エルフ族の子供達と世界樹祭り
誤字報告をありがとうございます!
ラバー商会が経営するレストランでご飯を食べている。
初日にレクチャーした、肉の処理方法が実践されているので、柔らかく臭みもない美味しい肉を堪能できる!
ただ、先日行った創作料理屋の料理人が居るのはなぜ?
態々挨拶に来てくれた、ラバー商会の料理長に聞いてみたら、自分の料理には足りない物がある!と、人間族が料理長をしているラバー商会のここに、修行に来たらしい。
見たことも聞いたことも無い調味料があり、新しく革新的な調理方法があり、長年料理に拘りを持って精進してきたのに、新しい物に目を向ける事を怠っていた!と大反省しているそうな。
最初は買い物に来て、レストランで自分以外の作った料理を食べてみよう、と思っただけなのだが、臭みの無い柔らかい肉、コメやミソ等の新しい食材、揚げ物という調理方法。
素材を活かす料理を目指してきたが、それは味を究極まで薄くする事と思い込んでいたそうです。
なら生で食えば良いだろう?と料理長が言ってしまったのが、衝撃的だったらしい。
料理の意味とは?とか考え出して、今朝夜が明けると共に、弟子入りを求め押し掛けて来たそうな。
基本的な調理技術は文句無く一流なので、味付けや新食材、素材の新しい処理方法を学んでるそうです。
頑固な職人には、新しい方法を受け入れられない人もいるのに、柔軟な思考が出来るのは凄いね!
お昼を食べたら街をプラプラ。
用は済んだので次の街に行っても良いのだが、族長達全員に祭りに参加してください!って誘われてるのでもう二.三日は滞在することに。
勿論、一般の冒険者として扱ってくれるなら、っては頼んであるよ!
変に崇められても面倒だからね!
街は、急遽決まった祭りの知らせに大忙し。
それでも皆が、とても嬉しそうで楽しそうなので、街全体が明るい空気になっている。
初日の、どこか余所余所しい雰囲気は微塵もなく、余所者の俺達にまで笑顔で声が掛けられる。
やたら撫でられるのは微妙だけど!
露店を通る度に味見にどうぞ!って色々な物を貰う。
お昼を食べたばかりで、そんなに入りません!
まあ、お礼を言ってバッグにしまってるけど!
エルフ族の寿命は、約五百年。
子供時代が五十年くらいで、その後は青年姿のまま四百歳くらいまでは容姿が変わらず、四百歳を越えると、徐々に老化していくそうです。
一番年嵩の族長は、五百歳を超えているとか。
子供の出来にくい種族で、前にジュボーダン伯爵が言ってた、子玉がないと絶滅してしまうかも知れない種族の一つだとか。
なので、子供のエルフは、普段は他種族と隔離されて大事に大事に育てられてるそうな。
なぜ今その話かと言うと、族長達が、是非に!って子供達に会わせようとしてくるからだ。
子供の内に清浄な魔力に触れると、健やかに育つそうです。
子供達の住む町は、魔の森から一番離れた場所で、世界樹の分木がある場所のすぐそばだそうです。
巨大な木が等間隔に並び、その間に魔力の籠った柵が立てられ、エルフ族にしては屈強な戦士に見える人が見張る入り口を入って、更に砦のような建物の中の受付を通り越して、やっと集落につく。
三十世帯程の集落はそれ程広くなく、この集落には子供達とその親と警備にあたるエルフしか住んでないそうだ。
警備の人達の住まいは砦の中にあるとか。
中央には世界樹と同じ根を持つ世界樹の縮小版のような木があり、そこには赤ちゃんから青年間近に見える子供達が三十人程。
大人のエルフに何かを学んでいる様子。
そこにラナイムラビル族長と共に近寄っていくと、遠慮の無い視線が向けられる。
子供達に教えている教師の大人エルフが、ラナイムラビル族長に礼をすれば、子供達もそれに倣って礼をする。
「こんにちは皆さん!今日は特別なお客様がいらっしゃいました。人間族の冒険者と妖精族の突然変異であられる方々です。失礼の無いようにお話を聞きましょう」
「「「「はーい!」」」」
元気の良いお返事。
ワラワラと寄ってくる子供達に、我がペット達が大人気!
もみくちゃにされ撫で回されている。
俺は、ラナイムラビル族長に抱っこされて、赤ちゃんの所へ連れていかれた。
「この子は生まれつき体が弱く、魔力が安定しておりません。どうかこの子に加護をお与え下さい」
「かごってー、どーやんにょ?(加護って、どうやるの?)」
「撫でてあげて下さい。それだけで少し魔力の流れが整うはずです」
赤ちゃんを覗き込むと、確かに。ちょっと魔力の流れが滞っている部分が数ヵ所ある。
首と左手首、右膝、左腰。
滞っている部分をゆっくりとさすってあげると、正常に流れ出す魔力。
ずっともじもじムズムズしていた赤ちゃんが、パッチリと目を開けてこちらを凝視してくる。
小さな手を伸ばしてくるので、握ってあげるとキャーーっと笑う。
握った手が同じ大きさなのは見ない振り、俺はもうすぐ成長する予定なので!
