から出ると、向かい側の鉱山が一際盛り上る様子が見える。
音は聞こえないけど、こっちを指差して何かを叫んでる様子も見える。
休憩スペースへ行って、大量に作った料理を出す。
今夜のメニューはビーフシチューにパンとサラダ。
ビーフシチューの肉はかなり大きな塊にしたので、食べごたえもあって若者の胃袋でも満足感があるだろう。
デザートにカボチャプリン。
洗面器サイズを二個作ったのに、ペロッと食べたよ。
プラムは元々手先が器用なので、大きさや種族が変わっても上手にスプーンやフォークを使いこなしてる。
カボチャプリンも凄い勢いで食べてた。
『そのでかい妖獣は生まれたてか?』
「きのう、すがたかわったよ?」
『魔力がまだ不安定だな。少し多目に魔力を分けてやると良い』
「よーじゅーって、とちゅうで、すがたかわる?」
『見た目の種族と言うことか?』
「そ~、りとるれっどべあだったのに、はむすたーなった」
この世界ではレッサーパンダはリトルベアと呼ばれ、赤いのは特殊個体らしいよ。
『妖獣とは元々妖精が、自分達を守らせる為に自然界にある核に魔力を与え、育てたものだ。妖精が望んだ姿で生まれてくるが、妖獣が自我を持ち成長の時期が合えば、姿を変えることもある』
「かく?」
『核とは、自然界でたまに起こる魔力溜まりに出来る、魔力で出来た雫のようなものを言う。妖精はそれを集めて妖獣を作る』
「へぇ~、ものしりね~?」
『元は大精霊だからな。妖精よりも長く生きてる分、知ってることも多い』
「へぇ~。プラム、だいじょうぶ~ならいーよ」
『大丈夫どころか、だいぶ成長が早いように思える。十分な魔力を与えられている証拠だろう。まだまだ幼体だが、いずれかなり強くなるだろう』
妖獣には精霊の言葉が理解出来るのか、プラムが照れたり興奮したりしてる。
「おおきしゃも、かえられりゅ?」
『もう二、三度魔力を与えれば、変えられるだろうよ。本人が望めば、だがな?』
「プラム、いどうのときは、ちいしゃくなってね?」
「ヤヤ!」
「たたかう時だけ、おっきーのかっこいーよ?」
「ヤヤ?」
「ふーだんは、ちったいほーがかわいいよ?」
「ヤー!」
プラム以外のペット達も瞬時に小さくなるのが可愛い。
それを見たプラムも納得してくれた様子で一安心。
あまりに巨大なハムスターを連れ歩いてたら、無駄に目立つからね!
プラムさんの成長ヘのコメントも頂きありがとうございます!
某pi○ivさんで、巨大化したハムスターに抱き着くイラストを見てやっちゃいました!
そのイラストのハムスターと抱き着く人間がとても幸せそうに見えて!
後付けの無理矢理っぽい理由はそのせいです!ごめんなさい!




