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海外遠征

誤字報告、感想をありがとうございます!

 おはようございます。

 天気は快晴。

 ただいま大海原のど真ん中におります!


 事は、十日前の一本の電話から。

 シュラウナのダンジョン街を出て、さて次は何処へ行こうかと夜営しながら相談してた時に、アールスハインの持っている携帯型通信魔道具が鳴った。

 通信魔道具を持つものはまだ少なく、アールスハインに直接電話をかけてくる者はさらに少ない。


「はい……………全員怪我もなく…………ええ、そうですね………………はい?ええ!そんなことになってるんですか?!…………ええ勿論構いませんが……………はい。分かりました、では後程」


 電話の相手は間違いなくお城からだと思われるが、アールスハインがだいぶ驚いている。

 何事が起きたのだろう?


「………………城に帰る事になった」


「何かあったのか?」


「アンネローゼの婚約が決まったそうだ」


「あ~、確かに早い子ならそろそろかな?お相手は?」


「アマテ国のスサナ王子だそうだ」


「へ~!なかなか良いご縁じゃないですか?」


「ああ、年は多少離れているが、最近は交流も盛んに行われているからな。…………ただ、急な事で驚いて」


「まぁな~、まだまだ子供だと思ってた兄弟が、急に婚約だ結婚だ言われたら驚くわな!自分達には欠片もそんな話が無いだけに!」


 助が自分で言ってゲラゲラ笑ってる。

 確かに~!とか言ってディーグリーもケラケラ笑いだし、皆して一頻り笑った後に、お城へ帰る事が決まった。

 これはあれだね、独身男の自虐ではなく、モテる男の余裕からくる笑いだね!おのれ!


 そう言う事で急遽お城に戻ると、お城で会う人達ほぼ全員にメチャメチャ歓迎され、話をねだられ、引っ付かれて、尻を撫でられ大変な目に遭った!

 お陰で双子王子のお下がりの服を大量に貰った。

 双子王子の服は、とにかく暴れまわる双子王子に合わせて、丈夫で洗いやすい素材のシンプルな服が多いので、冒険者の普段着としても、贅沢過ぎる事もなく一安心。

 王子の服なので着心地も抜群だからね!

 今までの服は回収され、リメイクして他の子供達にいくそうです。

 王族なのにそう言うエコな所が好感持てるよね!


 驚異の成長を遂げた俺よりも、更に頭一個半大きくなっていた双子王子。

 新たに生まれた赤ちゃん王子。

 次期国王のクレモアナ姫様が生んだ王子。

 イングリードの奥さんになったイライザ嬢が生んだ赤ちゃん。

 お城はだいぶ賑やかになっていた。


 イングリードが住む筈の大公家は、一年経ってもまだ修復が済んでなくて、お城で暮らしてる。

 孫可愛さの、宰相の陰謀説まで出ている様子。


 兎に角賑やかな赤ちゃん集団は、兄弟のように分け隔てなく育てられ、何故か祝福をって差し出されたので、おでこにチュウしといた。

 チュウする度に一瞬体がピカッと光るのは何なんだろうね?

 キャッキャと笑う赤ちゃん達にはとても癒されたけどね!


 で、肝心の主役であるアンネローゼは、一年前に見たよりも、だいぶ綺麗な女の子になっていた。

 抱っこされたけど、ちゃんと加減も出来るようになってたよ!

 赤ちゃん達は被害に遭わなかった?って聞いたら、周りは微妙な顔になり、本人は目をそらしていたから、何度かはやらかしてたらしいよ!


 婚約の話は本格的なもので、何処からも異議申し立てもなくすんなり決まったそうだが、文化や風習の違う国に、いきなり嫁として嫁ぐのは不安なので、婚約者として留学するそうです。


 この国では、政略的な意味で幼い頃から婚約させるのは良くない、って風習なんだけど、アンネローゼの婚約は、政略的な意味でなく、アンネローゼの一目惚れから始まっているので、本人達が了承してるので問題ないそうです。


 馴れ初めは、街にお忍びで遊びに行ったロクサーヌ王妃様とアンネローゼが、悪戯心から護衛を撒いて逃走し、街の外に出て魔物退治をしていたら、運悪く大量の虫の魔物の群れに出くわし、多勢に無勢でピンチの所を助けられたそうです。

 なんてベタな出会いか!


