依頼終了の後のゴタゴタ
誤字報告をありがとうございます!
さて、奴等が風呂に行ってる間、ウエイトレスのお姉さんが、態々椅子を拭いてから、どうぞ!って笑顔で勧められてしまったので、まったりとお茶を飲んでいる。
別に対戦する義理はないんだけど、冒険者は嘗められると面倒なので受ける事になった。
そして昨日食べたクラーケンの話に。
「いやはや、クラーケンの肉が食えるとは今まで聞いたこともなくて、驚いたぞ!しかし食ってみたら旨いもんで、あれはなかなか癖になるな!しかもエールに抜群に合う!」
「そ~なんですよ~!ただし、昨日飲んだのはエールではなく、ビールです!ドワーフの元締めから直接分けて貰ったものに、ちょっとだけ手を加えた物なんですよ~!元締めの物は強すぎて大変な目に合いますんで!」
「そもそもドワーフの元締めに直接会う事も難しいだろうに、君達は何者だい?」
「いやいや~、ただの冒険者ですよ!お使いを頼まれてたのと、ミスリルを手に入れられたので、元締めにも会えたんですよ~」
「う~む、それにしては強すぎる気がするけどね?まぁ詮索はしないよ!それにしてもクラーケンか、六十階層まで行かないと手に入れられないのが痛いね!」
とても悔しそうにクラーケンを手に入れる方法を考えてるギルド長。
「きにいった~?」
「ああ!旨かったからな!」
「いっぴきいるー?」
「良いのかい?ああ、勿論代金は払うよ!」
「いっぱいあるし、いいよ~」
五匹いるからね!
「ああ、でも保存はどうします?生のままだとすぐ腐りますよ!」
ディーグリーの言葉に、そう言えば時間停止って俺だけだったと思い出す。
「れーとーは?」
「冷凍の魔道具はまだ高いよ?」
ディーグリーが答えてくれる。
「しゅるめ作る?」
噛んだ!
「しゅるめ?」
「イカを、しおみずにつけて、ほすと、す、るめなる」
「塩水に浸けて干すだけで良いの?それでするめ?ってのになるんだ?」
「ほぞんきくよ」
「ヘ~、それならやってみても良いね!ギルド長ちょっと場所貸して下さい!」
「あ、ああ。昨日の解体部屋で良いかい?」
「ありがとうございます!」
で、移動してするめ作り。
まずは分厚過ぎる身を薄く切って、塩水に浸ける。
一時間くらいしたら水気を切って、丸まらないように串に刺して広げ、魔法で乾燥させる。
実際に魔法無しで家庭で作ると、一ヶ月くらい干さないといけないけど、魔法ならみるみる乾く!
身がドンドン縮んでいくのに慌てるディーグリーとギルド長。
構わず程好くカラカラになってオレンジ掛かった色になるまで乾燥させて出来上がり!
匂いがちょっときつくなるけど、間違いなくするめ!
串から外し、端っこを切って火で炙る。
噛み切る事は出来ないけど、なんとも言えない風味があって、とても旨いするめの完成!
助も隣で炙って食ってるし。
「あ~、これはこれでビール飲みてぇ!ケータ、マヨネーズと七味くれ!」
残念ながら七味唐辛子は未発見です。作れないこともないけど面倒なので後回しにしてた。
取り敢えず一味唐辛子出しといた。
嬉々としてつけて食べる助。
真似してディーグリーが、
「うん。独特の風味があって旨いね!癖になる味だ。確かにビールに合いそう!」
「この、噛む程に味が出てくるのも不思議ですね?」
「ああ、程好い塩加減で飽きずに食えるな」
評判は上々。
ギルド長はいつ持ってきたのか、エール片手にガジガジしてる。
「確かにエール合う!最初は臭いと思ったが、このなんとも言えない風味が、癖になる!延々と飲んでられそうだ!」
ギルド長あんまりお酒強くないのに、酒好きなんだって。
巨大いかも、するめにしたら半分くらいになったけど、まあ、これはこれで良いね!
一応するめの戻しかたも教えておいたよ!
少しの醤油を入れた水に浸けとくだけで柔らかくなって、それを焼いて食べるのも旨いからね!
