残り半周 帰国
誤字報告ありがとうございます!
年越しパーティーも終わり、ゲンゴロウお爺ちゃんの個人的付き合いのパーティーも終了したらしく、残り半周の旅に出る予定を立てられるようになった。
その前に、年越しパーティーでやらかした元姫達の処遇が決まった事を、スサナ王子直々に知らせに来てくれた。
元姫二人は、王様や王妃様には隠していた日頃の行いを、旦那さんや使用人、他の貴族からも次々に暴露され、中には違法な行為も行われていたとかで、夫とは離婚。
その上でアマテ国では一番厳しいと言われる修道院で生涯神に仕える事、と決まったそうな。
元姫の二人の溜め込んでいた衣装や宝石、その他の持ち物は全て換金され、被害にあった人達に慰謝料として支払われるらしい。
王家からは公爵家当主と伯爵家当主に慰謝料が支払われ、それで決着となった。
妻を御せなかったからと、公爵家当主と伯爵家当主は慰謝料を辞退して、その分被害者に上乗せで払われる事になったそうな。
最後まで見苦しく抵抗していた元姫二人は、父親と母親にかつてない程厳しく叱責されて、呆然としていたとか。
そんな悪事を全く知らなかった二番目のお姉さんな元姫もショックを受けて寝込んでいるとか。
娘を正しく躾られなかった元姫二人の母親の王妃様達は、自ら反省の為に離宮に籠っているとか。
残された妹姫達の教育が全面的に見直されるとか。
スサナ王子が物凄く疲れた顔で、改めて謝ってきた。
まあ、今後この国でアンネローゼを目に見えて脅かす人物は居なくなっただろうし、アールスハインも一先ず安心したようだし、一件落着かな?
新年すぐから降りだした雪が積もる道でも、マグマグは物ともせずに突き進み、ダンジョンのある町まで三日。
町で一泊して装備を整え森の中の道を進む。
整備された道ではなく、踏み均された道は、馬車は通れず徒歩での移動。
森に住むのは多くが獣人やエルフ等の種族で、小さな集落に分かれて暮らしているらしい。
道なりに歩けばだいたい一日位の距離に集落がある。
お城の庭師のおじさんの予想では、今年は雪が多く降るそうで、餓えて亡くなる者が出ないと良いが、とゲンゴロウお爺ちゃんも心配そうに語ってる。
じゃがいもの発見で少しは緩和されるといいけど、それを教えるのも旅の目的になってる様子。
なので飛んでます。
少しでも早く知らせた方が良いからね。
道中ゲンゴロウお爺ちゃんにも、バリアの習得を勧めました。
俺が張っても良いんだけど、自分で出来るに越した事はないからね。
マティアスさんは自分で出来ます。
ボードに乗ることと、バリアの習得を騎士団に混じって訓練してきたそうです。
そこまで旅に同行したかったのか?!食への執念を感じます!
元々バリアの魔法は世界に広く知られている。
最初に発見したのは、元帝国の一般騎士で、戦争の際、砕かれた木の盾の代わりを咄嗟に魔法で作ったのが始まりらしい。
その後改良されたが、最初が盾の形だったもので、バリアは盾形と言う固定観念が出来てしまい、改良と言っても大きくするとか、厚くするとか、頑丈にするとかの方に向けられた。
ダンジョン内で俺の張ったバリアを見てたゲンゴロウお爺ちゃんは、その丈夫さと便利さ、安全性にとても驚いていた。
なので言葉だけの説明で、理解し試行錯誤して、まだ丈夫さは足りないものの、一応は成功した。
お爺ちゃんなのに思考が柔軟で、好奇心旺盛なのも凄いね!
町と言うには小さな集落は、自給自足の生活で、土地や気候によって収穫が左右される過酷な環境。
毎年幼い子供や老人なんかが亡くなってしまうことも珍しくない。
ゲンゴロウお爺ちゃんが、じゃがいもの説明をし、畑の雑草や石を捨てる場所を探すと、結構な数のじゃがいもを発見。
今まで見たこともない食材を食べるのを躊躇う人達に、簡単な調理方法を教えるのは料理長マティアスさんの役目。
俺達はそれをうまうまと食べる係。
子供の俺が食べる姿は、妙な説得力が有るらしく、集落の人達も恐々と食べて目を見張る。
全ての集落を回るのは無理なので、歩いて行ける距離の集落には、説明を頼んだ。
皆さん食材が増えたので、ホクホク顔で快諾してくれる。
呉々も緑に変色したものと、芽の部分は食べないように!日の当たらない場所で保存するように!と厳しく言い聞かせたよ。
飛び石のように集落を回って、じゃがいもを広め、その代わり集落独自の食材を紹介してもらう。
流石島国。
海苔とひじきと、ここでも鰹節を発見!ネコ町の鰹節とは少し風味が違うけど、これはこれで旨い!
海苔は板海苔と佃煮を別々の集落で発見したよ!
板海苔は韓国海苔くらい荒い感じだし、佃煮は味がうっすかったけど!
海苔巻きおにぎりと、ひじき煮と、味の濃い佃煮をそれぞれの集落でご馳走してきました!
米も塩もこれからは国内にも普及するだろうし、ご飯のお供は大事よね!
