ちょっと飛ばして2週間経ちました
昨日はすみませんでした。
これからは大丈夫、なはず。
二股女とキャベンディッシュのいないこの7日間は、とても平和に過ぎた。
朝起きて、ご飯食べて、魔法習って、ご飯食べて、アールスハインがお仕事するのを横で手伝ったり、シェルの用意してくれた絵本や図鑑を読んでみたり、昼寝してみたり。
幼児の体にも大分慣れてきて、ヨチヨチ歩きが出きるようになって、飛行速度もかなり上がって、三輪車位の速さから、自転車位にはなったよ。
呂律は…………微妙な所。
そして、今日は、一月有ったアールスハインらの夏休み最終日。
明日からは高等魔法学園に入学して寮生活が始まる。
二股女が居なくなって、キャベンディッシュが、不満タラタラながらも王様の言い付けを守り、一定の基準に達しているか、試験を受けるらしいよ。
チビッ子組を除く王族皆と宰相さん、将軍さん、テイルスミヤ長官とで、結果を見届けるらしい。
なので、キャベンディッシュを除く、王族皆で昼食を食べた後、王の間って所に集合。
学力とマナーのテストは昨日の内に済ませて、今日は魔法の訓練の成果を見せるんだって。
王の間って言うのは、国内の上位貴族の謁見に使う、広めの部屋で、外国とか下位貴族とかが王様に謁見出来るのは、そのまんま謁見の間って言う所なんだって。
で、王の間の真ん中にある広いスペースに、魔法訓練でよく見かける人形が設置されている。
キャベンディッシュが、成果を見せるのは、魔力循環の玉を使った色変えと、各魔法玉を投げる基本の攻撃魔法、最後にバリアの魔法。
以上!ってまだそこ?と思うかも知れないけど、学園の1年生は、そこまでが必修なんだって、ん?1年生?てことは、2年生になるキャベンディッシュはどうしてそれを今更の課題として出されてんだ?と思うかも知れないけど、学園で試験されるのは、自分の得意属性一つだけらしく、キャベンディッシュは得意らしい火属性のみで試験に合格したらしいよ。
今回は、学園の試験よりも上の成果を出せって事で、少なくとも3属性の魔法玉攻撃で、ある程度の破壊力を見せないと合格にはならないらしい。
俺とアールスハインは、とっくにクリアした課題なんだけどね!
「では、皆さんお揃いのようですし、これよりキャベンディッシュ王子の魔法訓練の成果を見せて頂きましょう。それでは、魔力循環の玉を使って色変えを行って下さい」
テイルスミヤ長官が仕切って、キャベンディッシュを前に出す。
「あぁ」
不機嫌そうに短く返事して、立ち位置に着く。
白、黄、黄緑、緑、青緑、青、と色変えをして終了。
けっこう時間がかかった割に、今一綺麗に色変え出来ていない。
結果を伝えないまま、テイルスミヤ長官が次に進める。
「では次に、あの設置してある人形に、魔法玉の攻撃を行って下さい」
無言のキャベンディッシュ。
始めに得意属性の火魔法玉を撃ち込み、人形を半焦げにして、土魔法玉で礫を人形にぶつけて痣を作らせ、風魔法玉で切り傷を人形に作らせて終了。
どれも大した成果では無いが、キャベンディッシュは、渾身のドヤ顔をしてこちらを見ている。
むかつく顔に、魔法玉を投げていいだろうか?
「それでは最後に、バリアの魔法を見せて下さい」
「わかった」
キャベンディッシュのバリアは、一見とても頑丈そうな分厚い半透明の窓の無い箱?のような四角いバリアだった。
テイルスミヤ長官が軽く叩いても壊れなかったが、ちょっと強めの蹴り一発で壊れた。
しょうも無い結果である。
バリアの意味を考えろと言いたい。
それを見ていた面々も、微妙な表情になっている。
「以上で魔法訓練の成果発表を終了致します」
テイルスミヤ長官が、王様に礼をすると、慌ててキャベンディッシュも頭を下げた。
王様は軽くため息をつくと、
「結果、キャベンディッシュの実力は7日前よりは大分上がった事は認めよう」
「やった!見たか出来損ない!これが私の実力だ!」
「黙りなさい、王のお言葉を遮るとは何事だ!」
次期女王なクレモアナ姫様が、厳しい顔でキャベンディッシュを窘める。
「実力は上がったが、まだまだ力不足、学園に行くことは許すが、引き続き能力の引き上げに努めよ。実力不足で1つでも試験に不合格となれば、即刻城へ戻し1から学び直させる事とする!」
「お任せ下さい父上!私、キャベンディッシュは、最高の成績で学園を卒業致します!」
自信満々に宣言しているが、その自信はどこから来ているのだろう?