 アンネローゼは自分を守りながら戦うスサナ王子の姿にポ~~っとなり、スサナ王子は、城に帰るなり容赦なくゲンコツをくらって涙目になるアンネローゼに、笑いが止まらなくなり、こんな愉快なお姫様を初めて見た!と気に入ったそうです。

 ゲンコツされるお姫様を気に入ったって!

 スサナ王子も中々変わった趣味をお持ちのよう。


 そして、帰還命令は、冒険者としてアンネローゼを留学先のアマテ国まで護衛する事。

 勿論騎士団も同行するけど、良い機会だから外国も見てきたら?って軽いノリで提案されたそうです。


 ちなみに、俺達がお城に居る間、実家に帰っていたユーグラムとディーグリーは、家族にめちゃめちゃ褒められたそうです。

 子玉と素材の事だね。

 そしてラバー商会から素材の代金として、恐ろしい金額を持ってきました!

 あと、教会からも、子玉の定期的な供給を取り付けたお礼として、結構な額の謝礼金を貰いました!

 お城でも魔道具の特許料と、料理の特許?料とを口座に入金済みです!ってシェルが残高の書かれた書類を見せてくれたんだけど、ゼロが多すぎる金額って現実味ないよね!



 アマテ国は、リュグナトフ国から内海を渡った先の島国で、あまり裕福な国ではなかったけど、最近は醤油や味噌、米の貿易でちょっと、いやだいぶ?稼いでいる。


 今まで見向きもされなかった作物や、貿易品になるとは思ってもみなかった物が、バカバカ売れるだけでなく、技術提供という、結構長期に渡る契約もあり、リュグナトフ国は、アマテ国の救世主的な扱いになり、今回の婚約の話は国をあげての歓迎ムードなのだとか。


 国同士の交流に問題は無いが、その行き帰りには魔物が蔓延る海を越えないといけないので、経験として俺達にも声を掛けてくれたらしいよ。


 と言うことで、大海原のど真中です!

 真っ青な空と海、季節柄風は冷たいけど、見渡す限りの青い世界は爽快さが違うね!

 リュグナトフ国の港を出てから三日。

 海の旅は順調。

 大型帆船は風を受けてズンズン進む。

 海賊映画の中に入ってしまった様な変な感じ。

 沖に出ると波は穏やかで、この三日間晴天が続いているせいで、船酔いすることもなく。

 季節風?とたまに魔法使いの風魔法は安定してる。


 ただし、とても暇。

 釣りくらいしかやることがない。

 大型帆船は、意外とスペースがなく、体を動かすにも狭い範囲でしか動けない。

 下手に動き回って綱とか切ったら大惨事だからね!

 綱を使って乗り降りとか、マストの天辺に誰が最初に登れるかとかの競争も、この三日で飽きたし。


 アマテ国までは、順調にいけば船で一週間。

 あと三日何をしよう?


 暇をもて余してカルタ大会やトランプ大会、釣り競争、魚料理教室を開催して時間を潰してたら、やっとお待ちかね?!の魔物が出てきましたよ!

 お馴染みクラーケンに、とにかくデカイ魚、ウツボ?あとは小魚型魔物の群れ。


 三日間の暇は何だったのかってくらいの波状攻撃をしてくる魔物達。

 まあ船にはバリア張ってるし、騎士団も俺達も飛べるので、サクサク狩り放題なんだけどね!

 船乗りさん達が、海での戦い方を教えてやるぜー!って張り切ってたのに、ヒャッホーーー!!と飛び出したアールスハイン達と騎士団が、巨大な魔物相手に無双してたからね!

 唖然と口を開けて見てるしか出来ないよね!

 アマテ国の人達もポカーン顔でした!

 空飛ぶ魔道具はまだまだ外国には売り出してないからね。


 この三日の料理教室で、魚料理もだいぶ浸透してきたので、料理人の人達には材料が向こうからやって来た感覚で、大変ハッスルしてました!