アマテ国の獣人さんやエルフさんは、普通に人間族と共生してて、偏見や差別はなく、アールスハインが感心してた。
エルフさん達には拝まれそうになったけど、何とかやり過ごした。
ディーグリーは集落単位での買い付けはせず、ラバー商会のアマテ国支部の人にどこどこの集落にこんな商品があるよ~と知らせるだけにした。
突然大商会から大量の注文がきても、対処できないだろうしね。
ユーグラムは痩せた子供を切ない目で見てた。
それを女の子達が離れた場所からポ~~っとした目で見てた。
でも子供に人気なのは助だった。
子供って少しくらい乱暴でも遊んでくれる人に懐くからね!
飛んで、たまに雪の上を滑って移動したので、一月掛かる行程を二週間で走破してしまった。
予定よりだいぶ早いけど、帰国します。
その前にスサナ王子とアンネローゼに挨拶するために、お城へ。
ユーグラムは教会へ。
ディーグリーはラバー商会へ。
俺とアールスハインと助とマティアスさんはお城へ。
ゲンゴロウお爺ちゃんが、スサナ王子とアンネローゼへの取り次ぎをしてくれて、客間で待つ。
ゆったりとスサナ王子にエスコートされて部屋に入ってきたアンネローゼは、ドアが閉まった途端俺を抱っこして、
「お兄様、予定より随分早いではありませんか!もうアマテ国を出てしまうのですか?」
冬の集落の食料事情の事を話し、少しでも助けになればとじゃがいもの事を言えば、
「それなら仕方ありませんが。もう少し街を見たり観光されていっても良いのではないですか?」
「街は帰りがけにでも見られるし、心配しているだろう皆にローゼの様子も知らせたいしな」
「わたくしの事なら心配ありませんわ!」
「他国へ行った娘を心配しない親はいないさ」
「問題無いとちゃんとお知らせ下さいましね?」
「ああ。やらかしている事もちゃんと報告するさ」
「わたくしは対処したまでですわ!」
「まあ、今回は仕方無い面もあるが、程々にな?」
「フフフ。わたくし売られた喧嘩は買う主義ですの!」
「やり過ぎには気をつけろ。逆恨みされても面倒なだけだからな?」
「逆恨み出来ないほど、叩きのめせば良いのですわ!」
「スサナ殿、呉々も妹を頼みます!」
「最善を尽くします!」
アールスハインとスサナ王子は、兄としての苦労を分かち合うように固く握手してる。
ヤンチャな妹を持つと、兄は大変だよね!
前世にも二人程、手の掛かる妹が居た思い出。
挨拶も済ませ、ゲンゴロウお爺ちゃんに港まで見送られ、リュグナトフ国直行の船に乗った。
船の旅は初っぱなから魔物がワサワサ出て、大量の魔物素材が手に入った。
アマテ国のダンジョン以外では、あまり暴れられなかったアールスハイン達が、空を飛びながらバッサバッサと魔物を倒し、ユーグラムが巨大な魔法をぶっぱなしていた。
船乗り達が唖然とする中、料理長マティアスさんが料理しまくって、それを食べた船乗り達が黙ってしまった。
大いに暴れられたアールスハイン達は、ご機嫌で料理を食べて、船長の秘蔵だと言うお酒をご馳走になって、また暴れて。
大変な航海だったのに、始終ご機嫌に過ごした。
リュグナトフ国の港では別れを惜しまれながら見送られ、そこからお城まではひとっ飛び。
ユーグラムとディーグリーは実家に帰り、お城で王様達にアンネローゼの様子を報告すると、ロクサーヌ王妃様とイングリードが爆笑し、リィトリア王妃様がフフフと笑ってた。
王様はこめかみをおさえ、クレモアナ姫様は呆れた顔をしてた。
その後、宰相さんに捕まって、塩の作り方を聞かれ、料理長マティアスさんに丸投げ。
リュグナトフ国でも塩作りが始まりそうな感じ。
二日程のんびりした後に、冒険者ギルドで落ち合い、今度は何処に行こうかとの相談。
護衛依頼を中心に貼り出された依頼書を見ていると、
「あれ?坊っちゃん、こちらで何をされてるんですか?」
いかにもやり手の商人な感じの人がディーグリーに声をかけてきた。
「トウガン。俺は良さげな依頼がないか見てるだけだけど、そっちこそどうしたの?」
「あ~、坊っちゃんが冒険者をしてるってのは本当だったんですね~?私はこれから商用でミルリングまで行くので、護衛依頼を出しに来たんですよ」
「お!それなら俺達に依頼しなよ!これでもAランクだからね~、きっちり守ってやるよ~!」
「なんと!Aランクですか?それは凄いですね!是非ともお願いしたい所ですが、今回は商隊を組んでの移動になるので、他の冒険者達も一緒になりますが、それでも良いですかね?」
ディーグリーがこっちを見たので全員で頷いたら、
「全然構わないよ~!俺達はそこの今宵亭に泊まってるから、決まったら声かけて!」
「分かりました。二、三日中にはメンバーも決まり、準備しますので、今週末くらいには出発になる予定です」
「了解!こっちもそのつもりで準備しとくよ!」
と言う事で、行き先はミルリング国になりました。