見ている皆がスン顔になっている。
怖いからその顔止めて欲しい。
得意顔でこっちをニヤニヤ見ているキャベンディッシュ。
皆が冷め切った目で見ているが、全く通じない。
ある意味メンタル最強の奴を放置して解散。
部屋に戻ったアールスハインと俺とシェルは、明日からの寮生活の準備です。
助は自分の部屋へ。
アールスハインとシェルの荷物は、既に寮に揃っているので、主に俺の荷造り。
と言っても着替え位で、元々小さいので、一月分の着替えがトランク1つに纏められただけで済んだ。
他には特に持っていく物も無いしね!
暇な俺は、リュックの中身でも整理しますかね。
神様が神銀詰めたり、ビッグガガの針が丸ごと入ったり、おかしな現象が起こってるからね。
テーブルの上に1つ1つ中身を並べる。
スマホ、ノートパソコン、筆記用具、ハンカチ数枚、ティッシュ、ソーイングセット、メモ帳、財布、着替えのワイシャツ数枚と下着数枚、靴下も数枚、タオル数枚、
「おいおいおい!出てくる量がおかしくないか?」
アールスハインに突っ込まれた。
自分でも思ってたので、驚きはしなかったけど、前世で180センチ越えてた俺が大きめのリュックとして買ったので、本来の大きさは、今の俺が立ったままスッポリ入る大きさだったけど、この世界に来たときには、リュックごと縮んでいたので、今のリュックは、20センチ位しかない。
着替え何かは、今の俺サイズになってるのに、タオルは元の大きさ、スマホは元の大きさなのに、パソコンはちょっと小さくなっている。筆記用具も今の俺サイズ、ハンカチ、ティッシュ、メモ帳、ソーイングセットは元の大きさ、これ等が20センチのリュックから次々出てくる。
何この俺得仕様。
ギャル男神スゲーな!グッジョブ!と小さな親指を立てておく。
そして更に、荷物を取り出す俺!
エナジードリンク2本、チョコバー数本、飴玉十数個、開封していないコーヒーのペットボトル2本、プロテインバー数本、カロリーなバー数箱以上!
「……………その小さな袋にどうやったらこれだけの荷物が詰められるんだ?」
「ねぇ?」
「ねぇ?じゃねーよ!なんなんだその袋?」
「…………まさか、マジックバッグでは無いですよね?」
恐る恐る聞いてきたシェルの言葉に、アールスハインが固まる。
マジックバッグって、あのゲームの定番の?それは嬉しいね!
俺がニコニコ笑っていると、アールスハインが頭を抱え出した。
「すぐにテイルスミヤ長官に来てもらえ」
「はい」
深刻な顔で、シェルに命令するアールスハイン。
何々?マジックバッグってそんな大事?
シェルが帰って来るまで暇なので、スマホを弄って見ましょう!
………電源を入れて……フム、ウェブページが開けない。
SNSは勿論、アプリも使えないし……使えるのは、計算機とカメラ、ダウンロードした音楽は聞ける、後は時計位か。
次にパソコンは………スマホと同じようなもんか、文書作成ソフトは使える。
メールや電話は神様専属?らしい。
繋がる人がそもそもいないけど。
他はこの世界にも有るものばかり?
食べ物は日持ちするものだから大丈夫。
アールスハインが隣で興味津々で覗いているが、スマホやパソコンの説明など出来ないので、聞かれない限り何も言わない。
ダダダダダダ、バタン!