普段はずっともじもじムズムズしてて不機嫌そうな赤ちゃんが、急にご機嫌になって笑っているのが珍しいのか、ペット達と戯れていた子供達が集まってきた。
そして始まる抱っこ大会。
キューーっと抱っこされたら次へとどんどん回されていく俺。
たまに力加減のわからない子が居て、他の子供に注意されてる。
大丈夫、アンネローゼよりははるかにマシ!
小さい子から青年間近の子まで回ったら終了。
俺の出番はそこまで。
次に狙われたのは、アールスハイン達。
魔力の高いエルフ族。
魔法勝負を挑まれている。
魔力は高くとも、技術はそんなに無いようで、魔法玉の威力は中々だが、槍やバリアはまだまだ。
肉体強化等は全く知らなかった様子。
ユーグラムはエルフと思われていたのか、なぜ街で暮らさず、冒険者になったのかを聞かれている。
人間族なことを話すと、凄く驚かれていた。
確かにエルフ族に混じっても違和感ないけど。
青年間近の三人と、非番の警備さん達を相手に、肉体強化を教えているアールスハイン達。
元気盛りの子供達は我がペットともみくちゃになって遊んでいる。
赤ちゃん組は俺があやしている。
撫でるだけでご機嫌になるので、とても和む。
まったりと午後を過ごし、夕方に宿に戻る。
お祭りは明日からだそうです。
特別な祭りなので、子供達も参加出来るそうで、とてもはしゃいでた。
おはようございます。
今日の天気は晴れ。
絶好の祭り日和。
ところで世界樹さんや、一向に成長が見られんのだが、どういう事だい?ちょっと抗議したいが、祭りのせいで声を掛けづらい。
ピカピカツヤツヤの新世界樹は、何時もよりご機嫌な様子で淡緑の葉を揺らしている。
その周りでは様々な露店が並び、多くの客で賑わっている。
本日は朝食も食べずに露店で食べ歩き。
ラバー商会でも露店を出しているが、売ってるのが唐揚げ串。
前世でお世話になったコンビニを思い出す。
創作料理屋の料理人が個人で出してる露店には、でっかい肉の串焼きを売ってた。
肉が柔らかくてタレが染み込み絶品でした!
肉を焼きながら、物凄く渋い顔でこっちを見てるので、サムズアップしてやったら、迫力のある笑顔を返されました!
まあ、三個刺してあるうちの一個で腹一杯になったけど。
わりと手の込んだ料理を出す露店は少なく、果物を切っただけ、芋を茹でただけ、芋を焼いただけ、葉物を炒めただけ、木の実を炒っただけ、スープも具を切って煮ただけ、って感じの大雑把さ。
味付けをしようよ!塩だけって!
なので、ラバー商会と創作料理屋の露店が大変な行列を作っている。
先に買っといて良かった!
一周回ったが、特に目ぼしい物もなく終了してしまった。
祭りの雰囲気は楽しいけど、露店が楽しめなかったのが残念でならない。
子供達にも声を掛けられたけど、皆も果物の串刺しを食べてるだけだし。
もうちょっとなんとかならないのかね~?
世界樹の根っこに腰掛けぼんやりと祭りを眺める。
雰囲気は良いんだけどね~。
そしてずっとソワソワしてるディーグリー。
こう言う雰囲気になると、商売人の血が滾るらしく、今にも店を広げたそう。
だが、雑貨を扱うには、ラバー商会と被る商品しかないため、広げるに広げられなくてもどかしそう。
「あ~、のさ、俺も露店やりたいんだけど、手伝ってくれる?」
「何の露店をやるんですか?」
「それなんだけど、焼きうどんは?」
「匂いは良いが、露店で売るには向いてないだろう?片手で食べられるような物が、食べ歩きには向いてると思うぞ?」
「あー、そうだとするとシチューもダメかー」
「肉の串焼きは有るしな」
「ケータ、なんかないの?片手で食べられて、調理が簡単なヤツ」
「ん~、くりぇーぷは?あまいのもしょっぱいーもでちるよ(ん~、クレープは?甘いのもしょっぱいのも出来るよ)」
「ああ!だがクレープ生地って丸めるの難しくねーか?」
「うしゅいぱんでいーれしょ(薄いパンで良いでしょ)」
エルフの主食だし。
「挟む具は?」
「てりやちまよねーじゅと、にゃまくりーむとちょことくだもにょ?(照り焼きマヨネーズと、生クリームにチョコと果物?)」
「ああ、旨そうだ!」
アールスハインの了解が出たので、露店を出す側に。
族長に許可を貰いに行きます。
許可はすんなりと言うか、是非お願いいたします!って言われました。
露店の設備は、普段使ってる調理道具で足りるし、午後はひたすら薄いパンを焼きます。
マジックバッグに入れておけば良いしね!
粉と卵と少しの塩と水を混ぜてこねて、薄く伸ばして焼くだけ。
トルティーヤの生地よりは柔らかめ。
それをひたすら焼く焼く焼く。
焼くだけならユーグラム以外は出来る作業です!
ユーグラムにはレタスを大量に千切ってもらってますよ!
それ以外の作業は危険ですよ!
俺は大量の生クリームを泡立て収納、薬として売っている甘さの無いチョコに、大量に砂糖と生クリームを入れて味を調整して収納。
明日の朝からの露店の準備が終わったのは夜になってからでした。