丁度奴等も戻ってきたらしいので、するめ作りは終了。
ギルドの訓練場に移動して、奴等と向かい合う。
さっぱりとした奴等は強さが半減したように、髭が無くなり髪が整えられていた。
審判役の副ギルド長が間に立って、
「対戦の前に条件の確認をする!まず、お前達が勝った場合は、買取り金額を三倍にする。そして負けた場合は半額とする。そしてチームリュグナートが勝った場合は、お前達の持っている全額をリュグナートに支払う事とする。双方それで良いな?」
「なんで俺等の金を払わなきゃなんねーんだ?」
「お前達が言い出した対戦だろう、リュグナートにとってなんのメリットも無い対戦なのだ、それ相応の対価を払うべきだろう?」
「なら、俺等と同じ条件にすりゃいいだろう?」
「馬鹿言え!リュグナートの買取り金額を三倍になどしたら、このギルドは破産する!」
凄く堂々と言い切った副ギルド長に言い返す事も出来ずに了承する奴等。
ちょっと考えれば、お前らの買取りを三倍にしても支障はないのに、俺達の買取りを三倍にしたら破産するって事なんだけど、その意味分かってないよね?
俺はペット達と込みでふわもちーむなので不参加。
するめ片手にペット達に埋ってる。
ソラとプラムもするめを噛ってる。
ラニアンとハクはお好みではない様子。
ギルド長がすぐ横でハワハワしてるけど、副ギルド長に抱っこ禁止されてるので、そ~~っと横から撫でるだけで我慢してる。
観覧席の俺の周りが女性率高い。
モテ期、モテ期ですか?
いやいや子供の姿でモテてもね!
「はじめ!」
副ギルド長のビシッとした声で対戦が始まる。
直ぐ様ユーグラムの魔法が相手を襲う。
定番の麻痺と、今回は混乱の魔法かな?
同士討ちが開始されてるし。
なかなかえげつない攻撃ですな!
その混乱に乗じて、接近したディーグリー、助、アールスハインが、刀背打ちで次々と相手を無力化して呆気なく終了。
あまりに呆気なく終了したので、見物していた者達からブーイングが起こっている。
「これでお互いの実力も分かったな?敗者は条件通り有り金を全部出せ!」
副ギルド長の言葉に、物凄く渋々お金を出す奴等。
「おい、それだけじゃないだろう?ギルドに預けてある金まで出せとは言ってないんだから、おとなしく全部出せ!さもないとギルドに借金を作る羽目になるぞ?」
かつあげですか?
更に金額を増やす奴等。
結構持ってるね?
「はあ~、往生際の悪い奴等だ!こっちは、お前達が風呂に入っている間に、調べさせてもらってるんだがな?」
「おい!それは横暴過ぎるだろ!」
「自分達の横暴は構わないのか?ろくに成果も出せない冒険者が、超優秀な冒険者に因縁を付けたんだ、公平であるギルドは、負けたお前達が万が一にも逃げ出さないように見張る義務があるだろう?」
「最初っから俺達が負けるって決めつけてたのかよ?!それでどこが公平だ?!」
「普段の行いと、納品実績を見れば、実力差は明確だろう?お前達は馬鹿にして聞いてなかったかも知れないが、彼等は最高到達階層を更新してるんだぞ!どう考えてもお前達より強いだろう?」
馬鹿にして聞き流していた事実を突きつけられて、グヌグヌしながら言い返せない奴等。
それでもまだ納得しないのか、
「だ、だったら証拠を見せろ!俺達が行ったこと無い階層の素材を出してみろ!」
とか言ってる。
今持ってる素材で、奴等の行けない階層の素材って、ディーグリーが直接ラバー商会に納品する予定の物だけなんだよね。
つまり、超高額素材。
ワームの金とミスリル、雪熊の角と毛皮、フォークバッドの糞とか。
取り敢えず分かりやすく高額な、ワームの金とミスリルを出してみた。
黙って固まる奴等。
観客席も身を乗り出して見てる。
「これで分かっただろう?自分達が格上の相手にどれだけ無謀な挑戦をしたか。さっさと有り金を出せ!そして謝罪しろ!」
最初のモサモサ加減がだいぶ縮んで、半分くらいに見える奴等は、おとなしく有り金を全部出して、謝罪してきた。
やっとゴタゴタが片付いた。
あとはさっさとこの街を出よう!
ギルド長達に挨拶してギルドを出ると、やたらギラギラした目の不潔な人達がギルド前にたむろしていた。
狙われてるね!
実力を見せつけた後なので、直接向かってくるわけではなく、遠巻きに見られてる。
ハニトラ目的の露出の多い女性も多い。
態々見送りに出てきたギルド長と副ギルド長も、あちゃーって顔してるし。
なので、ギルド長達に断りをいれてから直接ボードに乗って街を出ます!
大丈夫、宿は先払いなので逃げた事にはなりません。
誰も付いて来られないだろう!フハハハハ!
ポカーーーンと見送る人達を置いて、さて、次はどこに行こうかね?