 実はこの旅には、お城の料理長も付いてきた。

 俺達が旅する先々で作った料理は、ラバー商会の協力の元、材料とレシピを同梱してお城に送っていたから、料理長も魚料理にだいぶ慣れてきたようで、更にアマテ国の新たな料理を学ぶ為!ってくっついて来たのだ。


 元冒険者な料理長でも、海を渡るのは中々出来なかった経験だからね!


 倒された魔物は、美味しくいただきましたよ!

 とにかく海の魔物は巨大なので、全部食べきるのは無理だから、俺のマジックバッグにも大量に収納されてるけど。

 あとは一夜干しとか干物にするために干したよ!

 船乗り達は景観が損なわれる!と文句タラタラだったけど、一夜干しを食べさせたら黙りました!

 そして更に魔物の干物が干されたよ!


 そんな後半も、忙しく騒がしく過ぎ、アマテ国の港が見えてきました!


 リュグナトフ国の港は全体的に白っぽい景色だったけど、アマテ国の港は、全体的にシックな色合い。

 家々の屋根が揃って濃い灰色をしてるせいかな?


 船が港に接岸され、多くの人が出迎えの為に待っていた。

 騎士達の後にスサナ王子とエスコートされたアンネローゼが降りて行くと、盛大な歓声があがる。

 その歓迎ぶりにアールスハインが安心したような顔をしてる。

 そんな彼をニヤニヤ眺めながら、俺達も騎士達の後について降りる。


 騎士でも船乗りでもない、明らかに冒険者丸出しの俺達に訝しげな目が向けられるが、スサナ王子がAランクの冒険者チームだって説明してくれて、冒険者タグを見せれば納得してもらえた。

 船旅専門の冒険者も居るらしいよ。


 港町のここに一泊したら、都に向けて今度は陸路の旅になる。

 都と呼ばれる王都までは、馬車で四日かかるそうです。


 今日は、荷物の積み降ろし以外はやることが無いので、この後は少しだけ街の観光。

 俺達も同行して良いそうなので、そのままブラブラ歩き出す。

 降りてみたら地面が歪んで揺れている感覚がして、揺れは少ないと思っていた船は、実は結構揺れていたんだなと思いなおした。


 フガフガする地面を踏みしめてゆっくり街を見て歩く。

 アマテ国は、あまり奇抜な髪色の人が居なくてとても目に優しい。

 基本焦げ茶色の髪が多く、後はグラデーションしてるだけで、赤とか金とかピンクとかは見当たらない。


 建物も木造家屋で、屋根は瓦とはちょっと違う感じの平たい石が積まれてる。

 海産物を売る店もあり、海苔を発見しました!当然大人買いするよね!

 味噌屋と醤油屋でも大人買いして、支払う度に、子供にこんな大金を持たせて!って驚かれたり怒られたりした。助が。


 アマテ国の主食は芋である。

 ただし、獣族の主食がじゃがいもなら、アマテ国の主食は里芋や八ツ頭と呼ばれる芋である。

 茹でてそのままおかずと共に食べる感じ。

 リュグナトフ国に大量に輸出している為、興味を持った人達が米を食べる事も多くなってきたそうな。


 料理長も興味津々で、そこら中の店を覗いては質問して、少しずつ買っていたりする。


 さすがにラバー商会も海は越えないのかと思ったら、有りました!

 この街に合わせた外観のラバー商会が!他の店よりは広いけど、凄く街に順応してるので、ディーグリーさえ見落としそうになってたよ。



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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[一言] 面白くて一気読みしてます。赤ちゃんケータ可愛くて好きでしたが、10センチくらい伸びて終わるかと思ったら90センチになっちゃって赤ちゃんじゃなくなってしまって悲しいです。お願いです縮んで!!
[一言] 楽しく読ませてもらっています。 イライザ嬢は子供を産んでも「嬢」なのですね。宰相が仕事を辞めるまでは「嬢」呼びですかね。 我々にとっては「八ツ頭」は里芋の一品種ですが、この世界では別の食物…
[一言] あのお転婆さんが婚約かあ
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