らしくなく凄い物音をたてて部屋に入って来たのは、肩で息をつくテイルスミヤ長官。
「マママ、マジックバッグとは本当ですか?!」
勢いに固まる俺とアールスハインに詰めよって来るテイルスミヤ長官。
アールスハインが、コクコク頷いて、俺の持ってるリュックを指差すと、恐る恐る俺からリュックを取り上げて、色々な角度から見て、全部のポケットに指を入れて、リュックを裏返して、逆さにして、首を傾げた。
「?マジックバッグと聞いたのですが、本当にこれがそうなのですか?見たところ、ちょっと作りの変わった、ただの袋に見えますが?」
「マジックバッグかは分からないが、その袋の中に、このテーブルの荷物が全て入っていたのは確かだ」
「テーブルの上………これがこの袋に?」
「あ、ああ。袋に収まるとは思えない量の荷物が次々出てくるもんで、シェルがマジックバッグでは、と言い出してな、長官に確かめてもらった方がいいかと思ったんだが……」
「そうなのですね………ケータ様、ここにある荷物をもう一度袋に仕舞ってもらえますか?」
「いーよー」
テイルスミヤ長官に頼まれたので、ヒョイヒョイ荷物を仕舞って行く。
全部仕舞い終えて、テイルスミヤ長官を見ると、唖然とした顔。
「こ、これは、確かに全て収まっていますね………………私が触った時はただの袋に過ぎなかったのに、ケータ様が触れた途端にマジックバッグになった、としか言えません…………ケータ様、ケータ様は今、魔法をお使いになりましたか?」
「んーん、ちゅかってないい」
「………これは、どう言う事でしょう?………ケータ様、他の物も仕舞えるか試して頂けますか?」
「いーよー」
テイルスミヤ長官は、その辺にある物を次々に俺に渡してくる。
本を数冊、クッション数個、椅子、お茶を運ぶためのワゴン、小さめの棚、それらが全て俺の持つちっさいリュックに収まった。
「…………………」
「………………………」
「……………………………これは、間違いなくマジックバッグですね…………」
その時になってシェルが部屋に入って来る。
「やはりマジックバッグでしたか」
呆然としていたテイルスミヤ長官が、シェルの声で我に返る。
「そのようですね、ただしケータ様にしか使えない物でしょう」
「そんな限定的なマジックバッグも有るのですね?」
「いえ、マジックバッグ自体は非常に稀少な物ですが、以前に1度見た経験があります、が、誰にでも使える物でした。それに、どんな魔法が使われているのかは、未だ判明しておらず、誰か個人の所有にするなどの機能をつける事は不可能だったはずです」
「ですがこのマジックバッグは、ケータ様にしか使えない物なのでしょう?」
「……その様です……………他人でも入れる事は可能のようですが、出すことは出来ないようです。………………………これは、神の力が物にまで及ぶ、と言う事でしょうか?この袋は、ケータ様が異世界から持っていた物ですか?」
「しょーね」
「そうですか………もうこれはそう言う物として納得するしか無いでしょうね………ちなみに、ケータ様はこのマジックバッグにどんな魔法がかかっているか分かりますか?」
「んー?」
何だか大事になってきた。
マジックバッグって、ゲームの定番のアイテムなんだから、この魔法の世界ならもっと普及してると思ってた。
非常に稀少らしいよ!ビックリだね!
テイルスミヤ長官に聞かれたけど、何の魔法か何て分かんないよね!
ん?でも待てよ、甥っ子達とテレビで見たあの青いタヌキさんのポケットってそれじゃね?甥っ子があのポケット買ってーって、四男な弟秀太にねだってた時、あいつ何か言ってたな、空間魔法とか、時空間魔法とか……………あいつオタクだったから、時々真剣に魔法とか超能力とかを身に付けられないかとか考え込んでいて、将来が心配になったもんだった。
………おっと、今はそんな事じゃない。
空間魔法とか時空間魔法とか言われてもわけ分かんない、けど青タヌキさんのポケットなら知っている。
キョロキョロと周りを見回し、入れ物を探すが、見当たらない。
「しぇりゅー、バッグちょーだい」
「バッグですか?大きさは?」
「てちとー、マジックバッグちゅくりゅ!」
「は?マジックバッグを造ると仰いましたか?!ケータ様出来るのですか?」
テイルスミヤ長官が凄い食い付いて来た、けど実験してみたいだけで、出来るかは分からない。
「わかんにゃい、やってみりゅ!」
「ケータ様、これでも良いですか?」
シェルが持ってきてくれたのは、箱形のウエストにベルトで固定するバッグと言うよりポーチだった。




